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9-13 【怪我の功名】暴走大楯を「5m連続シールドバッシュ」仕様へ即座に再調整!

9-13 【怪我の功名】暴走大楯を「5m連続シールドバッシュ」仕様へ即座に再調整!



「――ゆり、悪いけれど、このまま試験は続行するよ」


「え? ちょっと待って、もう追加装甲の動作確認は一通り終わったはずよ。ここから一体何をするつもりなのよ」ゆりが戸惑うのも無理は無かった。最後に大楯の暴走自爆事故を起こしてしまったとはいえ、本日の予定していた実験工程はすべて終了したと思っていたのだ。そう聞き返すのも当然であった。


「シラサギ(第7章)の時と同様に、この暴走する大楯も今から再調整する。恐らくこの凄まじい突進力は、まともに使いこなせれば前線で敵アノマリーを圧倒する強力な武器になるよ。一応、この弾丸のごとくぶっ飛ぶ基本性能はそのまま遥の専用仕様(カスタム)として置き、これとは別の重装甲専用にパワーセーブした仕様に変更する。突進攻撃も戦術として追加すれば絶対に化けると思うんだよ。今から調整を仕立てるよ」クローディア(マリ)はそう言って遥に床から立たせてもらい、ついでに防壁に深く突き刺さったままの大楯を回収してくるように言った。


「はい、マリ。取ってきますね」遥が一糸乱れぬ足取りで壁から盾を引き抜きに戻る間、マリはヘルメットのバイザーの奥で再び空間入力のデバッグモードを起動させ、大楯のスラスター制御プログラムの書き換えに入った。そして数分後。土煙の引いた試験場の中央に、再び重装甲騎士姿のマリと、白銀のシラユキを纏った遥が並んで立っていた。


「……今度は本当に大丈夫なのでしょうね?」コントロールルームのスピーカー越しに聞こえてくるゆりの声は、先ほどの恐怖の余韻もあってか、ひどく心配そうに張り詰めていた。


「ああ、大丈夫だよ、ゆり。全身の追加装甲と同様に盾のスラスターで進んでもきっちり5mの距離で逆噴射がかかって安全に止まるようにプログラムを変更したよ。また、出力を最適化した事でスラスターの『連続使用』も可能になった。これなら敵陣に瞬間的に突っ込んで強烈な牽制(シールドバッシュ)を仕掛けるという戦術的な形も綺麗に出来るよ。――まぁ、ものは試しだ。さっそくやってみよう。遥、サポートをお願いするよ」


「はい、マリ。いつでもいけます」マリはそう言って大楯を左腕にしっかりと構え、再び膝を深く曲げて重心を落とした中腰の姿勢をとった。


「じゃあ――行くよ」トリガーを起動し、大楯の裏面のスラスターに点火する。瞬間、激しい点火火花と共に、クローディア(マリ)の巨体は盾の推進力にぐいっと引きずられるようにして、前方へと一瞬で5mほど前進して美しく静止した。


今回は事前に仕込んだ距離リミッターの逆噴射が完璧に作動したため、先ほどのような大事故になることはなかった。だが、装甲側のスラスターが連動していないせいで、上半身だけが盾の強烈な慣性に引っ張られて、危うく前のめりに姿勢を崩しかけるという「引きずられている状態」そのものは何一つ変わっていなかった。


真横を寸分の狂いもなく並走していた遥も、今回はマリの体勢のブレが安全圏内であると瞬時に計算し、両腕で助ける(お姫様抱っこする)までもないと判断したらしい。


『――マリ、完全に盾に身体を引きずられているわよ』通信回線から、ゆりの冷ややかなツッコミが飛んでくる。コントロールルームのメインモニターから、マリの不細工な前傾姿勢のブレをゆりもしっかりと目撃していたらしい。


「ふむ……。なるほどね。つまり、左腕の盾のスラスター起動と、全身の追加装甲スラスターの点火タイミングを、100%完全に同期(リンク)させる必要があると言う事か。なるほど、面白い」マリはヘルメットの奥でニヤリと不敵に笑うと、おもむろに両腕を前に突き出し、虚空に向かって透過キーボードを高速で叩く真似を始め、新たなる同期コードの構築へと没頭していくのであった。

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