9-9 【実地テスト】歩行・ジャンプ・受け身起き上がり完璧合格!
9-9 【実地テスト】歩行・ジャンプ・受け身起き上がり完璧合格!
「よし、それじゃあ遥。今回も万が一に備えて、シラユキを纏って隣でサポートをしてほしいかな」
「マリ、分かりました」遥が静かに目を細めると、彼女のインナースーツの表面を無数の高密度ナノマシンが波のように覆い尽くし、一瞬にして白銀の戦闘装甲『シラユキ』へとその姿を変貌させた。
いつでもクローディア(マリ)を完璧にキャッチできるよう、隣で絶対的なセーフティ(護衛状態)として物理的に機能する構えをとる。
いくらシステムによる出力制限や慣性緩和の制御プログラムが裏で完璧に働いてくれているとはいえ、今この装甲の内側に入っているのは、ただの生身の人間である。クローディア(マリ)はヘルメットの奥で、以前の会議で見たテスターたちのあの凄まじい暴走映像の記憶をふと思い出し、(……あの時のテスターの皆さんは、よくこれだけの衝撃を受けて五体大満足で無事でいられたなぁ)とつくづく他人事のように感心するのであった。
「そもそも出力全開のままデバッグを終わらせたのはお前だ」という強烈なツッコミがゆりからそのまま返ってきそうな自覚は、完全に棚に上げつつ、クローディア(マリ)は慎重に行動へと移る。
「よし。まずは、基本の『前進』から試してみようかね」そう言って、アオサギの上に分厚い追加プレートを重ねて巨大な重装甲騎士のようになったクローディア(マリ)は、試験場のコンクリートの上をそろりと一歩、踏み出した。
上層の外部装甲が物理的に干渉し合うため、どうしてもガシャガシャと歩き方が不細工になってしまうのは、この圧倒的な質量と防御特化の仕様を考えればこの際仕方のないことだろう。
人間の脳の応答速度に合わせたゆりの最適化プログラムが完璧に機能しているため、最初のシラサギの実験映像のように、いきなり高速で目の前の防壁に突っ込んでめり込むような事態は発生しなかった。
「ふむ、歩行のアシストは全く問題ないかな。よし、次は『跳ねて』みよう!」クローディア(マリ)はそう言うと、その場で軽く膝を曲げてジャンプを繰り返した。
ドンッ! ガシャンッ!! ドンッ! ガシャンッ!! と、鉄の塊がぶつかり合うようなけたたましい金属音が試験場の四方に激しく鳴り響くのも、この大質量のタンク役である以上は仕方のないことだ。しかし、初期のシラサギのように過剰な跳躍力で天井のコンクリートに頭から刺さるようなこともなく、足元のアシスト減衰は完璧に効いていた。
「よし、今度は『ステップ』だ」クローディア(マリ)はそう言って、今度はその巨体を右へ左へと小刻みに跳ばせてみたり、前後に素早くステップを踏んで重心の移動ログを確認した。
さらには、実戦でアノマリーの打撃を受けた状況を想定し、あえてドスンと派手に転んで見せてから、自力で滑らかに起き上がれるかどうかのスタビライザー診断も念入りに確認してみた。ゆりの堅実なパワーアシストのおかげで、人間が行う一連の基本動作に、設計上の問題は何一つ見当たらなかった。
「さて……。基本動作はすべて合格。いよいよここからが本命、あのゲームの動画から着想を得た『スラスター(推進装置)』の連続スライド駆動試験に移行しよう。――遥、ここからが本当の本番だからね、頼んだよ」
「はい、マリ。いつでもいけます」クローディア(マリ)はそう言って、白銀のシラユキの少女に声をかけると、バイザーの奥の視線入力で全身の推進ロックを解除した。
巨大な大楯を左腕にしっかりと構え、膝を深く曲げて重心を落とした、完璧な突撃の中腰の姿勢をとる。
――次の瞬間、重装甲騎士の背面に仕込まれた全ナノ・スラスターのノズルが、ボゥッ!と凄まじい点火火花を吹き上げた。




