12-10 オルトロス、テスト完了!
12-10 オルトロス、テスト完了!
管制室でのひと悶着も無事に(?)決着し、気を取り直して走行試験が再開された。
――しかし、そこで新たな問題が発生する。
遥はオルトロスの後部にメガブースターをドッキングさせたまま地上走行のデータ採取を行っていたが、ロングストレートの終わり、コーナリングの手前でピタリと停止してしまったのだ。
『マリ。合体状態のままだと、コーナリングで曲がりきれません』
インカム越しに、遥から至極あっけらかんとした報告が入る。
当たり前の話だが、二輪車にそのまま大型の翼と重量級ブースターを取り付ければ、旋回性やバンク角の確保どころではなく運動性能は著しく低下する。
「あぁ~……うん、確かにそうだよね! そんな大きな翼を付けたまんまじゃ曲がれるわけないか! 遥、一旦メガブースターを切り離しておくれ!」
『了解しました、マリ。メガブースターを切り離します』
遥はヘルメットバイザー内のHUD上で切り離し処理のパージコマンドを送信した。
指令を受けたオルトロスは、後部に剛性接続されていたメガブースターを即座にリリース。切り離されたメガブースターは空中で自動的にスラスターを吹かして姿勢を整えると、自律飛行モードで元の基地格納庫へと滑らかに帰還していった。
その後もテスト走行は入念に続けられた。
遥は走行中に時折メガブースターを呼び出して空中合体・高空飛行を行い、着陸後の分離から格納庫への自動帰還までの一連のシークエンスを、何度も繰り返し検証・熟練していった。
◇
――その日の夜。
すべてのテスト走行を無事に終え、オルトロスのメインフレームから回収された膨大なログデータの解析作業がラボで行われていた。
「マリ、ログを詳細まで確認してみたけれど……通常の地上走行はもちろん、高機動合体や可変機構の負荷にも特に問題は見当たらないわ」
ゆりは端末のキーボードを打ち込み、モニターに並ぶ無数の緑色の数値を指示しながらクローディア(マリ)へ報告する。
「そうだね。私の方でもドライブコアの熱動態ログを追っていたけど、致命的なシステムエラーは皆無だ。あとは必要数を揃えて、遥たちに実戦走行&運用してもらうとしようか!」
重大な初期不良や構造的欠陥がなかったことに、二人はホッと安堵の笑みを浮かべあう。
「それじゃあ明日、遥たちに引き渡す分の『オルトロス』を今から夜通しで量産する必要があるわね。予備の重装甲素材とナノマテリアルの在庫は足りていたかしら……」
ゆりがすぐさま端末を操作し、マテリアルサイロの資材在庫状況を確認し始めると、クローディア(マリ)も椅子から立ち上がった。
「私は、大型プリンターで自動生産されたマシンがそのまま格納庫へ全自動で搬送できるように、ラインのコンベア制御を組んでおくよ!」
クローディア(マリ)は頼もしくそう言い残すと研究室をあとにし、大型3D金属プリンターが整然と立ち並ぶ醸造倉庫へと向かっていくのだった。




