7-14 ダークブルーに輝くエントリーモデル『アオサギ』
7-14 ダークブルーに輝くエントリーモデル『アオサギ』
「……なるほど、そう来たのね。アオサギね。ちなみに一つ訂正しておくわよ、マリ。シラサギ(白鷺)っていうのは固有の鳥の名前ではないわ」ゆりは呆れと納得が半々に混ざった溜息をつきながら、端末のコンソールを操作して、先ほどコスト3分の1に最適化した設計モデルのカラーリングを白から青色へと変更していく。
「え、そうなんだ!? 私はてっきり、そういう種類の鳥の名前だと思っていたよ。……あ、ゆり、その青色だけど、もう少し暗めのトーンにしてみようか」マリは「知らなかった」という意外そうな表情を浮かべながら、モニターのカラーパレットを指差してゆりに注文を重ねた。
「ええ、全身が白い鷺たちの単なる『総称』らしいわよ」ゆりはそんな雑学を口にしながら、マリの指示通りに色相のパラメータを落としていく。変更されたその色味は、ただの鮮やかな青ではなく、深海のように黒みがかった深い群青色――いわゆるミリタリー性の高い『ダークブルー』であった。
「いいね! その渋い色味でいこう。青色ベースのエントリーモデルなのだから、名前は『アオサギ』さ!」
「名前はアオサギね。相変わらず安直ね」ゆりは思わず苦笑しながら、機体ファイルのヘッダーネームを書き換えるために端末を操作する。
「以前にも言ったけれど、こういう軍事製品の識別名はね、現場の人間が一発で判別できる分かりやすいものが一番良いんだよ」そう語るクローディア(マリ)も、自分のロマン(鳥類縛り)がまた一つ形になったことが嬉しいのか、楽しそうに笑って答えた。
「じゃあ、これでデータを確定させて3Dプリンター室へ転送するわね。……遥、プリンターの出力が終わったら、完成した装備をこちらへ持ってきてくれないかしら」
「はい、ゆり。分かりました。取ってきますね」ゆりが声をかけると、控えていた遥は静かに一礼し、いつもの滑らかな足取りで隣のプリンター室へと新型装備を回収しに向かった。しばらくすると、遥は刷り上がったばかりの、美しい金属光沢を放つダークブルーの新型装甲一式を大型の搬送カートに乗せて、ガラガラと静かに運んできた。
「よし、出来たてホヤホヤだね! 早速着けてみよう!」マリは目を輝かせ、再び遥の手を借りて、自分の黒いカーボンファイバースーツの上からパーツ化された青い装甲をカチリ、カチリと手際よく装着させていく。
「――言っておくけれど、私はもう、絶対にテストはしないわよ」その二人が装着している姿をデスクの椅子から冷ややかなジト目で睨みつけながら、ゆりは今度こそ本当に、絶対に、死んでも二度と服を剥ぎ取られて強制的に着せられる事は御免だと言わんばかりに、ふたりに向けて強く、強く念を押すのであった。




