↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/365

8-9 「てへぺろ」からの仕切り直しと本命『剣』の開発

8-9 「てへぺろ」からの仕切り直しと本命『剣』の開発


「……うん、完全に忘れてた」

 

クローディア(マリ)は、両手を頭の後ろに回して、舌をぺろっと出しながら「てへぺろ」のポーズを決めてみせる。


やはりいつもの通り、開発の熱に浮かされるあまり、目的と手段が完全に逆転して入れ替わっていたのである。


「そう。じゃあ、仕切り直して、今度こそ現場(ナベさん)のための『剣』の製作をしないといけないわね」


ゆりはやれやれと深くため息をつくと、自分のデスクの椅子に腰を戻し、コンソールのキーボードを叩いて本来の仕事を再開し始めた。


一口に「剣」と言っても、戦史における形状や用途は千差万別である。


二人は、前回の不完全な試験(3章以前)でも一部採用されていた標準的な片手剣『ブロードソード』と、圧倒的な破壊力を持つ両手剣『クレイモア』をベースモデルとして採用することにした。


さらに、その2つの間を埋める補助兵装として、狭所での小回りが利く


『短剣(ダガー)』も同時に製作することにした。


短剣(ダガー):全長は短いもので15cm、長大なものでは60cmに達するものも存在する。『ダガー』とは、西洋における両刃の短剣全般を指す総称であり、片刃の刃物は基本的におおむね『ナイフ』に分類される。


中世ヨーロッパの戦場においては、強固な全身鎧を身にまとった重装騎士をいかに無力化するかが課題であったが、彼らを組み伏せて転倒させ、装甲のわずかな隙間にこのダガーを突き刺してとどめを刺す戦法が極めて有効とされた。


のちに時代が下り、銃器の普及によって鎧が軽量化した後も、日常の護身用として広く帯同され、世界中で使い続けられた歴史を持つ。


主に刺突を目的としているが、敵の剣撃を受け流すことに特化した防御専用の『パリーイング・ダガー』なども存在する。


片手剣(ブロードソード):全長は70cm?80cm程。重量は約1.5kg、ちょうど1.5リットルのペットボトル1本分に相当する。


『ブロードソード』は、主に中世以降の騎馬戦において凄まじい威力を発揮した両刃の剣である。


17世紀以降のヨーロッパで爆発的に広く普及した。当時の主流武器であった細身の刺突剣『レイピア』に比べ、刀身の幅が圧倒的に広かったことから、その名(幅広い、広い刃という意味)が付けられた。


刺突のみを目的としたレイピアとは異なり、ブロードソードは馬の上から敵を豪快に「断ち切る」ことに重点が置かれている。


向かってきた敵の騎兵とのすれ違いざまに、馬上の遠心力を利用して横側から叩きつけるようにして刃を繰り出したのだ。


激しい衝撃から乗り手の拳を強固に保護するため、柄の部分には金属製の籠のような「護拳(ごけん)」が備えられたものが多かった。


この実用的な意匠は、各国で様々な形状に発展し、広く生み出されていったのである。


両手剣(クレイモア):全長は1mから2mに達し、重量は2kgから4.5kg。肉厚で幅広い刃を持つ、両手持ち専用の巨剣である。


この重さは、先ほどの1.5リットルのペットボトルで言えばちょうど3本分。


生きている小型犬をそのまま持ち上げるような重量であり、あるいは、完熟した大きなスイカを丸ごと一つ手首だけで振り回すような、尋常ならざる負荷に相当する。


『クレイモア』とは、15世紀から16世紀初めにかけて、スコットランドの屈強なハイランダー(高地民族)の戦士たちが愛用していたことで知られる大剣だ。その意匠は非常に特徴的であり、鍔(つば)のラインが剣先方向に向かって傾斜した十字型に形成されており、その鍔の先端部分には3、4個の美しい輪飾りが付けられている。


戦場で見栄えのする大振りの美しい剣だが、あまりにも巨大すぎるため、一般的な腰の鞘(さや)から抜くことが物理的にできなかった。


そのため、彼らは抜き身のまま背中に吊るしたり、直接手でもって行軍したという。


クレイモアはその強大な質量ゆえに、大上段から思い切り振りかぶることで、敵の盾ごと肉体を叩き割る凄ましきまでの絶対的な破壊力を生み出した。


実際の白兵戦では、頭上に構えて敵を切りつけたり、時にはその長さを活かして槍のように鋭く突いたりした。


また、突進してくる突撃騎兵の馬の脚を根元から切断し、敵を落馬させるための対騎兵兵器としても重宝された。ただし、その過剰な重さゆえに、一度でも大振りに振り下ろしてしまうと、次の構えへと移行するまでに致命的な「隙」ができるという明確な弱点も存在した。


そのため、真の白兵戦における乱戦では、ここぞという一撃必殺の場面以外では、軽々しく使用されることはなかったのである。


クローディア(マリ)は手元の端末のコンソール画面を素早くタップし、これら3種類の剣の基本設計データを一瞬で構築した。


「よし、今回は余計なスラスターもドリルも一切なしさ! これで今度こそ完璧な製品版のデータだよ!」


3Dプリンターが重い音を立てて作動し、鋭利な金属光沢と鈍い鉄の質感を放つアオサギ用の『短剣』『片手剣』『両手剣』が、それぞれ出力される。


クローディア(マリ)はそれらの実機を、試験場に待機している遥たちへさっそく配布するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。