8-17 実在の防護盾(ライオットシールド)とペットボトルで換算する過酷な重量感
8-17 実在の防護盾とペットボトルで換算する過酷な重量感
渡辺譲司とのWEB会議は無事に終了し、二人は画面を切り替えて、早速依頼された「盾」の製作に取り掛かることにした。
「まぁ、新しく設計し直さなくてもさ、すでに世の中に存在する既存の盾の形状をそのままトレースすれば十分事足りるよね」
そう言ってクローディア(マリ)がメインモニターに表示させたのは、警察の機動隊や特殊部隊が暴動鎮圧の際などに実際に使用している、ごく一般的な『ライオットシールド(防護盾)』の三次元モデルであった。
中型盾(標準ハーフサイズ):大きさは約90cm×50cm。
重量は2.1kgから3.4kg。生身の人間が片腕で保持するには、2リットルの巨大なペットボトル丸ごと1本分から、最大で1.5リットルのペットボトル3本分に相当する、ズッシリとした重負荷がかかるサイズ感である。
上半身を的確に防護しつつ、機動性を損なわない戦場のスタンダードだ。
大型盾:大きさは約90cmから120cm×50cmから60cm。重量は4.5kgから6kg。身体のほぼ全てをすっぽりと覆い隠す暴動鎮圧用の盾であり、その重さは2リットルのペットボトルなら2、3本分。
1.5リットルのペットボトルであれば、じつに3、4本分を片腕だけで支え続けるような過酷な重量に達する。アオサギのパワーアシストがなければ、普通の人間なら構えるだけで数分と持たずに腕が死ぬ代物だった。
小型盾:直径約56cmの丸形。重量は1.4kg。
取り回しを最優先したコンパクトな盾であり、重さは1.5リットルのペットボトル約1本分に満たない程度。狭い閉所での白兵戦において、剣と併用して格闘戦を行うのに最適な防具である。
そのクローディア(マリ)のフランクな提案資料と、これまでの「武器開発の惨劇」の歴史を脳内で天秤にかけた瞬間、ゆりは背筋にゾクゾクと不穏で冷たいものが走るのを感じた。ゆりは先回りして、これ以上の試験場破壊を防ぐための強烈な牽制をクローディア(マリ)へと投げつける。
「ちょっと待って、マリ。今度こそ……今度こそ本当に、悪戯を挟まないで『真面目』に守るためだけの盾を作ってよね? 槍でも斧でもハンマーでも、あなたの余計な閃きのせいで毎回毎回、試験場が跡形もなく壊れてるんだから!」
「失敬な。私はいつだって、大真面目に工学の未来を追求しているさ」
クローディア(マリ)は心外だと言わんばかりに不満げに口を尖らせたが、すぐに、悪戯が成功した子供のようにその両目をキラキラと怪しく輝かせ、じっとゆりの顔を見つめ返してきた。
言葉ではどれほど綺麗事を並べていようが、そのクローディア(マリ)の素顔の「目の輝き」が、何よりも雄弁に次のやらかしを物語っていた。
その瞳を見た瞬間、ゆりは首筋に冷や汗を流しながら、魂の底から確信した。
(――これは、駄目だ。この子は今、脳内で絶対にロマン兵器の足し算をしている。今度も間違いなく、私の想像を絶するとんでもない大やらかしを仕でかすに違いないわ……!)
ゆりが科学者としての最悪の予感(確信)を深めた、まさにその瞬間であった。




