11-22 【3Dシミュレーション】サギの2人乗り&大型コンテナ吊り下げの限界検証
11-22 【3Dシミュレーション】サギの2人乗り&大型コンテナ吊り下げの限界検証
「それじゃあ、ちゃっちゃっと片づけますか。」
WEB会議を終えて、クローディアは首を左右にコキコキと鳴らしながら軽く肩をほぐし、手元のメイン端末に向かって新たな設計作業の操作を始めた。
「結局、私たちが一度は『発展性なし』として没にした旧案まで上手に拾い上げてくるあたり、ナベさんの目利きが良いのか、それとも現場の商人としての勘が異常に鋭いのか……」
そう言いながら、ゆりも椅子の上で大きく伸びをしてから、キーボードに手を添えて相槌を打つ。
「いやぁ、さすがにあそこで長年泥水をすすりながら勤務してきた現場の長だしね。私たちの目の届かないところで、何かビジネス的に引っかかるものがあったんじゃないのかな」
「でも、まさかわざわざ小型化に成功した最新の機体から、その前の大きな状態に戻したいだなんて言い出すなんて思っても見なかったわ」
そう語るゆりの表情には、エンジニアとしての割り切れない思いがわずかに残っているのか、どこか釈然としない苦笑いが浮かんでいた。
「その理由が『サギの背中にさらにサギを乗せる』っていうぶっ飛んだ発想だもんね。さすがはナベさん、私たちには絶対に思いつかない斜め上の発想だよ」
クローディアは両手を頭の後ろでガッチリと組み、椅子を大きく後ろに倒しながら愉快そうにカラカラと笑う。
「コスト面を最優先して、デカいものを一つだけ買って無理やり使い回すなんて発想、普通はエンジニアのプライドが許さないわよ。……にしても、あのリフター改の大きさだと、一体何人くらい上に乗せられるものなのかしら?」
ゆりもふと手を止め、目の前のモニターに視線を向けながらクローディアに改めて問いかけてみることにした。
ゆりに問われたクローディアは素早く端末を操作し、メインモニターの仮想空間上に旧式の「リフター改」の3Dモデルを呼び出す。さらに、その上に「アオサギシリーズ」の立ち絵データを重ね合わせ、実際にリフター改の背中に搭乗させているようなシミュレーション画面を表示させた。
「んー、無理やりギュウギュウに詰めれば3人いけなくもないけど、飛行時のバランスや安全性を考慮したら、実際は横に並んだとしても2人乗りが限界だろうね。機体の下側にコンテナを吊るすスペースは確保できそうだけど……」
「そうね。じゃあ、そのリフター改の下方に大型コンテナを仮置きしてみるわね」
そう言って、ゆりも手元のサブ端末を操作し、モニター上で過剰乗車気味になっているリフター改の3Dモデルの下部に、長方形の大型コンテナのモデルデータを付け足してみた。
「な、なんだか凄まじくアンバランスで泥臭い絵面になったわね……」
「んー、これじゃあ駄目だわ。そもそも、機体の下方にそんな大きなコンテナを直接搭載したら、背中にあるバックパックのメイン推進機を丸ごと塞ぐことにならないかしら」
ゆりがコンテナを適当に配置したことで、バックパック背面に備え付けられていた肝心の推進ノズルがコンテナ本体にすっぽりと覆い隠されてしまい、完全に機能不全に陥っていることが判明した。
「だとすると、推進機の位置そのものを後方に延長するか、最後尾に新しく移設するしかないわけだね」
クローディアの指摘を受け、ゆりはモニターに表示されているリフター改のバックパック部分をマウスでつまみ、力任せにびよーんと後ろへと引き伸ばしてみる。
「うわぁ、なんだか急に不細工な試作機みたいになったね」
イメージするならば、巨大なバックパックが十個ほど数珠繋ぎに後ろへと連結して突き出しているような、何とも間の抜けたシルエットになっていた。
「別にここまでトカゲのしっぽみたいに無駄に大きくする必要はないわね。ほら、最新の戦闘機みたいに、推進機の『排出口』の部分だけをスマートに最後尾まで延長すればいいのよ」
ゆりはそう言って、今度はドラッグ操作を細かく調整し、突き出たバックパックのラインを流線型の平坦な形へと綺麗に整えていく。
「おっ、これなら一気にスマートでかっこよくなったね!」
「主翼は今のままで、洗練されたデルタ翼のままで良いかしら。あと、機体に内包している古いローター機構は、今回の高速大型輸送には完全に不要よね」
「うん、主翼はそのままでオッケーだね。ローターのパーツは綺麗に消しておこう。んー、あとは後方に推力不足を補うためのスラスターを追加しておくかな……」
そう呟きながら、今度はクローディアが機体に組み込まれていたローターの3Dデータを削除し、ぽっかりと空いたそのスペースに新たな推力スラスターのモデリングを次々と組み込んでいく。
「それじゃあ、さらなる追加案としてさ、機体の上方に追加の小型推進機を載せて、下部には両翼に増槽タンク(ドロップタンク)でも装備させて、もっとデコレーションして盛ってみるかい?」
モニターに映し出されていた「アオサギが乗ったリフター改」の基本モデルを左側にスライドさせ、対比させるように別のリフター改のバリエーションモデルを右側に並べて表示させる。
そして、カスタム案の一つとして、流線型の増槽タンクを左右の翼の下に1基ずつ、さらに機体上部の中央には直方体型の追加推進ユニットを左右対称に1基ずつマウントした、いかにも重装備といった趣きの新設計プランを画面いっぱいに展開するのであった。




