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12-13 エアロモード……ブーストオン!!

12-13 エアロモード……ブーストオン!!



しかし、先行する遥もただスピードを出して独走するだけで終わるつもりは毛頭なかった。

「――システム、チェンジ! クルーズモード!」

バイザー内に滑らかな切り替えメッセージが提示される。


Plaintext



>> Starting transformation from aero mode to cruise mode.

(空力形態から巡航形態へ変形開始)



遥はオルトロスを即座に通常走行形態へと戻し、滑らかなドッグレッグのラインを描きながら、超高速でコーナー入口へ突入する。

猛追する後続の遥たちも遅れをとるまいと、次々にエアロモードを解除して巡航形態へと変形。怒涛の勢いでコーナーへ雪崩れ込んでいった。


先行機と違い、クリッピングポイントを正確に見極めて最適なアプローチで飛び込んだ後続機たちは、コーナリング中に一気にその差を詰めにかかる。

だが――立ち上がりの直線で、先行の遥はさらなる隠しカードを切った。

「――システム、チェンジ! エアロモード……ブーストオン!!」



>> Starting transformation from cruise mode to aero mode.

(巡航形態から空力形態へ変形開始)

>> Activating booster engines now.

(加速推進機起動)



オルトロスの後部装甲内に格納されていた二基の超小型スラスターが展開され、青白く澄んだプラズマ噴射を全開で爆破的に開始。機体は極限の最高速を誇る「エアロブーストモード」へと移行した。

ドッ!! と爆音とともに空間が歪み、猛烈なGが遥を襲う。


背後から迫っていた後続の遥たちも異変に気付き、大慌てで同様の変形を試みるが、一足遅かった。強烈な衝撃波と爆風を残し、先行機は瞬く間に遥か彼方へと差を広げていく。


「えっ……!? あの形態の、さらに先があったの!?」

画面越しに変形とブーストのタイミングを完璧に使いこなす遥の勇姿を見て、ゆりは驚きを隠せない。


「いやぁ……本来はあのスラスター、空戦・飛行試験用の推進器として載せたはずだったんだけどね。まさか地上走行のコーナー立ち上がりで『ブースト』として転用するとは……私も驚きだよ」

意外なことに、仕掛け人であるクローディア(マリ)にとっても、このスラスターの使い方までは全くの想定外だったようだ。


オーバルコースとはいえ、直線の終わりには必ず減速を強いられる強烈なカーブが待っている。

直線での空力形態、コーナーでの巡航形態、そして立ち上がりでのブースト爆発を絶妙なタイミングで切り替え、コースを縦横無尽に駆け抜けていく。


結局、後続の怒涛の追撃を巧みな駆け引きとマシンの限界を見極めるテクニックで交わし続け、先頭を維持したまま周回を重ねていく一人の遥。


遥たちは群体意思を共有しているとはいえ、個体それぞれに微妙な感情や思考の癖が存在するらしい。どうやらこの個体は、レースの駆け引きやマシンの限界性能を引き出すセンスに異常なほど長けた性格だったようだ。


……そして結局のところ、この日のテスト走行は、まるで二輪の「八時間耐久レース(鈴鹿8耐)」のごとき過酷なレースへと変貌を遂げるのだった。


【用語解説:鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)】

三重県・鈴鹿サーキットで毎年夏に開催される、日本を代表する二輪の耐久ロードレース。

1台のマシンを2から3人のライダーが交代しながら8時間走り抜く過酷な競技であり、真夏の容赦ない猛暑から夕暮れ、そして漆黒の夜間へと移り変わる極限状態の中、マシンの耐久性とチームの緻密なピット戦略が勝敗を左右する。

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