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10-6 【技術的限界】「アオサギのリソース枯渇問題」再び! 拡張ユニットへの予備電源搭載が必須に?

10-6 【技術的限界】「アオサギのリソース枯渇問題」再び! 拡張ユニットへの予備電源搭載が必須に?



「いやあ……完全に頭から抜けていたよ。コントローラーを作るの」


「マリ、あなたねぇ……」


ゆりは呆れと冷ややかさが半々に混ざった半目で、じっとマリを見つめる。

その視線に込められた暗黙の非難を感じ取りつつも、(それは君だって忘れていただろう)と言いたげな表情を浮かべたマリは、負けじと言い返した。


「いやいや、ゆりだって完全に忘れていたんじゃないかい?」


今回ばかりはマリの言う通りであった。


「ぐっ……そ、そうね。今回は私も抜けていたわ……それに、アカサギの時と同じミスを繰り返していたわね」


言われてみればぐうの音も出ず、ゆりは素直に己の落ち度を認めた。

設計段階でゆりがマリに操縦ロジックの確認を入れていれば、今回のトラブルは未然に防げたはずなのだ。

さらに不覚だったのは、前回の『アカサギ』で嫌というほど思い知らされた「アオサギのリソース枯渇問題」を、二人揃って思考の隅に追いやってしまっていたことだった。


推定飛行可能時間:わずか6分。


これはアカサギに追加装甲を取り付けた際に弾き出された限界値とまったく同じである。要するに、コストを抑えたエントリーモデルであるアオサギ本体の内部リソースでは、外部に装着した拡張機構を駆動させ続けるだけのキャパシティが存在しないのだ。


「こうなると、バックパック側にもアカサギと同じように予備リソースを搭載するしかないわね」


「逆に言えば、アオサギをベースにするなら、今後は『拡張ユニット側にリソースを持たせる』のを前提設計にする必要があるってことだね」


マリの分析を受け、ゆりは思考を一段深めて提案を重ねる。


「いっそのこと、アオサギを除外するのも手かもしれないわ。元々拡張性を考慮していないモデルなのだから、『拡張不可』と仕様に明記してしまえばいいもの」


単にパーツを後付けするだけの単純な足し算では通用しない――今回の失敗を経て、二人は技術的な限界と設計思想の現実を改めて思い知らされたのだった。


◇


その後、遥に依頼して木っ端微塵になったドローンの残骸を回収ベルトコンベアまで運んでもらい、回収プールへ流してようやく試験場の清掃と復旧作業が完了した。


──さて、操縦方法を丸ごと失念していたマリは、改めて操作インターフェースの構築に取りかかる。


音声入力や視線入力といった案も真っ先に持ち上がったが、試してみるとどれも一長一短で決定打に欠ける。

頭の中でいくら考えても埒が明かないと判断したマリは、あえて自分の身体を実際に動かして音声入力の実用性を試してみることにした。もっとも、そのなりふり構わない検証行動が、後にゆりから冷ややかな目で見られる原因となるのだが。


「前、前、右、右……左、左、後、後……」


広い部屋の中、マリはぶつぶつと呟きながら指示した方向へぎこちなく歩を進める。


「上昇! 下降!」


今度は声のコールに合わせてぴょんぴょん跳ねたり、突如その場にドスンとしゃがみ込んだりを繰り返している。

普段からマリの奇行には耐性がついているはずのゆりだったが、脈絡なく跳躍と屈伸を繰り返すその姿には、さすがに「とうとう頭が壊れてしまったのだろうか」と本気で案じざるを得なかった。


「マリ、頭は大丈夫? ……病院に行く?」


これ以上ないほどストレートで真剣な問いかけである。


「あはは! 違う違う、ゆり! これは音声入力を実際に運用したらどうなるか、体感でシミュレーションしていたんだよ!」


額の汗を拭いながら、マリは頬を指で掻いて苦笑いした。


「なるほど……ヘルメット内での音声操作の応答速度と、身体運動のズレを試していたわけね」


「さすがゆり、理解が早くて助かるよ。ただね、これ……実際にやってみるとすっごく面倒くさい! 視線入力も検討したんだけど、緊張で目が泳いだ時の誤作動リスクが怖くてね。なんだかんだで、手元でカチカチ動かせる物理コントローラーが一番手っ取り早くて確実な気がするんだ」


「ん? アカサギのスラスターを操作する時はどうしていたの?」


疑問を抱いたゆりがふと首をかしげる。


「あれはね、搭乗者が体勢を変える……つまり重心を傾けるとセンサーが自動で判別して、加速や一定距離での停止を行なうように組んであるんだ。だから直感的ではあるけど、操縦にはちょっと熟練が必要なんだけどね」


「それを今回のドローンにも応用することはできないのかしら?」


「それも考えたんだけどね。ゆり、よく思い出してごらん。空中に吊るされた人間の身体がどうなるかを」


例えるなら、猫だ。

首根っこを掴まれて持ち上げられた猫は、脱力して身体をダラーンと垂れ下げる。そして次の瞬間にはパニックを起こして暴れ出すまでがセットだ。


「あー……なるほど。空中吊り下げ状態じゃ重心移動のセンサーが機能しないわけね。理解したわ」


2次元の平面移動ならいざ知らず、3次元の立体機動となれば操作軸の数も複雑さも跳ね上がる。

重力から解放された空間での姿勢制御の難しさを、ゆりは深く深く実感するのだった。

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