12-14 オルトロスの次は「ケルベロス」
12-14 オルトロスの次は「ケルベロス」
「――いやぁ、遥たちのおかげで、実に良い走行データが取れたねぇ!」
コーヒーカップを片手に、ホクホクとした満面の笑みを浮かべるクローディア(マリ)。
「まさかね……あの子たちが本当に8時間ぶっ通しで突っ走り続けるとは思わなかったわ。……疲れっていう概念を知らないのかしらね。ちょっと羨ましいわ」
ゆりは昨日の遥たちの狂乱(?)に満ちた8時間耐久レースぶりを思い返しながら、半ば呆れ顔で深々とため息をついた。
「それで、マリ。これでナベさんからの依頼(重装甲二輪車)は無事に完了ってことでいいのかしら?」
プロジェクトの区切りを確認しようとしたゆりだったが、マリは横にフルフルと頭を振ってみせる。
「あー、それなんだけどね。実はテスト中にまた新しいアイディアがバチッと閃いちゃってさ。ついでにそれも一緒に開発しようと思うのだよ!」
マリは手に持っていたコーヒーカップをデスクへ置くと、大袈裟に両手を広げて熱弁を振るい始めた。
「その新機体名は……『ケルベロス』! ふふん、『オルトロス』って名前を聞いた時点で、なんとなく想像はついていたと思うけどね!」
片目をキュッと瞑り、ドヤ顔で人差し指を立てるマリ。
「えーと……ケルベロスって、あの三つの頭を持つっていう地獄の魔犬よね。三つ……頭……? ……まさか、車輪が三つあるのかしら?」
ゆりは人差し指を顎に当て、言いようのない嫌な予感を抱きながら問いかけた。
「大正解! そう、次は『三輪車』を作ろうかと思ってね!!」
「正解!」と言わんばかりに、マリは人差し指をビシッとゆりへ向けた。(※人に指を差してはいけません)
そして手元の端末をテキパキと高速操作し、メインモニターにホログラム設計図を表示させる。そこに映し出されたのは、一見すると武骨な「三輪バギー」と呼ばれる車両だった。
……ただし、そのスケール感が明らかに尋常ではない。到底一人乗りのバギーとは思えないほど巨大で、先ほどのオルトロスと同等か、それ以上の重圧な巨躯を誇っていた。
画面を見上げたゆりは、決定的な違和感に首を傾げる。
「ねぇ、マリ。バギーってこんなに大きかったかしら? 私の記憶にあるバギーは、もっとコンパクトで小回りが利くイメージなのだけど……」
「ふっふっふ、ゆりくん。それは当然――変形するからだね! 私がフツウのバギーなんて作るわけがないじゃないか。えっへん!」
腰に両手を当て、いっそ清々しいほどのドヤ顔で胸を張るマリ。
……聞いた私がバカだった。
ゆりは額に手を当て、深く、どこまでも深くため息をついた。
だが――とゆりは思い直す。以前「改造や追加ギミックを入れるなら事前に説明して」と懇願した甲斐あってか、今回はちゃんと着手前にプレゼンしてくれている。それだけでも、彼女なりに少しは進歩したと言えるのかもしれない。
「えーと……ツッコミどころが山ほどあるんだけど、一つだけ確認していいかしら」
少し疲れた表情を浮かべつつも、これだけは聞いておかなければとゆりは尋ねた。
「なんだいゆり! 何でも聞いてくれたまえ!」
相変わらず自信満々なニコニコ顔のマリ。
「……どうして変形するのかしら? その変形機能、本当に戦闘や運用に必要なの?」
至極ごもっともで正論すぎるゆりの質問に、マリは不敵に微笑むと、バッと背景に大爆発の幻影(※イメージ)を背負いながら言い放った。
「それはね……男――いや、女のロマンだからだよ!!(バーン!)」
「……はいはい、そうよね」
背後に見えた幻の爆風に煽られながら、ゆりはただただ頭を抱えるのだった。




