リヴァケープの街
リヴァケープの街は騒然としていた。
街の門兵達は叫ぶ。
「ゴブリン・スタンピートが来るぞ、閉門して我々が迎え撃つ。死にたくない者は早く入れ」
人々が門の中に吸い込まれていく。
「ちょうどええわ。ウチらも入ろか~」
「そうだなぁ、ゴブリンはもういないけど」
満員電車に乗り込むように、ヒトひと人の中、チェックもされることなく俺達は門を通ることができた。被災時のセキュリティってザルなんだよなぁ、仕方ないけど。
「領主様が平民にまで城を解放してくれてるぞ」
「お城に逃げ込めば大丈夫なのね」
「ありがたや、ありがたや」
そんなこんなで人の流れは城に向かっていた。
「……どなえしょ。もうゴブリン全滅させたやけど」
「とりあえず、冒険者ギルドに報告するか」
「せやな」
まだパニックにはなってないし、今、大声で叫んでも仕方がない。
俺達は人の流れを抜けて、街の案内図を確認しギルドに向かう。
カラン♪カラ~ン♪
さて?どこのギルドの扉でもこんなベルが鳴るんだろうか。
のんびりと、そんなことを考えていると。
「そ、そのツルピカ頭は?ひょっとしてハゲ勇者!?」
「ほんとだ、ツルピカハゲだ」
「みんなっ、エロ勇者が応援にきてくれたぞぉおおおお」
ギルドの建物内に、冒険者達の喝采が響いた。
なんかボロクソに言われてる気もするが。
「アンタ……一応人望あるねんな。全然尊敬されてなさそうやけど」
ちょっと泣いていいかな。
「勇者を先頭にゴブリンどもを皆殺しだぁああああ」
「「「「「おぉおおおおおおおお」」」」」
どうしよう、盛り上がってるなぁ。言っていいのかなぁ
「あの……もしもし?」
「禿頭勇者様から一言だぁああああ、聞けい」
どうしよ…どうしよ…めっちゃ注目されてるし。
「あんなぁ、盛り上がってるトコ悪いけど、ココへ来る最中になぁ。ゴブリンなら全滅させたで」
あ、セィソが言っちゃった。
「「「「「はぁ?」」」」」
ですよねぇ、その反応。
「二千チョイくらいの数やったけどな」
しぃ~ん としている。
「おいっ、誰か確認してこい」
「で、でも嘘だったら、ゴブリンに囲まれて確実に死ぬぞ」
誰が行くかでガヤガヤしてる。
「明日くらいに、コブリンの死体の山を片付けてくれたらいいと思う。今は大量の平民が街の中を移動しているし」
俺が提案した。
「そ、そうさせてもらいます」
盛り上がってたのに、なんかスイマセン。心の中でそう思った。
「あ~あ、こんなことなら、領主移動の護衛任務について行きゃよかったよ。儲からないね」
「コラッ。それ、ナイショだからね」
なんだなんだ?
「おい、どういうことだ?言わないから、俺にも少し教えてくれよ」
「あ~勇者ならいっか?ゴブリン討伐の例代わりに教えてやんよ、いいよな?」
「いいですよ~♪」
この街を治める領主一族フレイムシュート家は、冒険者に護衛依頼をして逃亡したらしい。
街と城と兵士と平民は、ゴブリン襲来の時間稼ぎに使う方針で。
「城まで解放して、平民まで助ける、ええ領主やと思うたけど、全然アカンやん」
「昔は強かったんだけどなぁ。最大戦力が臨月だし」
悪役令嬢がいれば、ゴブリンの1万や2万……
「ベアトリス様は、先週出産されたばかりだそうですよ。ずっと城には帰ってないと聞いておりますが」
……俺、既にパパになってたyo。
「筋肉令嬢は、出産でも実家に帰ってなかったのか。子供は無事か」
「ええ……とっても元気な筋肉質の女の子だそうですよ。それと、魔法学園を退学になってから実家との折り合いが悪く、南の別荘で過ごされているとか何とか」
そっか~母子両方無事か。よかったよかった。
それにしても、領主の娘となると、別荘ですか。そうですか。全然思い浮かばなかったよ。
「色々教えてくれてありがとう、お二人さん」
「いえいえ、この度もハゲ勇者様に街を救ってもらいましたし。この程度の情報提供……それで?聖女様は見つかりました?」
「いや、まだだ。傷心旅行で南に向かっていないかと探しに来たら、このゴブリン騒動だったワケだ」
「それにしても、さすがハゲ勇者様です。ゴブリン全滅とは」
「いや、全滅させたのは俺じゃない、コッチ」
「ウチやで。ゴブリンを金玉爆発させて皆殺しや」
「ひょ……ひょっとして、玉潰しのセィソ!?」
話をしていた冒険者♂の顔色が変わる。ガタガタ震え出した。
「ひぃいいい。俺のタマタマ潰さないで。みんな逃げろ」
そして冒険者♂は逃亡した。
続いて、他の冒険者♂達も逃亡した。
「ウチの悪名、ここまで拡散してたんか」
セィソがこめかみを押さえて頭をかかえた。
「まぁ、気にするな。ゴブリンを全滅させた英雄だろ!」
SNSもないのに情報が拡散してるねぇ。
さっきまで、熱気でムンムンしていたギルド内は、男達が逃亡してガラガラになっていた。もはや祭りの後といった感じだ。
「じゃぁ、ワイバーンの素材でも換金するか」
「せやな。ほんで、今夜の宿も確保せんなんな」
そうして、俺達は受付嬢のところへ行き換金を済ませ、宿へ向かった。
次回、ようやくムキムキマッチョの悪役令嬢、ベアトリス・フレイムシュートが出てきます。
あー、ここまで長かった。
前にも書きましたけど、この小説いう悪役令嬢の「悪役」とは、女子プロレスの「悪役」のニュアンスで使っています。え?悪役詐欺?そんなこと言わないで、石投げないで、きゃ~。




