ゴブリン♀・スタンピード
俺達は装備を整えて、ゴブリンの迎撃に出る。
先日作った、馬無しのタマタマ駆動車の後ろに乗せてもらって、移動している真っ最中だ。
ベアトリスとタプンツェルも別々の馬車で先行している。
「なぁなぁ、ウチが戦った時、メスのスタンピードやったらヤバかったなぁ」
「それはないな。最初に攻めてくるのはオスだからな。オス共が全然帰ってこないから、メスが立ち上がったんだろ」
「一匹残らず、始末したんやもんなぁ」
「いくら繁殖力の強いゴブリンでも、オス全滅は大変なんだろ。多分」
「メスだけじゃ子作りできへんしなぁ」
「そういうこと。ん?もうすぐ到着か」
「せやでぇ」
俺は、愛用のショベルを背中に担ぎ、スリングショットとゴブリン♂のタマを確認する。
「ウチが車の操縦とタマ爆破。アンタがスリングショット狙撃と移動指示。ええ感じの役割分担や」
「ゴブリンに囲まれたら、『頭皮閃光』で目つぶしをするから、合図したら、目を閉じろよ」
「オッケーや」
そうして、くしくもゴブリン♂・スタンピードを全滅させた平原に到着した。
「御武運を」
「あとは頼みますぞ」
ベアトリスの馬車とタプンツェルの馬車が帰っていく。
「「「「まかせろ」」」」
俺達四人は、突進してくるゴブリンの土煙を見た。
「ゴブリンが、うじゃうじゃ、いますわぁ。お姉様」
釘バットに見えるスパイク魔法杖を地面に突き刺すベアトリス。
「うむ、拙者と討伐数を競うのはどうでござるか?」
ブンブンと鎖鎌の鎌と分銅を振り回すタプンツェル。
「それは、楽しそうですわぁ。それじゃ勇者様達は、わたくし達の討ちもらしを片付けてくださる?」
「わかった。俺達は高機動射撃戦をするとしよう」
「せやな。令嬢と王女の戦いぶりも見たいしなぁ」
そして、土埃からゴブリンの姿が見え始めると、ベアトリスが動いた。
「ご挨拶の、一発目。いきますわぁあああああ」
こんな時になんで着てるのかわかんないドレスから、垂直に足をカチ上げてベアトリスは投球フォームをする。パンチラよりも視線が吸い込まれる筋肉ムッキムキの太腿。
「どぅるぁあああああ、ファイヤーボールですわぁあああああ」
投げ放たれた火の玉は、ゴブリンが燃える前に身体を貫いていく。しかも複数。
「なんやアレ。火魔法ちごぅて、物理で破壊やん」
「ああ……筋肉令嬢だからな。筋肉のレベルを上げて物理で殴る魔法職さ」
俺も初めて見た時は、びっくりしたなぁ(遠い目)。でも、こんなモンじゃないんだよな。
「ファイヤーボール、どんどん投げますわぁああああ。オラオラオラオラァ」
[ベアトリスの剛速球+ファイヤボールの初速]だからクッソ速いんだよなアレ。
ファイヤーボールの物理攻撃で、ゴブリン♀達は面食らっている。
「我こそはタプンツェル。推して参る」
そして、贅肉王女がゴブリンに囲まれる位置にまで前進していた。
そして、力任せに振り回す鎖鎌でゴブリン達は駆除されていく。
「王女あかんやん。鎖止まったら囲まれてやられるで」
「いいや、大丈夫だよ。タプンツェルだし」
「え?」
セィソの予想どうり、ゴブリン5体を駆除した鎖鎌は失速した。そして、詰め寄って攻撃を仕掛けるゴブリン達。
「アカンっ!」
セィソが叫んだ……が。
ぽよよん♪
ゴブリンの攻撃は、はね返された。
集団で囲んでタプンツェルに攻撃を加えるゴブリン達。
ぽよよん♪ ぽよよん♪ ぽよよん♪
まったく効いていない。
「無駄、無駄、無駄、無駄ァアアアアア」
タプンツエルは、再び鎖鎌を振り回して、ゴブリンを駆除する。
「タプンツェルの贅肉はな……物理攻撃も魔法攻撃も反射か無効にするんだ」
「な、なんやソレ。凄すぎるやん」
「お姉様♪いきますわよぉおおおお」
「いつでも来いでござるぅうううう」
ベアトリスが再び足を垂直にカチ上げる。
「どぅるるるぁあああああ。ファイヤーボール・マキシマム!ですわぁあああ」
タプンツェルに向けて、とんでもない速度と威力の火の玉が投げられた。
「カモォオオオオンで、ござる」
ドォオオオオオン
タプンツェルに着弾した火の玉は大爆発。
周辺のゴブリン百体近くが吹き飛んで死んだ。
「なっ、魔法攻撃を反射しただろ」
「なんちゅう人達や……」
鎖鎌を振り回し、ゴブリンを蹴散らしながら、さらに前進するタプンツェル。そして、途中で鎖鎌を止めて、鎌の部分をマイクのように持ちなおした。もちろん小指は立てている。
「セィソ、急いで耳をふさげ。アレは、ここでもヤヴァイ」
「え?うん?わかったわ」
前方で遠距離攻撃をしていたベアトリスも耳をふさいでいた。
「#$%&~♪ #$%&~♪ #$%&~♪」
耳を塞いでも、まだ聞こえる、強烈な歌声。バタバタと倒れるゴブリン達。
そうして、歌声は終わり、タプンツェルの小指は鎌の柄を握った。
「もう大丈夫。って、聞こえないか」
俺はセィソの両手を耳から外してやる。
「タプンツェルの必殺技、地獄の歌声だ」
「なんちゅうエグイ技や。ゴブリン倒れて泡吹いてるやん」
「そうだな。金玉攻撃よりマシだと思うがな」
倒れたゴブリン達を容赦なく仕留めるタプンツェル。
歌声に恐れをなしたゴブリン達は、タプンツェルを避けて、ベアトリスとの距離を詰めてきた。
ゴブリンとて魔法職には接近戦という知恵があるのだろう。が、しかし、それは、普通の魔法職相手の話だ。
ベアトリスは、釘バットに見えるスパイク魔法杖でゴブリン達を撲殺していく。必死でスパイク魔法杖から逃げて、ベアトリスに掴みかかる勇気あるゴブリン。
「顔面つかみましたわぁあああああ。グラップリング・ファイヤーボールですわぁあああ」
ゴブリンは、アイアンクローで顔面をつかみ返され、その掴んだ手からファイヤーボールを放たれ、脳が炎で沸騰して即死した。
「なんなんや、アレ?」
「グラップラー魔法だよ。掴んだ手から魔法を出して、大ダメージを与えるんだ。ベアトリスの本気モードかな。接近戦のほうが強いし」
「なんちゅう魔法職や」
「ちなみに、タプンツェルは忍者職なんだけどねぇ」
「忍んで暗殺するどころか、敵陣中央で派手にぶっ殺し無双してるやん」
さすがに、ツッコミが追いつかないらしい。
気が付けば、半数以上のゴブリン♀が倒されており、ベアトリスとタプンツェルは背中合わせフォーメーションをとりつつ、ばったばったと引き続きゴブリン達を倒している。
「ええぃ、しゃらくさい。お姉様、アレをやりますわぁああああ」
「アレでござるかぁああ。やるでござるぅううう」
タプンツェルがベアトリスにドロップキックをかますと、ベアトリスはキックの両足をガシリとつかんだ。
「いきますわぁあああ。どぅるぁあああああああ」
ベアトリス全身の筋肉が隆起し、ブンブンとジャイアントスウィングでタプンツェルを振り回す。
物理無効or反射で大質量のタプンツェルを喰らったゴブリンは粉々に砕け散る。
そこにあるのは、近づくと瞬殺される死の旋風。ミキサーにかけられた果物のように、次々とゴブリン達は挽き肉にされた。
「仕上げですわぁああああ」
逃げ出そうとする、ゴブリンの集まり位置に、タプンツェルの足を放して、ぶん投げるベアトリス。
百体以上のゴブリンが、飛んできたタプンツェルに圧殺された。
「うーん、拙者、少し目が回ったでござる」
どすんっと起き上がるタプンツェル
「お姉様は少し運動不足ですわぁああああ」
「うむ、産後の丁度良い運動でござった」
そんな話をしながらも、散り散りになったゴブリンを殺しまくる二人。
「アレが、準災厄級なんや」
「オマエモナ」
「え?ウチも……そうやったな」
「あちらの二人が片付けたゴブリンとほぼ同じ数の♂を、お一人で虐殺なさいましたね」
「まぁ、そうなんやけど……」
そうして、一匹のゴブリンが、震えて泣きながらこちらに歩いてくる。
「コワイ目にあったね。家族と仲間のところへ送ってあげるよ」
俺はショベルで静かにゴブリンの首を刎ねた。
俺達は、ゴブリン♀・スタンピードは全滅させた。
「聖棍棒」(←知らない人は検索)ってありましたね。
聖女棍棒の略ですけどね。タプンツェル王女棍棒は、強かった。
ハゲ勇者、相変わらず仕事してねぇええええ。
最初の役割分担、必要ないしwww。
いや……でも、もし戦ったらキンタマ・パンツァー高機動射撃戦になったんでしょうね。




