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惨劇の最中、現場に最初になだれ込んだ警官の生き残りが、かろうじて生きて指令室へ無線を繋ぎ、狂ったように最大規模の応援を要請していたのだろう。
デパート周辺の全道路からは、空を焦がすようなサイレンの音が何重にも重なり合い、何台ものパトカーが次々と現場へ向けて急行していた。しかし――それは、警察組織が重ねて打ってしまった、最悪の追加の「悪手」に過ぎなかった。
そもそも、現在の主要道路は、怪物の恐怖から逃れようとデパート周辺から津波のように溢れ出してきた何千、何万という民衆によって完全に埋め尽くされている。
そしてその群衆の背後からは、逃げ遅れたリソース(人間)を効率よく融解捕食するアノマリーたちが、容赦ない速度で追撃を仕掛けていた。
そこへ逆方向からパトカーを突入させようとしたところで、道路を埋め尽くす人間の壁に阻まれ、車両は走行することすらできずに一瞬で完全な立ち往生に陥る。
業を煮やした警官たちがパトカーから飛び降り、生身で現場へと向かおうとするが、正面から押し寄せてくる避難民たちの勢いは凄まじく、前進することすらままならない。
「おい、何があったんだ! 落ち着いて状況を説明しろ!」押し寄せる人の波を掻き分け、必死に警官が話しかけたとしても、彼らは我先にとただ前だけを見て狂ったように走り去るだけだ。誰も警官の言葉に耳を貸す余裕などなく、現場の正確な情報は一切掴めない。命を賭して前線へ進もうとするも、情報の遮断された檻の中で立ち尽くすしかない警官。
生きる本能のままに全てをなぎ倒して大通りへ逃げ出す民衆。そして、その絶望の津波を背後から静かに、確実に刈り取り続けるアノマリー。
法の秩序も、警察の防衛線も、すべてが機能不全に陥ったその場所で。――あとはただ、先ほどと全く同じ無慈悲な大捕食の惨劇が、冷徹な機械のように繰り返されるだけであった。




