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12-19 計算された神速の動きが読まれているだと……!?

12-19 計算された神速の動きが読まれているだと……!?



前回の武器適合試験における指関節の破断結果を受け、ケルベロスには腕部構造の根底からの劇的なフレーム補強、胴体変形機構の剛性アップ、そして脚部ホバー出力の大幅な引き上げが超スピードで施された。

さらにマリの個人的な執念と野望により、操縦席のシートも(あくまで“乗車可能”と言えるレベルではあるが)二人乗り対応へと強引に改修された最新仕様――「ケルベロスII型」が完成したのである。


「全体の骨格構造強化と出力の大幅引き上げを施した! これにより、ケルベロスII型は激しい近接格闘戦にも完全対応だ! ふっふっふっ……私に不可能という文字は無いのだよ!」

クローディア(マリ)は、かけてもいない眼鏡の中央を指で「クイクイ」と押し上げる真似をしながら、ドヤ顔全開で誇らしげに語る。


「そうね。機体性能が強化されること自体はとても良いことだと思うわ。……そもそも、ケルベロスが人型になって殴り合いの泥臭い格闘戦を演じる場面なんて、まるで思いつかないけれど」

ゆりは両手を肩の高さまで軽く上げ、「つける薬がないわね」と言わんばかりの呆れ顔で答えた。


「いやいや、甘いよゆりさん! パワーアシストスーツ『サギ』を纏った遥が、さらに巨大な可変ケルベロスを駆り、その圧倒的巨躯をもって敵を粉砕する大迫力の格闘戦……! なんと胸が熱くなるロマン溢れるシチュエーションじゃないか!!」

マリは右手を力強く握りしめて胸の前に掲げ、まるでヒーロー番組の熱血監督のごとく熱弁を振るい始める。


「いいえ、マリ。格闘戦なら『アカサギ』単体で十分でしょう。それに、下手に巨体で格闘戦をやろうとしたら、逆に小回りの利く素早いアノマリー(異形)に翻弄されて隙を晒すのが目に見えているわ。……そうね、私は『オルトロスがオンロード(舗装路)仕様』、『ケルベロスがオフロード(悪路)仕様』っていう位置づけで、現場へ向かう移動手段兼輸送車両として運用するのが一番理にかなっていると思うけれど」

ゆりは人差し指を顎に当て、実戦での使い勝手や兵站を真面目に考察しながら、100点満点の完璧な持論を述べた。


「ふむ……まあ実際の使い勝手に関しては現場(ナベさんたち)に任せるとしよう! 何はともあれ、早速試乗テスト走行だね! さあ、乗るよーっ!!」

マリは言いや否や、その場で颯爽と白衣を脱ぎ捨てて神速の動きで搭乗しようとする――が!

その首根っこを、ゆりの手がノータイムでガシッと「むんず」と正確無比に掴み、完璧な予備動作でその暴走を阻止した。


「はいはい、マリはこっち(管制室)ね。遥、試乗をお願い」


「そ、そんな馬鹿な……!? この私の計算された神速の動きが読まれているだと……!?」

例によってドナドナのごとくずるずると連行されていくマリは、己の行動パターンを完全に把握されていたことに驚愕の表情を浮かべ、両手をパタパタさせてジタバタ暴れている。いい加減、学習というものを一切しないお方であった。

いつもの二人によるドタバタコントを「ニコニコ」と微笑ましく見守っていた遥が、シャキッと姿勢を正して応答する。


『はい、ゆり。お任せください』

すでに「アオサギ」の姿へと迅速に換装を完了させていた遥は、ケルベロスの大出力エンジンを滑らかに起動させた。

そして本日のテストを開始すべく、慣れた手つきで武骨な三輪バギーから、力強い人型形態(戦闘形態)へと変形させていくのだった。

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