11-20 【司令官モード発動】両手を組み口元を隠すナベさん! 和やかな会議から一転して「黒幕オーラ」へ
11-20 【司令官モード発動】両手を組み口元を隠すナベさん! 和やかな会議から一転して「黒幕オーラ」へ
「いやいや、マリちゃん。このハンガーのレーン機構がそこの研究所に本当に必要かい? そんな何人もの要員がひっきりなしに装備を付け替えるような大所帯の規模じゃないだろうに。設計データ自体はあるから、参考までにそっちへ渡してあげるけどね」
WEB会議のモニター画面の向こうで、販売製造部門の長である渡辺譲司――ナベさんはやれやれといった様子で軽く苦笑いを浮かべながら、手元の共有資料ウィンドウに新たなデータのリンクを張り付ける。
「そこからダウンロードして確認するといいよ。あと、当然のことだけど、こんな機密性の高い自動化機構のデータを外部に売ったり、他社にリークしたりするのは絶対に駄目だからね」
ナベさんはデータのリンク先を二人に教えつつ、産業スパイを警戒してか、機密情報ゆえの厳重な注意を忘れない。
「はは、ナベさんそんなに警戒しないでよ。さすがにそんな面倒な真似はしないって!」
「マリ、そもそもそれって此処の研究所に本当に必要かしら。狭いラボにこんな大掛かりな自動レーンを設置したら、場所を取るだけでむしろ邪魔になると思うわよ」
ゆりは呆れたような横目でクローディアを見据えながら、やんわりと鋭い釘を刺す。
ゆりの言う通り、天野研究所には「遥達」という、着脱すら自分で行う圧倒的かつ万能なマンパワーが存在している以上、わざわざ巨大な自動レーンシステムを導入するなど場所を取るだけで完全に不要の長物だった。
「いやぁ、ちょっとその洗練された構造やロボット制御の仕組みを技術的に覗いて見たかっただけだからさ。実際にこんな巨大な設備を研究室に作るわけないじゃないか」
クローディアは頭をポリポリとかきながら、少し決まり悪そうに苦笑いして答える。
「マリ、その言葉、本当に信用していいわよね。……なんだか最近のあなたの行動を見ていると、『面白そうだから、勢いでラボの地下に作っちゃった』なんて言い出しかねないから、本当に自重してよね」
「ゆりちゃんは相変わらずマリちゃんに対して手厳しいねぇ。まぁ、データを覗き見るなり、興味本位でパーツを作ってみるなり、悪いことに悪用しないのなら好きにやってもらって構わないよ」
ナベさんは画面越しに聞こえてくる二人の息の合った掛け合いを聞きながら、どこか楽しそうに目を細めて笑って答えるのだった。
――だが、ここまでラボと販売製造部門の間で流れていた和やかで緩やかな雰囲気は、次の瞬間をもって唐突に終わりを告げる。
モニターの向こうにいる渡辺譲司が、スッと両手を器用に組み上げ、口元や鼻を隠すようにして顔の前で指を鋭く交差させる――あの、アニメや映画で見たような、お馴染みの象徴的な「思案ポーズ」を取ったのだ。
「さて、お二人には、まだ新しくやってもらいたいことがあるのだよ……」
(――ナベさん、あのポーズ地味に好きだよね……)
(……嫌な予感しかしないわね。またどうせ、販売製造部門の部長の権限で、ろでもない面倒なやっかいごとを持ち込んでくる気だわ)
二人は画面の向こうの圧倒的な黒幕オーラを放つ部門長の姿を前にして、内心でぐったりとげっそりしながら、またとんでもない極秘の仕事を押し付けられるのだろうと覚悟を決めて身構えるのであった。




