11-14 【最高速度試験】マッハ2.5(時速3000km)を3分間維持せよ! 命がけの限界テスト
11-14 【最高速度試験】マッハ2.5(時速3000km)を3分間維持せよ! 命がけの限界テスト
装備を換装した遥は、試験場の中央にずっしりと立ち、管制室からの指示を静かに待っている。
「遥、じゃあ次の試験を始めるわね。今度はフライヤー二型の真価を試す『最高速度試験』を行うわ。水平飛行へ移行後、段階的に速度を上げていき、最終的に最高速度での維持飛行に入る。そのままの速度を3分間キープし、時間が来たら通常飛行へ戻す。その後は1分ほどでここへ着陸する――これを合計3セット行うわよ」
今回の試験は、新たに強化されたフライヤー二型が、過酷な最高速度を維持した状態で構造的・熱的に問題なく耐え抜けるかを確認するためのものだった。繰り返し高負荷をかけることで、フレームや推力系統に致命的な欠陥がないかを細かく洗い出す、開発において極めて重要なプロセスである。
だが、マッハの領域での維持飛行は、機体装置全体に凄まじい負荷を強いることにもなる。もし設計のどこかに微細な計算ミスでも潜んでいれば、最悪の場合は空中分解――いや、派手に「爆発四散」もあり得る、非常にリスキーなテストだった。
「はい、ゆり。水平移行後は最高速度に達したところでそれを維持、3分後に通常速度へ戻し、その1分後に着陸します。これを合計3セット行いますね」
遥が隙のないハキハキとした口調で復唱するのを聞き届けると、ゆりは管制室のモニターの前で小さく頷き、さらに真剣なトーンで言葉を付け加えた。
「遥、これは機体にとってもかなり危険を伴う試験よ。あなたの卓越した腕なら少々のことでは揺らがないと思うけれど……万が一の有事の際は、迷わずシラユキでしっかり対処してちょうだいね。それでは――試験を始めて」
「はい、ゆり。試験を開始します。遥、行きます」
そう告げると、遥は機体をふわりと宙へと浮かび上がらせる。周囲の安全が確認できる一定の高度をしっかりと確保したところで、手元の操縦桿をスムーズに倒し、一気に水平飛行へと移行した。
そのまま、フライヤー二型は轟音と共に徐々に加速していく。
これは、最初の試験飛行で起きた暴走劇の教訓を活かし、「人間が安全に、段階的に扱えるように」と、マリがあえて滑らかに速度を上げる仕様へとプログラムを改良していたためだった。遥はそれに従い、機体の最高設計速度である――時速3000km、およそマッハ2.5の領域まで綺麗に加速させ、その圧倒的な速度を維持したまま大空へと駆け出していく。
……だが、ここで読者諸賢におかれては、ぜひとも思い出していただきたい。
――そもそも、遥は【最初の試験飛行の時点】で、リフター改を駆ってすでに規格外の超音速をたたき出し、縦横無尽に空を暴れ回っていたのではなかったか、と。
クローディア(マリ)も、そして管制室で厳しい顔をしてデータを監視しているゆりも、その最も肝心で重大な事実を、綺麗さっぱり頭から抜け落としていたのであった。




