↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/365

8-6 ウォーハンマーの歴史的寸法(50cm・2m)と最凶魔改造

8-6 ウォーハンマーの歴史的寸法(50cm・2m)と最凶魔改造


ウォーハンマー――いわば、戦場における装甲破壊に特化した、凶悪な「戦闘用金槌」である。その形状は、長柄の先端に取り付けられた鉄製の頭部(柄頭)に特徴があり、一方が分厚く平坦な槌頭(ハンマー)、もう一方は硬固な鎧をも穿つ鋭利な鉤爪(ピック)状に形成されている。


歩兵用武器として戦場に投入された当初は、敵のリーチを阻むために2mほどの長大な柄を有していたが、のちに騎兵の副武器としても採用されるようになると、馬上での取り回しを考慮して次第に柄が短くなり、最終的には50cmほどのコンパクトな手持ちサイズへと変遷していった歴史を持つ。


クローディア(マリ)は、端末の画面でハンマーがどういった歴史と構造を持つ武器なのかを大真面目に調べ上げた後、おもむろにコンソールの設計画面を叩き始めた。柄頭に装備されている平たい槌頭と鉤爪状の意匠はそのままに、柄の長さのバリエーションとして、歴史が証明した「50cm」と「2m」の2種類をカタログ用データとして作成したのだ。


―― そして当然のように、その槌頭の背後へ【ナノ・スラスター】の噴射口を埋め込んだ、最凶の魔改造モデルも同時に構築していた。


「よし、完成だ! 遥(達)、今度はこの2つのハンマーを試してみてくれないかな!」マリの声に呼応し、試験場のアオサギ姿の遥たちが新型の鉄塊を手にしていく。


ここからの光景は、先ほどのアックスの実験と同様、客観的な正気を激しく疑いたくなるような「狂気の競演」そのものであった。2から4kgを超える純然たる鉄の塊を、少女の姿をした人造人間たちが、お互いの生体ボディや脳天目掛けて容赦なくフルスイングで打ち込み合っているのだ。常人の感覚からすれば、絵面がすでにおかしいのである。


そして、その凄まじい質量の一撃を、正面から同じハンマーの柄でガキィィィン!と平然と受け止め、力任せに撃ち返しているのもまた、同じ顔をした遥であった。コンクリートの四壁に囲まれた試験場には、これまでの刃物とは一線を画す、鼓膜を震わせるほどの重苦しい重金属の衝撃音がひっきりなしに響き渡っていた。


「うん、基本の重量バランスは完璧だね! じゃあ次、本命のスイッチを入れてみて!」クローディア(マリ)が無線(インカム)で楽しそうに指示を出すと、狂気の武器、ナノスラスターを搭載したハンマー2種類を持った遥たちが同時にトリガーを引いた。


案の定、先ほどの斧の大惨さが、さらに質量を増した形で最悪に再現されることとなった。違うのは、その自滅(激突)モーションのバリエーションである。


まず、短い50cmのハンマーを持った遥は、姿勢を低くして地面を走りながらスラスターを点火。一瞬にして最大出力に達したブースターの横推力に引っ張られるようにして、遥自身がハンマーを中心に超高速で水平回転する「横回転の地獄車」へと変貌。制御不能となった鉄の嵐は、試験場の床を丸く削りながら爆走し、そのまま反対側の壁へと物凄い音を立てて激突した。


一方、長い2mのハンマーを持った遥は、大上段に構えて勢いよく前方に跳躍した瞬間にスラスターを点火。空中で爆発的な推進力を得たナノスラスターハンマーは、強烈な遠心力によって遥の身体ごと縦に激しく回転し、空中を高速で転がる「縦回転の地獄車」を形成。そのまま地面に接触したとたん、弾むような凄まじい勢いで床のコンクリートを縦一文字にボコボコと踏み荒らし、弾丸のごとき速度で正面の壁へと突っ込んで大爆発(激突)するのであった。


右を見れば横回転のクレーター、左を見れば縦回転のキャタピラ跡。2箇所で同時に発生した、あまりにも派手すぎる大惨事の有様を目の当たりにしたゆりは、深く、深いため息をつきながら、通信機のマイクを開いた。


「……はい、そこまで。遥たち、もう慣れっこでしょうけど……今すぐその無惨に抉れた床と壁の後片付け(ナノマシン修復)をはじめなさい」


「分かりました、ゆり」土煙の中から泥だらけで出てきた遥たちは、何事もなかったかのように平然と修復作業に移行する。


当然、この人間が使えば一瞬で粉砕骨折して全滅するであろう2つの狂気の地獄車ハンマーも、クローディア(マリ)の手によって『遥専用・オーダーメイド品(裏データ)』として、ゆりの罠コードの奥深くへ厳重に隠蔽・登録されるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。