9-5 【悲報】アオサギ重装甲化、死重アシストで活動限界時間が「6分」に大暴落
9-5 【悲報】アオサギ重装甲化、死重アシストで活動限界時間が「6分」に大暴落
再設計のデータを練り直そうと画面を睨んでいたクローディア(マリ)だったが、次の瞬間、何かに気づいたようにガタッと椅子を鳴らしておもむろに立ち上がった。そのただならぬ様子を目にしたゆりは、また何かおかしな閃きでも降ってきたのかと、警戒を孕んだ視線を向けて話しかける。
「ちょっとマリ、どうしたのよ突然。今度は一体何があったのかしら」
しかし、いつものように目を輝かせることもなく、マリはまるで苦虫を噛み潰したかのような、ひどく引き攣った表情のままゆりに答えた。
「……ゆり。私達、ジョイントの規格以前に、もっと根源的な部分で大やらかしを仕でかしているよ、これ」
「え?」とゆりが声を漏らす。
マリが神妙な手つきで端末を操作すると、メインモニターへアオサギの基本3Dモデルが表示され、そこへ過去のブレードアーマーの重追加装甲の数値を仮データとして上から重ね合わせた、シミュレート画面が展開された。
そのモニターの最下部、稼働ステータスの項目には、鮮烈な赤文字でこう表示されていた。
――【 連続稼働時間:推定6分 】
「あら、あ……あー……」
そのあまりにも短い数字を見た瞬間、ゆりもすべてを瞬時に悟り、コンソールを前にして頭を抱えた。
実戦の最前線に投入されるタンク役の戦闘装甲服において、活動限界時間がたったの「6分」では、そもそも作戦を始めることすらできず、話にならないのである。
原因は、HIMATエネルギーのパワーバランスの配分ミスであった。
すべての原点である『シラユキ』は、遥が自分のためにナノマシンで構築した世界唯一のワンオフ装備だ。
その細部に至るまで極限にまで最適化されたシステムは、内蔵された分子エンジンによって無尽蔵に動き続けることが可能であり、あまつさえ敵アノマリーの肉体を分子レベルで融解分解し、自分のエネルギーリソースとして瞬時に還元(捕食)する機能まで有している。
まさに神の領域の「永久機関搭載モデル」と言って良い代物であった。
そして、そのシラユキの凄まじい基本構造を、人間が扱える限界値に合わせてどうにかスケールダウンしたモデルが『シラサギ』。
内包するリソースはシラユキほどではないにしろ、有り余る莫大なパワーの制御に、前章で二人が死ぬほどの苦労(第七章・第八章)をしてようやく押さえ込んだ最高峰のハイエンドだ。
そのシラサギの出力を、扱いやすいようにちょうど半分(50%)に落としたミドルモデルが『クロサギ』。
シラサギほどではないにしろ、内包されたリソースは潤沢であり、いざ実戦の修羅場となれば出力を一時的に解放しても余裕で戦闘行動を継続できるポテンシャルを残している。
最後に、一番安い大量生産向けのエントリーモデルとして、シラサギの最大出力をじつに10分の1(10%)にまで思い切り引き落とした普及型が、今テストしている『アオサギ』だ。
無駄なエネルギーロスを削ぎ落としているため、通常稼働であれば連続で1時間から2時間は余裕で現場で活動できる、燃費に最も優れた省エネ設計。……のはずだった。
そう、アオサギの活動限界時間の項目を、通常稼働であれば最低でも「60分」と想定して計算すると。
ブレードアーマーの重装甲をその上からパイルオン(追加装着)した瞬間、そのモデルの稼働時間はおよそ「10分の1」にまで一瞬で大暴落し、たったの6分へと短縮されていたのである。
消えた膨大なエネルギーリソースは、すべて上から重ねた外部重装甲の死重を無理やり持ち上げ、アシストを維持するためだけにゴリゴリと食い潰されていたのであった。
「アオサギベースで重装甲を作ったら、燃費が最悪になって即座にガス欠を起こす」という、これまでの松竹梅の出力設定が完璧なブーメランとなって突き刺さった、天才二人組による致命的な計算見落とし(やらかし)の発覚であった。




