11-4 【視界から消滅】水平飛行に移った瞬間、音速を超えて消えた「リフター改」
11-4 【視界から消滅】水平飛行に移った瞬間、音速を超えて消えた「リフター改」
遥が水平飛行へ移行した、その瞬間――。
二人の目の前から、遥の姿が文字通りかき消えた。
いや、実際に消えたわけではない。常軌を逸した超高速で移動したために、人間の視覚がその軌跡を捉えきれなかっただけである。
それを見た二人の反応は、見事なまでにハモっていた。
「「あ」」
そう、察しの通りである。
かつてナノスラスター武器の調整でやらかした数々の苦い失敗を、彼女たちはこの屋外試験場で完璧に再現してみせたのだ。
ここで、参考までに「速度」というものについての話をしよう。
フォーミュラカーの最高速度は時速350kmから380km程度。加速力に至っては、停止状態からわずか2.5秒で時速100km、5秒足らずで時速200kmに達する。
新幹線はどうだろうか。東北・秋田新幹線で時速320km、山陽新幹線で時速300km、東海道新幹線で時速285km。何かと話題に上るリニア新幹線に至っては、時速500kmでの走行が想定されている。
では、旅客機はどうか。
一般的なジェット旅客機の巡航速度は時速約880kmから950km(マッハ0.8から0.85)。音速を超えると空気抵抗や燃料消費が爆発的に跳ね上がるため、あえて音速の手前で制御されているのだ。
そして最後に、誰もがロマンを抱く戦闘機である。
戦闘機の最高速度は時速2,000kmから3,000km(マッハ2から3)。
F-15J: 時速約3,000km(マッハ2.5)
F-22 ラプター: マッハ2.2
F-16 ファルコン: マッハ2.0
F-35 ライトニング: マッハ1.6(ステルス性重視)
音速(マッハ1)は時速約1,225km。つまり、戦闘機とは超音速で空を切り裂く乗り物なのだ。
――さて、話を遥に戻そう。
クローディア(マリ)が組み上げた設計は、忠実すぎるほどに「戦闘機そのもの」を再現していた。
生身の人間が戦闘機級のエンジンを背負って急加速すればどうなるか、上の例を見れば想像がつくだろう。普通の人間であれば、離脱・加速時にかかる凄まじいG(重力加速度)によって身体が押し潰され、即死していてもおかしくないレベルである。
しかし――5分後。
何事もなかったかのように、しれっと遥が垂直降下で戻ってきた。
「ゆり、マリ。試験は問題なく終了しました」
過酷すぎる超音速フライトを完遂した彼女は、息一つ乱さず、涼しい顔でそう報告するのだった。




