10-7 【試作2号】直感操作の「ツインスティック」搭載! 3次元立体機動へのアプローチ
10-7 【試作2号】直感操作の「ツインスティック」搭載! 3次元立体機動へのアプローチ
「結局、脇の下に操縦桿を持ってきて、それを握って操作する方法にしたよ」
そう言って、マリは作業端末のメインモニターに改良版のドローンユニットの3Dモデルを表示させた。
先ほどまでマリが変な動きで音声入力のシミュレーション(のような奇行)を繰り広げていた姿を思い出し、ゆりは念を押すように尋ねる。
「結局、音声入力も視線入力も採用しなかったのね」
「しないというか、出来なかったね。複雑な操作コマンドを頭で考えている間に、何かに激突してドカン……なんて未来しか見えなかったよ」
色々と試行錯誤を重ねてはみたものの、最終的には「手で直接操作するのが一番手っ取り早くて確実」という、極めて単純な結論に至ったらしい。
「右の操縦桿を倒すと、倒した方向に体の向きが回転する。左の操縦桿を倒すと、倒した方向に平行移動するよ。前を向いたまま後退したり、左右に平行移動することも可能だね」
マリの説明によれば、脇の下から胸元へと伸びるアームの先に左右の操縦桿が配置されており、それをグリップして倒すことで機体の姿勢を直感的に制御するらしい。イメージとしては、誰もが一度は触ったことのあるゲーム用コントローラーのアナログスティックを左右独立させて配置したような感覚だ。
「操縦桿の先端についているボタンは拡張機能用かな。バイザー内のメニュー操作やシステム切り替えもこれで行えるよ」
左右のスティック頭部には、上下左右の十字配置と中央ボタンを組み合わせた計5つのボタンがそれぞれ整然と並んでいる。
「で、操縦桿の裏側についている引き金は火器管制用。機銃やミサイルを搭載した場合の発射トリガーだね」
握り込んだ際、人差し指が自然とかかる位置にトリガーが敷設されており、武装使用時に引く設計になっているらしい。
マリの説明をひと通り聞き、ゆりは「なるほどね」と顎に手を当てて深く頷いた。
「平面の2次元操作はそれで把握できたわ。向きの旋回と平行移動は完璧ね。……で、上昇と下降はどうするのかしら?」
当然の疑問だった。相手は地上を走る車ではなく空を飛ぶ機体であり、「高さ」という3次元の概念が加わるのだから。
「それはね、右の操縦桿で視点を上下に傾けて、その状態で左の操縦桿を前後に倒せば上昇・下降ができるよ」
マリの説明では、右スティックで前後に倒して機体を前傾・後傾させ、その状態で左スティックで推進力をかければ、斜め前や斜め後ろに昇降できるという。だが、その方法だと「その場での垂直上昇・垂直下降」ができない。
「その方法だと、前後に進みながらじゃないと昇降できないわね。その場での垂直上昇や下降は……まあ下降ならスラスターを切れば重力で落ちるけれど」
「ゆりの疑問ももっともだね。実は操縦桿の裏側、下の方にもボタンがあるんだよ。左右それぞれに付いていて、これを押すことでその場での垂直上昇・下降ができるようにしてあるんだ」
分かりやすく言えば、コントローラーのL1・R1が上昇、L2・R2が下降といった役割分担だ。慣れるまでは指がつりそうな配置である。
「よく見ると、左右の操縦桿の下側にボタンが二つずつ付いているわね。なるほど、これで操作するのね……でもこれ、ちゃんと指が届くかしら?」
ゆりの懸念も無理はなかった。手の大きさや指の長さは人それぞれであり、中指や薬指、小指で押すとなると、咄嗟の場面でしっかり力が入るかも怪しい。
「一応、バイザーのメニューからボタン配置の変更ができるようにはしてあるよ。スティック上部の拡張ボタンに割り当てることもできるしね。とりあえずは初期設定でテストしてみて、ダメそうなら見直そうかな」
まるで本格的なフライトシミュレーションゲームのような仕様である。
ゲームライクな操作体系が扱いやすいのかどうかは判断に迷うところだが、そもそも最初の試作機には操作系そのものが存在しなかったのだ。それを考えれば、大いなる進歩と言えた。




