世界の半分
「私は待っていた……貴方が現れるのを。勇者さん……世界の半分を貴方にあげる」
「え?くれるの?ありがとう」
俺は、思わず応えてしまった。
「ヲイッ勇者、あっさり、もらうんかぃッ」
セィソのツッコミが激しい。
「……据え膳食わぬは男の恥って言うしな」
「せやな、アンタはせやな。猫耳娘らも女性騎士団も、食っちまったさかいな。って世界の半分は、なんか違うやろ」
そして、聖女がくいついた。
「ちょっと、セィソさん?私がいない間に、勇者さん何してたんですか?猫耳娘?女性騎士団?また、別の女性に?」
「そらアンタ、ウチ知ってるだけで、手を出した?中で出した?女50人超えてるで」
ふぅ~んす……と、ため息を鼻から出すセィソ。
そして、にこりと怖い笑顔で、元聖女・新魔王は、俺に竹槍を向けた。
「アンタって人はァ―――!!さては私がいない間、他の女どもと、やりまくってたなっ! 」
シードでも割れたのか?ヘシアの青い瞳が赤く燃え上がる。まじヤヴァイ、プっ殺される。
「せやで、ウチっていう側室も一人ふえたしなぁ」
ちょ……っ、ソコ、面白がってないでフォローしなさいよ。怒りの放屁で窒息死するのはお前かもしれないんだぞ。とか考えていたら。
ブオォオオオオオンっ!
物凄い音がして、竹槍を突き出した新魔王が突撃してくる。ケツからのガス噴射で速度三倍増しなんだよコレ。
「『頭皮最大発光消臭ッ』」
頭皮で消臭しながら、ショベルで竹槍をいな……す?
グワッキンっ!
ぐぉおおおおお、なんちゅう威力。
両手が痺れて俺はショベルを落した。
このままだと、トドメの一撃が来る。
竹槍に串刺しにされて、回復ガスで治されるのはもうゴメンだ。
などと、考えていると……。
「げほ、げほ、げほ……くっさいわ、もうアカン」
セィソが悪臭の余波でバタリと倒れた。消臭が間に合わなかったようだ。
「やらかしたわ。最近はスケルトン達と一緒にいてばかりだったから。臭いの加減が」
「ったく『頭皮発光消臭ッ』。俺の消臭が間に合う程度にしておけよ」
「だって、久しぶりだったんだもん」
「わかった。わかった」
だいたい、窒息死を だもん で済ますな。俺は、セィソの口に空気を吹き込み鼻から出す。肺や鼻腔に溜まった悪臭を押し出すのだ。
「わ……私の前で、他の女とキスするなんて」
「人工呼吸だろうが」
「げほっ、ごほっ、ああ空気や。臭くない空気や……」
セィソが文字通り、息を吹き返した。
「話しを戻そう……世界の半分ってなんだ?」
「私は新魔王になって魔族領の主になった。人類領の拠点ダーブック城も陥落させた。世界征服は完了したから、半分アゲルって話よ」
さらっと世界征服してるのな、この聖女。
「別に俺にくれなくてもいいんじゃないか?」
「勇者さん。アナタを私のモノにする。その対価よ」
「……世界の半分がか?」
なんだろう、昔『金持ちマダムに50億円で落札されました』って詐欺メールもらったな。
「石女の私に貴方を繋ぎとめる方法は、これくらいしかないの」
「いや、そこまでしなくても」
「それとも何?人類も魔族もプっ殺して、私達とスケルトンしかいない楽園にしたらいいのかしら」
「やめなさい、落ち着きなさい。聖女が世界を滅ぼして、どうする」
「今は、聖女じゃなくて新魔王だから、いいもん♪いいもん♪」
「いいもん♪」
おっと、のせられてしまった。
「チョイ待ちぃいいいいい、ウチら側室も消し去るんかいな」
「ん~?まぁ何人か残してもいいかな」
「全人口の9割以上残しなさい」
「それは無理。もうダーブック地域、皆殺しにしちゃった、てへ♪」
全人類の1割以上削減済みかよ。日本で換算すると、人口の1割+αが東京にいるらしいから、東京の人ミナゴロシみたいな?こわっ核弾頭かよ。異世界だから仕方ないのか。
「ところで、聖女はん?新魔王はん?正室はん?」
「正室はん、って呼ばれたいナ」
「正室はん……その動機はなんやねん。子供生まれへん悩みが原因なんか?」
「そうよ、もうすぐ15歳なのに、ハジメテの月のモノも来ないし。私は女として欠陥品なの。アナタと違ってね」
八つ当たりで世界を滅ぼさないで欲しいなぁ。
「……ひょっとして、ウチのスキルで、アンタのソレ何とかなるかもしれへんで」
「え!?」
「人の生き様が地獄を生み出すのです」
誰のセリフだっけ、思い出せない。
まぁいいや、ブラック企業の社風が地獄なのは、
社長が苦労人だったりするんだけど。
それを押し付けないで欲しいなぁ。
そして、病んでる中学生女子が強大な力をもつと、こうなるんでしょうかね?
屁だけどね。




