10-5 【大惨事】サギドローン浮上成功!……しかし「操縦方法がない」という致命的欠陥
10-5 【大惨事】サギドローン浮上成功!……しかし「操縦方法がない」という致命的欠陥
今回の飛行試験はユニット自体が大型ということもあり、まずは試作機を1機のみ出力し、遥が『アオサギ』にそれを装着してテストを実施することになった。
「初めての飛行試験だから、理論上は飛ぶはずとはいえ何が起こるか分からないわ。遥なら大丈夫だと思うけれど、もしもの時はシラユキで対処してちょうだい」
試験場で待機する遥に向け、ゆりがアナウンス用のマイク越しに指示を飛ばす。
「はい、ゆり。分かりました。……遥、飛行試験を開始します」
アオサギを装備した遥が背中のドローンユニットを起動すると、4基のローターが風を切る独特の重低音を鳴らし始めた。直後、遥の身体がふわりと床を離れ、宙へと浮き上がる。
同時に、遥のバイザー内にはユニットから送られてくるシステム情報が次々とシームレスに展開されていった。
External mechanism: Detected.
Establishing link.
Syncing power grid.
Running full-system scan.
Status: Nominal.
Booting core system.
Online.
──推定飛行可能時間:6分
バイザーの端に表示されたその数値は、またしてもマリたちの「決定的なポカ」を物語っていた。
サギドローンがアオサギ本体のリソースにそのまま依存する設計になっていたため、エネルギーの消費速度が跳ね上がり、稼働時間が極端に短くなってしまったのだ。
「マリ、質問です」
「どうした遥、何か問題でもあったかい?」
「浮くことは出来ましたが……これはどうやって操作するのでしょうか?」
通信越しに投げかけられたあまりに素朴な疑問に、マリはハッと息をのんで顔を強張らせた。
「ドローンを浮かせること」だけに集中しすぎたあまり、肝心の操縦インターフェースを組み込むのを完全に失念していたのだ。
遥が困惑するのも至極当然であった。恐ろしいことに、この試作機には右へ進むか左へ進むかどころか、旋回や停止を行うための操作手順すら存在しない。
ただただ上昇を続けるサギドローンは、このままでは試験場の頑丈な天井へと一直線に激突してしまう。
「いけない、このままじゃ天井にぶつかるわ!」
事態の異様さに気づいたゆりが悲鳴のような声を上げた。
「遥、今すぐドローンを切り離して退避して!」
和やかな雰囲気で始まったはずの飛行テストは一変し、試験場内に鋭い緊張が走る。
「了解しました。緊急離脱します」
遥は指示を受けるや否や、瞬時にバックパックをパージすると同時に『シラユキ』へと完全換装。圧倒的な反応速度でその場から退避した。
直後、主を失ったバックパックは凄まじい勢いでローターを回転させたまま天井へ激突。轟音とともに木っ端微塵に砕け散った。
パラパラと降り注ぐ残骸を見つめながら、観測室の二人は実に対照的な反応を見せていた。
「ありゃ……操縦方法を考えてなかったね」
「……もしあれをマリが装備して飛んでいたら、今頃どうなっていたことか……」
テヘペロと可愛らしく首をかしげるマリの横で、ゆりは顔面蒼白になり、生きた心地がしない様子で震えていた。
そして当の遥といえば、何事もなかったかのようにすたりと静かに着地し、天井から落ちてきたドローンの残骸をただ無表情で見下ろすのだった。




