新魔王の統治
ベルウッド城内に入ると、骨、ホネ、ほね。スケルトンだらけだ。
そして、臭いがする……懐かしい放屁聖女の臭いだ。
「『頭皮発光消臭ッ』」
俺は頭皮を発光させて空気の消臭を行った。
「あ~助かるわ。かなり臭かってん」
「聖女の残臭だな」
「……乙女の残り香とかならエエねんけど、残臭ってヒドイわなぁ」
「……その光は、我々に害はないのか」
めっちゃ怯えたスケルトン騎兵がとっさに隠れた物陰から出てきた。
「ないですよ。ただの消臭発光ですから」
「そうか……苦しんでいた同胞を楽にしてくれた例の光ではないのだな」
「あの5千体は、そういうことですか」
「我々スケルトンは、死にたくても死ねぬ。心を病んだ上こき使われでは地獄も同然。新魔王様の提案とはいえ、おぬしを利用したことを許せ」
「いや、大したことなかったので。大丈夫です」
「討伐費用で大儲けしたんやもんなぁ」
セィソがいらんことを言う。
「我々からも、謝礼をしたいところだが、生憎スケルトンの労働による利益は、全て所有者に持っていかれて、金はないのだ」
「ひどい話だな」
「スケルトン達の扱いは、それが普通やったもんな。基本的に使い捨て感覚やろし」
どうやらセィソはスケルトンの扱われ方も知っているようだ。
「そんな我々を労働から解放し、ボロボロになった骨を回復して下さったのが新魔王様なのだ」
「なんだろう、新魔王になった途端、聖女っぽいことしてるぞアイツ」
「さらに我々には鼻がなく、臭いは分からぬ。それがよかったのだ。そして虐げられてきた者達に寄り添い、皆が平等に暮らせる世界を創ろうと戦っておられる」
社会主義ですか?共産主義ですか?そーですか?
つまり、ソレって放屁聖女の独裁国家ですよね?
なんでかなぁ、平等とか共和とか言ってる国ほど、独裁者がいるんですよね。
ナニガシ民主主義人民共和国とか、民主主義でも人民共和でもないし。
そんなことを考えていると……
「新魔王様、御帰還っ」
スケルトン達の喝采が始まった。
「おぉ、スケルトン兵2千でダーブック城を、もう攻略されたか。さすが、新魔王さま。」
「はぁ!?ダーブック城?王城か?」
「さよう」
魔王軍と人類軍において人類の総本山。王族が住まうタプンツェルの実家……追放されたけど。俺が召喚された時の城だ、『ハゲは嫌っ』て放り出されたけど。
臭いから追い出された聖女と組んで、つまらない仕事をこなして這いあがっていった、始まりの街。つらい記憶の方が多いけど、新魔王になった途端、攻略しちゃっていいの?
「新魔王様は、おそらく城内に悪臭ガスをまき散らして、人間の兵を弱らせ、スケルトン兵で蹂躙されたのであろう」
……うん、知ってる。そのやり方を考えたの俺だし。魔王軍相手の時も呼吸困難になった連中を筋肉令嬢と贅肉王女が蹂躙したんだっけ。俺という消臭役がいないとすると、城下町でも窒息者多数なんだろうなぁ。
「それでは、私も整列に加わらねば」
そうして、スケルトン騎兵は、俺達の前から移動していった。
左右2列に並ぶスケルトンの間を、足音とガス漏の音をたてて小柄でスレンダーな少女が歩いてきた。
「『継続的頭皮発光消臭(ハゲフラッシュ・デオドラント・コンテニュアス)ッ』」
俺は頭皮を光らせ続けて、継続消臭を行う。このままではセィソや女騎士達が窒息死する。
そうして、俺が聖女と対面すると、彼女は言った。
「私は待っていた……貴方が現れるのを。勇者さん……世界の半分を貴方にあげる」
聖女さんっ、ソレ魔王のセリフ。いや、新魔王だからいいのか?
第三章「放屁聖女さん降臨です」終了です。
そして、最終章「最後の戦争ハゲマルドン?の始まりです」も
よろしくお願いします。




