9-2 2つ目の元ネタは『超亜空要塞マクラスフロンティア』の全弾発射&脱衣
9-2 2つ目の元ネタは『超亜空要塞マクラスフロンティア』の全弾発射&脱衣
「……どうやら、ナベさんから送られてきた動画はこれだけじゃないらしい。まだ続きがあるよ」クローディア(マリ)はさらに端末を操作し、渡辺譲司から添付されていた二つ目の動画ファイルを再生した。
メインモニターに映し出されたのは、これまた往年の歴史的名作ロボットアニメ――『超亜空要塞マクラスフロンティア』のワンシーンであった。銀河の各星系へと旅立った人類の移民船団が、未知の宇宙生命体(宇宙怪獣)の襲撃に遭遇し、生き残りをかけて激しい宇宙戦を繰り広げる物語である。
画面の中では、小隊長を務めるエースパイロットの駆る可変戦闘機『ヴァルキリー』が、圧倒的な数の宇宙怪獣の群れを相手に、たった一機で獅子奮迅の戦闘を繰り広げていた。
戦闘機形態から人型ロボットへと一瞬で華麗に変形したヴァルキリーは、コクピット内のパイロットによる超高速の視線入力ロックオンに連動し、機体のあらゆる部位に増設された分厚い追加装甲のハッチをパカッと一斉にスライド展開させた。
そこから、数え切れないほどの無数のマイクロミサイルが煙の尾を引いて一斉に全面射出される。
全方位へ放たれたミサイルの嵐は、夜空の打ち上げ花火のように美しい軌跡を描きながら宇宙怪獣の群れへと次々に吸い込まれ、一瞬にして敵の防衛線を爆発の炎で木端微塵に消滅させてみせた。
そして、すべての弾薬を撃ち尽くして用は済んだとばかりに、ヴァルキリーは全身の分厚い追加装甲をその場で一斉に「ボルトパージ」してパッと切り離した。
中から現れたスマートな素体のまま、再び鋭い飛行形態へと高速変形し、戦場を悠々と去っていくのであった。
その一連のワンシーンを見届けたマリは、今度は顎に手を当てて、先ほどよりもさらに現実的な工学設計の観点から首をかしげた。
「……いやさ、ゆり。これって本当に『装甲』なのかい? どちらかと言うと、ただの使い捨てのミサイルコンテナ(武装)だよね。と言うかさ、機体を軽くするためなのか、最後はすべてのパーツを戦闘空間に切り離してそのまま捨てて行ったのだけれど……あれは後から誰かが回収するのかな。実際にこれ、自衛隊の皆さんが現場で同じようにポイポイ捨てていったら、予算的にも環境的にも国会で大問題になるだろうね」マリのあまりにも現実的なツッコミを聞いたゆりは、思わず苦笑しながらコンソールに向き直って答えた。
「演出よ、演出。アニメなんだから、そんなに真面目に難しく考える必要は無いんじゃないの?」
「いや、ゆり。そこは開発者としてよく考えてほしいんだ。戦闘中に全弾撃ち尽くして不要になったから、デッドウエイト(死重)を切り離して機体を軽くする……まぁ、その物理的な理屈自体は分からなくはないよ。たださ、切り離した後の巨大な金属部品の残骸は、現場の街の中にそのままドサドサと放置されるわけだ。作戦後に回収部隊が拾い集めるにしても、放置された部品が一般の住宅や道路を潰したら、自治体から自衛隊に絶対に凄まじい苦情が来ると思うのだよ」クローディア(マリ)の言う事は、実際に製品化して社会のインフラに落とし込む上では、ぐうの音も出ないほど至極真っ当な発言であった。
仮にアノマリーの殲滅作戦に出動した陸上自衛隊の部隊が、「邪魔だから、撃ち終わったから」という理由で、高価な無反動砲や重火器を現場の路上にそのままポイ捨てして帰っていったらどうなるのか。
現実の軍隊ではそんな事は絶対にしないし、使用後は隊員たちが自分たちの手で責任を持って回収するだろう。
もし仮にその場に捨てていったらどうなるのか。
付近の住民や警察は、街中に転がされた破壊兵器の処理の扱いに大いに困り果てるに違いなかった。
これを現実に落とし込むと、アニメのように「切り離して格好よく終わり」ではないのだ。
パージした後の重装甲の残骸は、誰かがその手でわざわざ回収(お片付け)する必要が100%発生するのであった。
その極めて泥臭い、けれど製品の仕様決定においては絶対に避けて通れない「パージ後のゴミ回収問題」を、マリは大真面目な顔でゆりへと指摘しているのである。




