10-9 【ランダム試験完遂】事故防止はソフトで解決! 自動姿勢制御&緊急制動ロジック搭載へ
10-9 【ランダム試験完遂】事故防止はソフトで解決! 自動姿勢制御&緊急制動ロジック搭載へ
遥によるランダム試験は、特に事故を起こすこともなく無事に終了した。
「やっぱりローターの接触事故が怖いな……プロペラガードを付けるべきかな」
遥の見事な操縦風景をモニター越しに見守りながら、マリがぽつりと呟く。
それに対し、ゆりは即座に首を横に振った。
「不要ね。ソフトウェアで十分に対処できるわ。今回は試作機だからオミットしていたけれど、各種センサーを増設して、ソフト側で自動姿勢制御と緊急制動ロジックを追加しましょう。どのみち、あの全幅で物理ガードを付けたところで、操縦を誤れば接触事故を起こすのは目に見えているもの」
ゆりが提案しているのは、近年の自動車に搭載されている衝突被害軽減ブレーキのようなシステムだ。カメラやセンサーの映像をAIがリアルタイムで解析し、障害物を検知すると自動でブレーキをかける機構である。人間の視野角は前方120度程度に過ぎず、横や後ろは首を振らなければ確認できない。そうした死角をシステムで補う意味でも、飛行ユニットには不可欠な装備と言えた。
もし仮に、最初のテストでマリ自身が試作機に乗り込んで飛び立っていたら、壁や天井に激突して惨事を引き起こしていた可能性は極めて高い。今回、事故を起こさずに試験を終えられたのは、偏に遥の卓越した対応力のおかげとも言えた。ゆりがマリの搭乗を力ずくで止めたのは、まさに怪我の功名である。
「あとは操作系統ね。遥、実際に操作してみて、UIやメニューの応答性に問題はなかったかしら? システムログを見る限りエラーは出ていないようだけれど、直接操縦したあなたの感覚を聞きたいの」
マリとゆりはコンソールのモニター画面にログを抽出し、データに異常がないかをチェックしながら尋ねた。
「そうですね。特に操作上の不都合はありませんでした。操縦桿からのコマンド伝達遅延も発生していません」
「ふふん、私の考案した操作体系だからね。当然の結果と言えよう!」
遥の肯定的な評価を受け、マリは先ほどまでの落ち込みからすっかり息を吹き返し、誇らしげに胸を張った。
「はい、マリ。単に『上へ登るだけ』の機能ではなくなったので、とても素晴らしかったと思います」
にこにこと屈託のない笑顔で返す遥。だが、言われたマリにとってはたまったものではなかった。
過去最大のブーメランが、マリの頭へ盛大に突き刺さる。
「うがぁーっ! お願いだから遥、それ以上は言わないでくれー!」
頭を抱えて悶絶するマリの悲痛な絶叫が、テスト場に空しく響き渡るのだった。




