11-21 【旧式機復活】捨てる神あれば拾う神あり! 「リフター改」をベースにした大型輸送機開発
11-21 【旧式機復活】捨てる神あれば拾う神あり! 「リフター改」をベースにした大型輸送機開発
「さて、お二人に改めてやってもらいたいことがあるのだよ。この『リフター改』をベースにして、もう一度機体を作り直してほしい」
販売製造部門の長である渡辺譲司――ナベさんが口にした依頼は、こともあろうに二人がつい先日
「これ以上の発展性はない」として見切りをつけたはずの古い機体そのものだった。
「え? それをさらに改良したのが、さっきお見せした『フライヤー』ですよ。リフター改なんて、それよりもずっと前に試作した旧式の代物ですけど……」
ゆりは一体何を言い出すのかと理解に苦しむように眉をひそめ、ナベさんへと問い返す。
「あぁ、私の説明と意図が少し足りなかったね。私が新たに求めているのは、ずばり『大型機』の依頼なんだよ。
これには明確な理由があってね、物資や貨物の輸送を主目的とした、一定の積載量を持つ高速移動用の機体がどうしても欲しいということなのだよ。
もちろん、お二人がわざわざ気を利かせて小型で洗練された機体を提供してくれたのは分かっているし、それはそれで素晴らしい成果だと思っているよ。
だが、このリフター改の基本設計を見た瞬間に、私のエンジニアとしての勘がピクリとささやいたのさ。『これだ』ってね。これで私の意図はお分かりかな?」
「な、なるほど……物資の輸送ですか。それは思いましたが、それなら別にフライヤーや通常のリフターでも代用できるのでは駄目なのですか?」
ゆりが納得いかないといった表情で、さらに鋭く質問を重ねる。
「確かに、フライヤーやリフターでも重量制限の範囲内なら問題ないようにも思えるがね。だが、一人が身につけるような小型機が一度に運べる荷物の量など、所詮はたかが知れている。
大型のコンテナをガッチリと把持して安全に運ぶとなると、むしろあのリフター改くらいのサイズ感と馬力があった方が、飛行時の安定性が段違いに増すと思うんだよ」
「あぁ、そういうことか! 要するに、機体の下方や上方に専用のコンテナをガッツリ追加して、大量の荷物を一緒に引っ掛けたいってわけだね。なるほど、そこは私たちの設計思想からすっかり抜け落ちていた視点だね」
ナベさんの実用的な解説に、今度はクローディアがポンと手を叩いて納得の声を上げる。
二人がこれまで追求してきた飛行機体の構想は、あくまで「極限の高速飛行」と「パーソナルな小型化」という一点に絞られていた。
しかし、ナベさんの要求はそのベクトルとは真逆をゆく「大型重荷重・実用性重視」の路線だった。
「あと、おまけのアイデアなんだけどさ、その大型化した機体の上に『サギシリーズ』を直接乗せて、一種の空中母艦というか、輸送の足として運用するのもアリなんじゃないかな……なんてね、色々と考えているところさ」
ナベさんが悪びれもなくそう付け加えると、クローディアとゆりはその発言を聞いた瞬間に脳内でイメージ映像を再生し、揃って言葉を失う。
サギシリーズの背中にリフター改を着けた状態から、さらにその上に別のサギシリーズがピラミッドのようにドンと乗っている光景――。
あまりにもシュールで突っ込みどころが多すぎて、色々な意味でお腹いっぱいになる絵面だった。
「いやいや、いくら何でもその上にさらにサギシリーズを乗せるくらいなら、上層に乗る人間にそれぞれフライヤーなり小型の飛行ユニットを直接着けさせた方がよっぽど安全でスマートだと思うのだけどね……!」
クローディアは、頭の中にこびりついた奇妙な悪夢のような想像を振り払うように、激しく首を横に振ってから否定した。
「マリちゃん、そこは現実を見よう。世の中、すべてはお金とコストで回っているのだよ。つまり、極力予算をかけずに効率を上げたいわけさ。まったく世知辛い世の中だよね」
ナベさんが肩をすくめながら説明するには、つまり「高い小型機を何機も揃えるより、大型機を一機だけ購入して、上に乗せるなり下に吊るすなりして無理やり運用する方が、現場のコストとしては圧倒的に安上がりで済む」という算段らしい。
「なるほど……徹底的にコスト面をカットしたいわけですね。小型機を複数買い揃えるより、大型機一機を改造して使い回す方が安上がりになると」
ゆりは自分の顎に美しい指を当て、薄い目をつむりながら冷静に損得勘定をはじき出す。しかし、どう考えても運用時の絵面がシュールで怪しい気配が拭えなかった。
「分かったよ、ナベさん。そこまで言うなら、『リフター改』の設計にもう一度たっぷりとテコ入れして、大型輸送仕様に作り替えてあげるよ」
クローディアは頭をポリポリとかきながら、半分呆れたような、しかしどこか楽しそうなトーンで承諾の返事をする。
「いやぁ、さすがマリちゃん、本当に助かるよ! 毎回我が儘な無理ばかり言ってごめんねぇ。その代わり、今度またウチのとっておきの極上お菓子をたっぷり仕入れてラボに差し入れるからさ。どうかよろしく頼むよ!」
そう言って満足げに笑ったナベさんは、パチンと手際よく画面を操作し、そのままWEB会議を終了するのであった。




