9-15 【新機体誕生】重追加装甲モデル、深みのあるワインレッドの『アカサギ』へ!
9-15 【新機体誕生】重追加装甲モデル、深みのあるワインレッドの『アカサギ』へ!
あの日、大の字のまま指一本動かさなくなったクローディア(マリ)は、ゆりの指示によって、白銀の遥の手でお姫様抱っこされて丁重に研究室へと回収された。
それから数日後。広大な屋内試験場には、灰色のプロトタイプ重装甲を全身に纏った大量の遥たちが整列し、凄まじい爆音と共にスラスター装備の重量級兵器をブンブンと振り回していた。槍、斧、槌、棍棒、そしてあの突撃用のロケット大楯。
第8章で封印された凶悪なギミック付きの武器たちが、重装甲『アオサギ』の上乗せフレームとして次々と最適化され、群体知能をフル活用した並列実地評価試験が行われていたのだ。さらに、その中には今回新しく鍛造された『スラスターソード』や『スラスタークレイモア』の禍々しい姿もあった。これは重厚な大剣の刀身(背部)に高出力スラスターを直付けしたもので、スラスターの爆発的な一瞬の推進力によって剣を加速させ、その圧倒的な質量と速度で敵の肉体を両断、切断するシステムだ。
ただでさえ危険だった白兵戦カタログが、重装甲のエネルギーリンクを得たことで、より一層凶悪な武装へと進化を遂げていた。
「さて。実地データは遥たちが一斉に取ってくれているから良いとしてさ。コンソールの上で、いつまでもこの機体を『アオサギ追加装甲仕様(仮)』って呼び続けるのもいい加減面倒だと思うのよ」研究室のメインコンソールでログを監視していたマリは、画面を指差しながら、ソファでコーヒーを飲むゆりへと向き直った。今、試験場で遥たちが装備している重装甲モジュールは開発用の試作品のため、塗装も一切施されていない無機質な「灰色(サフェイサー色)」のままであった。
「はいはい、分かっているわよ。またいつもの『名付け』と『色決め』の相談よね」ゆりは手元のカップを置き、もはやお約束となった相棒のこだわりに先回りして答える。
「話が早くて助かるよ、ゆり! 今回の追加装甲のベースカラーは『赤色』にしようかな。名前はそのままシンプルに『アカサギ』で良いかな、と思ってね!」それを聞いたゆりは、フッと呆れたように笑いながらすぐに端末を操作し、モニターに表示されている重装甲騎士の三次元モデルの色を、灰色から鮮やかな赤色へと変更してみせた。
「マリ、一応ツッコミを入れておくけれど、生物学的に『アカサギ(赤鷺)』なんて言う名前の鳥は実在しないわよ。まぁ、頭頂部から首にかけて綺麗な橙色(婚姻色)になる『アマサギ(亜麻鷺)』なら現実にいるけれどね」
「え、アカサギって実在しないのかい!? ……まぁ、語感が良いから別に良いんじゃないかな。あ、ゆり、その赤色だけど、もう少し落ち着いた暗めのトーン、ワインレッドに近い深みのある赤にしておくれよ」マリは「存在しない鳥だったのか」と意外そうな顔をしつつも、すぐにカラーパレットの数値を落とすようゆりに暗色の赤を指定した。
「――こんな感じかしら。それじゃあ、名前はアマサギに訂正しないで、あなたの希望通り『アカサギ』で登録を進めるわね」
「おぉ、素晴らしい色味だね! うん、製品コードネームはアカサギでバッチリさ。こういうミリタリー製品の識別名はね……」
「「――分かりやすい方が一番良いんだよ」」二人の声が100%完璧にハモり、研究室に楽しそうな笑い声が響き渡った。以前にマリが力説していた命名規則のロマンが、今ではゆりの側にも完全に染み付いている証拠であった。
「それにしてもマリ、あなた、どさくさに紛れて第8章で私がダメ出ししたあの失敗作の危険な近接武器たちを、見事に重装甲用のオプション兵装として作り変えて復活させたわね」
「あはは、あの大楯のスラスター同期が素晴らしいきっかけになったのさ。それに、ナベさんから事前に見せてもらったあの……ほら、なんだったっけ。『地球連合軍』だっけ? あのゲームの駆動システムは本当に参考になったね!」
おしい、本当のゲームタイトルは『地球攻撃軍』なのだが、相変わらず自分の興味のない固有名称の記憶力はうろ覚えなクローディアであった。
「地球攻撃軍ね。あと、何気に元データのカタログには無かった新しい剣と大剣のカテゴリーまで勝手に入っていたわね」
「あぁ、スラスターソードの件でしょ? あれも、他の槍や斧のブレード生成プログラムをそのまま流用してフレームを組んだ感じだしね。やっぱり白兵戦騎士を名乗るなら、王道の剣も無いと不便かと思ってさ」
「と言うか、もうこの『重装甲型アカサギ』だけで、天野グループの独立した一つの兵器シリーズとして世界中に大々的に売れるわよ。追加オプション兵装の総数が、とんでもないことになっているもの」メインモニターの向こう側で、大勢の赤い重装甲騎士の遥たちが大地を激しくスライドしながら模擬戦を行っている最中、それを特等席で眺める二人の天才による兵器談義は、どこまでも楽しそうに続いていくのであった。




