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8-13 「はるか彼方」まで掘削した『遥ドリル』と裏ファイルのハイド

8-13 「はるか彼方」まで掘削した『遥ドリル』と裏ファイルのハイド


バトルアックス(片手斧):全長60cm。リーチが決定的に短い分、敵アノマリーとの命がけの超近接戦闘(インファイト)は避けられないハイリスクな兵装である。


しかし、その重さと幅広い刃の形状から、遠心力を利用した力任せの強烈な「叩き切る切断力」を大いに期待できる。


ただし、標準的な片手剣ほど手軽で直感的に扱えるわけではないため、ある程度腕力や適性のある装備者を選ぶ尖った武器である。携行時のマウント位置としては、両腰か両肩のハードポイントを使用するのが妥当とされた。


ポールアックス(長柄斧):全長1.5m。長大に延長された柄のリーチと、先端の重量から生み出される強烈な遠心力により、敵を装甲ごと一刀両断する凄まじき斬撃(切断)を期待できる。


半面、壁の多い限定された狭い空間や、味方が密集する大混戦になった場合、味方を巻き込む「同士打ち」の危険性)も大いに秘めている。


槍と違って先端の頭部にすべての重量が集中しているため、その狂暴な遠心力をいかに精密に制御できるか、非常に装備者を選ぶ上級者向けの武器である。柄が長いため、背部、または両肩のハードポイントに装着するのが妥当である。


なお、刃の後ろから爆発的なプラズマを噴射して遥たちを高速旋回させた『ナノスラスターアックス』のデータは、オーダーメイド品として登録された。


ウォーハンマー(戦闘用金槌):長さは「50cm」と「2m」の二種類。製品として圧倒的に売れ筋になるのは、やはり取り回しの良い短い方(50cm)であろう。これは敵を切断するのではなく、重質量で装甲の上から骨ごと叩き潰すことに特化した、極めて破壊的な武器である。


肉体を持たない、あるいは流動するアノマリーの本体に対してどれだけの決定打を発揮するかは未知数であるが、その打撃衝撃によって敵の「体勢を崩す」ことに特化すれば、複数人の前衛チームによるフォーメーション連携次第では、極めて強力な戦術武器になるであろうと推測された。装備箇所は斧と同等のため、短い方は両腰か両肩。長い方は背部か両肩のハードポイントが妥当。


なお、空中と地上で縦横2種類の「自滅地獄車」を形成したナノスラスターハンマーのログは、オーダーメイド品としてハイドされた。


メイス(戦鎚):長さは「50cm」と「80cm」の2種類。敵の装甲を叩いて潰すという運用構想はハンマーと同じである。刀身の形状や重心のバランスが異なるため、実戦配備された後は、使用する一般兵の純粋な好みや適性によって、ハンマー派とメイス派に二分されるであろう武器である。


なお、柄の底にスラスター、先端に超高速回転ドリルを追加し、壁をぶち抜き地中深くまで突き進んだ狂気の掘削兵器――『遥ドリル』の全データは、完全にオーダーメイド品の最深部へとハイドされた。


「――以上をもちまして、本日までに製作したサギ用オプション兵装カタログの報告を終わります」


メインコンソールの前で、ゆりは画面の向こうにいるナベさんこと渡辺譲司に向け、今日一日中ラボの中で絶叫と大惨事を引き起こし続けた武器製作の成果(仕様書)を、何事もなかったかのように大真面目に報告し終えた。画面の向こうで腕を組んで聞いていた渡辺譲司は、ふむ、と満足そうに頷き、それから仕様書の最後の一行に目を留めて、不思議そうに首をかしげた。


「……素晴らしいラインナップだ、ありがとう。さすがだよ、お二人さん。ところでさ、ゆりちゃん。この仕様書の最後にある『ハルカドリル』って……一体何なんだい?」


その問いを聞いた瞬間、ゆりの背筋にドッと冷たい汗が流れた。


(マリ……! 提出する正式な報告書に変な悪戯書きを残さないでよ……!)ゆりは心の中で暴走する相棒の胸ぐらをつかみながら、引き攣った笑顔を画面に向け、脳細胞をフル回転させて滝のような冷や汗を流しながら答えた。


「あ、あははは! 渡辺さん、それは単なる『誤記(タイポ)』ですね! 試験の最終段階において、実験機が『はるか彼方』の地中深くまで驚異的な速度で掘削出来てしまったものですから……マリがふざけてそのまま仮の名称を打ち込んでしまったようです。すぐに製品版の正式名称である『ナノスラスターメイス』に訂正しておきますので!」


ゆりの必死の、けれど驚くほど論理的な(?)言い訳が研究室に響く。だが、それを聞いた渡辺譲司は、怪訝な顔をするどころか、目を見開いて「ポン!」と手を叩いた。


「いや、すばらしいじゃないか! 近接武器という破壊の性能だけではなく、緊急時にはそのまま障害物の撤去や『地面の掘削(トンネル構築)』まで内包しているとはね! これ、対アノマリーの戦場だけじゃなく、レスキュー部隊や建設業界からも注文が殺到するぞ。思わぬ追加機能(付加価値)だ、さすがだよお二人さん!」


「え、あ……はは、ありがとうございます……」


開発陣が完全に想定していなかった、ただの暴走大惨事の結果が、製造部門のトップから「災害救助や土木工事にも使える画期的なマルチツール」としてまさかの最高級の大絶賛評価を頂いてしまうという、この極上の皮肉。


(……なんでドリルメイスが一番褒められているのよ……)と、ゆりは内心、最高に複雑で乾いた笑いを浮かべるしかないのであった。

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