10-3 【新展開】「サギを飛ばそう!」ナベさんから届いた次なる難題(無茶振り)
10-3 【新展開】「サギを飛ばそう!」ナベさんから届いた次なる難題(無茶振り)
「よし、飛ばそう」
突如として要領の得ないことを呟いたマリに、隣にいたゆりは(またわけの分からないことを……)と心の中で呆れつつ、聞かないふりを決め込んで作業を続けていた。
「ゆり、聞いてくれ。飛ばそう」
しかし、マリはしっかりとゆりの方に体を向け、改まって呼びかけてくる。ゆりは「やはり逃げられないか」と諦め、お約束のように嫌そうな顔で向き直った。
「マリ、意味が分からないわ。最初から説明しなさい。主語が完全に抜けているのよ。いつ、誰が、何を、どうやって……5W3Hで話しなさい」
「あぁ、えーとだな……サギを飛ばそうと思ってね」
「鷺なら、放っておいても勝手に飛ぶわよ」
ゆりの容赦ない即答に、まさかストレートに切り返されるとは思っていなかったマリは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる。もちろんゆりもマリの意図は察しつつ、あえて意地悪くボケ返したのだ。
「いや、鳥のサギじゃなくてだな……」
「はいはい、飛行ユニットのことね。ナベさんからでも依頼されたのかしら」
すぐに真意を見抜いたゆりに、マリは(さすがゆり……)と感心せずにはいられなかった。まさに「さすゆり」である。
「ほら、アカサギが滑空できるだろ? 『ならサギシリーズは全部飛ばせるんじゃないか』ってナベさんが言ってきたんだよ。その時は何を言い出すんだと思ったんだけどさ」
「なるほど、発信源はナベさんね。またろくでもないことを……」
ゆりは顎に手を当て、少しの間思案を巡らせる。
「まあ、実現自体は可能だとは思うわよ。ブレードアーマーの試験時に作成したバックパックのデータが残っているでしょ? あれに手を加えていけばいいと思うわ」
即座に具体的な提案が出てくるのは、既にゆりの頭の中に拡張機構の構想が存在していたからだった。
「さすがゆり! そう言ってくれると思ったよ」
マリは狙い通りの返事を得て、嬉しそうに表情をほころばせた。
「でも、一口に飛行と言っても色々あるわよね。ドローンやヘリのように速度より『滞空性能』を重視するのか、ジェット機のように『長距離の高速移動』を目的とするのか。ロケットのように宇宙まで飛ぶのは……まあ不要として。何かナベさんからリクエストはあったの?」
「いや、特に。『なんか飛べばいい』らしい」
その答えを聞いた瞬間、ゆりの表情がげんなりと落ちた。
「相変わらず、ふわっとした大雑把な要望ね……」
二人はその場にいないはずのナベさんの能天気な顔を同時に思い浮かべ、揃って深いため息をつくのだった。




