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9ー6 【解決策】紫苑と唯の「イチゴジュレチョコ」から着想を得たデッドスペース内蔵バッテリー

9ー6 【解決策】紫苑と唯の「イチゴジュレチョコ」から着想を得たデッドスペース内蔵バッテリー



「――まぁ、冷静に考えれば当然の帰結よね。アオサギは元々、シラサギから通常稼働に一切問題が出ないように、極限まで計算を重ねて無駄を削ぎ落として再設計したものだもの。そんなカツカツの省エネ設計の上に、あんな重い余計なものを付け足したらそうなるに決まっているわ」連続稼働時間『推定6分』という絶望的なシミュレート結果を前にして、ゆりは慌てることもなく、デスクのコンソールを淡々と叩きながらクローディア(マリ)に答えた。


「えー。この悲惨な結果を前にして、ゆりは随分と落ち着いているね。もしかして、すでに何かこれを打破するための完璧な策がある、という感じかな?」


「まぁね。そもそもマリの暴走に私からストップをかけたのだしね。答えはさっきマリが言っていたバンダムの設定の話しになるし……。ほら、以前に紫苑さんと唯ちゃんがここに遊びに来てくれた時の会話でも、全く同じヒントがあったでしょう?」ゆりは、マリからその質問が返ってくるのを最初からすべて予想していたかのように、不敵な笑みを浮かべて答えた。


「ふむ……? そこで外部装甲の側に電池(バッテリー)の機能を設ける、か。……ところで、唯ってあの時、何か技術的な会話をしていたっけ? ずっとお菓子を食べていたしお菓子の話しか記憶にないのだけど」


「そう、そのお菓子の話よ。 紫苑さんが、開発に行き詰まっていた私達にヒントを出すように会話してくれていたでしょう。『チョコレートの中に、最初からイチゴのジュレ(資源)を閉じ込めておけば、ひと口でどっちも美味しく味わえる』って」ゆりが苦笑しながら、当時の温かい日常を振り返る。

そう、あの紫苑たちの何気ないお菓子の差し入れの瞬間に、この追加装甲の設計構想は、すでにゆりの頭の中で完璧に出来上がっていたのである。


「要するに、アオサギ単体でのエネルギー運用が重量のせいで困難なら、上から被せる『外部装甲の空いたデッドスペース』の中に、最初から動かすためのナノマシン資源や追加バッテリーをぎっしりと詰め込んで内蔵してしまえば良いのよ」


「いや、だから! 私は最初から、あの動画みたいにミサイルと電池と推進機を全部まとめて外側に付けたら良いって言ったのだけどね!」我が意を得たりとばかりに主張してくるマリの回答も、ゆりは当然のように予想していた。彼女は呆れたように頭を左右に振って答える。


「それだと、また最初のシラサギの二の舞になるわよ。まずは重装甲として機能するための『必要最低限なもの(防御力と電池)』だけでシンプルに構成を考える。盛り込みたいロマンの要素は、どうしても無理そうだと分かってから、後から一つずつ追加して検証すれば良いのよ。最初から大量の機能をちゃんぽんして盛り込んでいたら、いざ不具合が出たときに、どれを削れば良いのかまた泥臭いデバッグで苦労するわよ」それは、これまでの開発の惨劇(第7章・第8章)を特等席で支え続けてきた、堅実すぎるゆりならではの極めて理性的な回答であった。


「それに、ついでに言うなら、私達が今シラサギやクロサギではなく、わざわざ『アオサギ』をベースにして追加装甲の実験をしている理由もよく考えてね。シラサギやクロサギなら、元々の内包リソースが潤沢だから、上から重い鎧を着せても稼働時間なんて問題ないのでしょう? なのに、どうしてアオサギを使うのか。――その理由はすなわち、現場(商業流通)における『コスト』よ」バーン!と、ゆりの背後に後光が差し、神々しい効果音が鳴り響いたかのような錯覚を覚えるほどの、圧倒的な現実の重みを秘めた言葉であった。


「コスト管理か……。確かに、天才の私としたことが、そこは全く頭に置いて考えていなかったね。……まぁ、でもさぁ、ゆり。コストなんてものは、上の役員や工場ラインを動かすナベさんたちが考える段階の話しであって、基礎開発をしている私達のフェーズでそこまで気にする必要もないと思うのだよ」マリは「そこは専門外だし」とばかりに肩をすくめたが、ゆりはコンソールをバシッと叩いてそれを一喝した。


「マリ、あまいわ! ここでコストを度外視して好き勝手に作ったら、絶対にあとでナベさんから『こんな高いもの現場で量産できるか!』って、痛すぎる仕様変更(手戻り)のブーメランが私達の頭にクリーンヒットするのよ!」「予算」と「納期」という生々しい大人の事情。


夢の戦闘装甲服を形にする現実のハードウェア開発というものは、時としてアノマリーの襲撃よりも、遥かに世知辛い話しなのであった。

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