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8-4 256人の遙たちによる地獄絵図のような斧実験

8-4 256人の遙たちによる地獄絵図のような斧実験


手渡された無骨な鉄塊を手に、256人の遥たちは一斉に試験場へと散っていった。


繰り広げられる光景の基礎データ(モーションログ)自体は、先ほどの槍の試験と大差はないはずだった。


重量級の斧を両手に一本ずつ構えて猛スピードで疾走するもの。


遠心力を最適化させるために、その場で恐ろしい速度で独楽(コマ)のように回転し始めるもの。


的のダミー人形を狙い、2本の斧を同時に豪快に投擲するもの。


ひたすら刃の風切り音をごうごうと響かせて、ストイックに素振りを繰り返すもの。


1対1で火花を散らして真面目に模擬戦に興じるものや、数人のグループに分かれて高度なチーム戦のシミュレーションを行っているあたりも、先ほどの槍のテストと全く同じ仕様であった。しかし、槍のときとは決定的に違う点があった。


それは、純粋に「見た目がやばすぎる」ということだ。2、3kgもの質量を持つ鋭利な鉄の塊(ポールアックス)を、少女の姿をした人造人間たちが、笑顔でお互いの脳天目掛けて容赦なく振り下ろし合っているのだ。生身の人間であれば、かすっただけでも即死、良くて五体満足ではいられないほどの破壊の嵐。その凄まじい衝撃音と金属の軋み声が、ひっきりなしに試験場へ響き渡っていた。


その地獄絵図のような光景をモニターで見ながら、クローディア(マリ)は何を思ったか、楽しそうにフフッと笑って再び端末を操作し始めた。瞬く間に3Dプリンターの出力シークエンスが走り、ガシャリと重い金属音が鳴る。


――『ナノスラスター搭載型アックス』の完成である。

ご想像の通り、斧の刃の背後(バック部分)に、高効率の空気噴射を行うマイクロ推進器をギチギチに搭載した狂気のロマン兵器。


ちなみに、全長1.5mのポールアックスにいたっては、刃の後ろだけでなく、柄の底(石突側)の合計2箇所にツイン・ブースター仕様としてノズルが仕込まれていた。


クローディア(マリ)は「遥、これを使ってみてほしい」と、近くにいた遥を2人手招きして手渡した。


ヘルメット内のバイザーには、視線・音声入力で推力をコントロールするための怪しい変形・点火マニュアルが表示されている。それを手渡された遥たちはと言うと――。


短いバトルアックスを持った遥は、空中で跳躍した瞬間に刃の裏のスラスターを点火。爆発的なプラズマの推力によって、人間大車輪と化して超高速回転しながら空間をカッ飛んでいった。当然、普通の人間が使えば、遠心力で脳の血管が千切れるか、回転の勢いで自分の脚を叩き切って終わる大事故である。


一方、長いポールアックスを渡された遥は、それを水平に構えて上下のツインスラスターを同時点火。一瞬にして最大出力に達した推進力により、遥自身を軸とした「超高速の人間旋風(ベイブレード)」と化し、プロテクターの脚部ハードポイントを軋ませながら、試験場のコンクリートの床をガガガガガ!と凄まじい音を立てて抉り削り始めた。

当然、普通の人間が使えば、一瞬で自滅して肉塊になる大事故である。


カメラ越しに、試験場が文字通りの「大惨事」に染まっていくのをリアルタイムで目撃したゆりは、両手で盛大に頭を抱えた。

(ああ、やっぱりね……)数分前に覚えたあの不吉な一抹の不安は見事に、そして最悪の形で的中したのであった。

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