9-16 【大逆転】合体機構を捨て、最初から独立した重装甲機体として最適化!
9-16 【大逆転】合体機構を捨て、最初から独立した重装甲機体として最適化!
「ゆり、もうひとつ素晴らしいアイデアがあるんだ。多分、有能なゆりなら今からすぐにでも形に出来るんじゃないかな」モニターを見つめながら、クローディア(マリ)は人差し指を立てて、楽しそうに悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「うん? 今度は一体どういうものかしら」
「以前の『アオサギの最適化』の件を思い出してほしいのさ。あれと全く同じアプローチが、この重装甲フレームでも出来ると思うんだよ」そう語るマリの表情は実に愉快そうだったが、言われたゆりは何が始まるのかと怪訝そうな顔で首を傾げた。
「マリ、ごめんなさい。ちょっとまだ話の全容が見えてこないわよ」ゆりがそう言うのも無理はなかった。
ナベさんから依頼された「重追加装甲」の宿題は、アオサギの上へ重ねる灰色のプロトタイプとしてすでに完璧に完成したと思っていたからだ。
「ふむ、では分かりやすく説明しよう。さっき完成した追加装甲仕様のアカサギは、あくまで『アオサギのオプションパーツ』扱いになるわけだけど……。これさ、わざわざ後から合体させるんじゃなくて、最初から『アカサギという独立した重装甲製品』としてカタログに並べて売っちゃえば良いかと思ってね!」そう言って片目をつぶってウィンクしてみせるマリの意図を、ゆりは瞬時に理解した。
マリが提案しているのは、アタッチメントとしての追加・着脱機構をすべて排除し、最初から重装甲型として最適化した専用の完成品を新規にロールアウトする、という極めて合理的な商業・工学設計の転換だった。
「なるほど……。確かに、後付け用の『合体機構(接続ジョイント)』を最初から外してフレームを固定してしまえば、無駄な製造コストを大幅に下げられるわね。それに、余計な可動隙間が消えるから、スラスターの姿勢制御プログラムも劇的に簡略化できるし……」しばらくの間、ブツブツと呟きながら凄まじい速度で脳内シミュレートを重ね、思考の海に深く潜っていたゆりが、ハッと目を開けて帰ってきた。「――出来そうね。非常に理にかなっているわ、すぐにやってみるわね」そう言うや否や、ゆりは端末に向かって猛烈なタイピングで操作を始めた。
ゆりが目を付けたのは、ベースとなる基本素体の変更だった。アオサギの上から重い鎧を着せるから燃費が6分になったのだ。ならば、最初から内包エネルギーリソースに潤沢な余裕がある『クロサギ』のフレームを素体に選び、そこへ重装甲とバッテリーを最初から一体化させて再設計すればどうなるか。
結果は劇的だった。新しく組まれた「単体製品版アカサギ」は、オプション扱いの追加装甲モデルとは比較にならないほど、遥かに実戦的で安定した連続稼働時間を確保することに成功したのである。
メインモニターに映し出されたのは、着脱式の灰色の装甲ではなく、頭部のヘルメットにいたるまで全身が鮮烈なワインレッドで統一された、本物の重装甲型戦闘装甲服『アカサギ』の威風堂々たる完成姿であった。
兵装のデータについても、先ほど開発したばかりの追加装甲用スラスター武器や、これまでのサギシリーズ用の共通兵器をそのまま一切の無改造で共用できるため、製造ライン側に新しい武器カタログをわざわざ別枠で用意しなくて済むという、絶大なコストメリットまで付いてきた。
「流石だね、ゆり! 私の思いつきから、これほど完璧な仕様書を爆速で刷り上げるなんて、これはこれで現場で物凄い需要(売れ筋)になりそうだね!」
「あなたこそ、流石ねマリ。ただのロマン兵器で終わらせずに、製品としてのバリエーションに昇華させるなんて、中々気の利いた最高の発想だと思うわよ。これならナベさんも、文句の付けようがなくて確実に納得のいく一品になるわね」二人はお互いの天才的な手腕を「流石」と称え合い、最高のパートナーシップの笑顔を交わした。
そうして確定した単体製品版『アカサギ』のマスターデータは、すぐさまラボの3Dプリンターへと転送され、実体化の重厚な出力稼働音を響かせ始めるのであった。




