ゴブリン♂・スタンピード
「おはよーさん」
朝、俺はセィソにゆすって起こされた。
「こ、腰が……」
悲しいかな、もう中年なんですよ俺。
「昨日もハッスルしたもんなぁ。ベッド壊れたし。ドラゴン肉ってスンごいわ」
「ああ、そうだな」
一人用の簡易ベッドのフレームでは、大人の男女二人の夜の営みの揺れに耐えられなかったらしい。『〇頭放出樹脂』で修復したからいいんだけど。
「衣食住と性欲が満たされて、清々しい朝やぁああああ」
「そうだね。ィテっ腰が」
飛竜戦よりも消耗したかもしれません。もう歳ですハイ。
「ん~、しゃあないなぁ。今夜は、ウチがいっぱい動くわな」
「……よろしく」
俺達は朝食を終え、野営の片付けをして、歩きはじめる。
「せやせや、リヴァケープまで、あとどれくらいなん?」
「ああ、遅くても今日の夕方には着く予定だ。今夜は宿に泊まるぞ」
「そうなんや。まぁ野営も楽しいけどなぁ快適やし」
「とりあえず、飛竜素材の換金とかもしたいしな」
「せやな」
セィソは盗賊職だけあって、よく歩いてくれる。
放屁聖女や追放王女と歩くのは時間がかかった。悪役令嬢は、ムッキムキの筋肉で健脚だったが……
そんなことを思い出しながら、良いペースで歩き進めていると。
「なんやアレ?ゴブリンちゃうか?ちょ……えらい数やで」
「なんだと?大量のゴブリン?俺に乗って確認してくれ」
セィソは飛び上がって、俺の両肩に足を乗せ立ち上がる。高さを稼ぐためだ。
「コレ、あかんヤツや。地面が見えへんぐらい大量におるで」
「大量発生か。やばいな」
そして、ヒョイっと、セィソは俺の前に着地した。
「しかもなぁ、進んでる方向が、コッチやねんけど……」
彼女が指さした方向は、リヴァケープの街だった。
「マズイな……放置するとリヴァケープが滅ぶぞ。ゴブリン・スタンピードが発生し、街が襲撃されると、男は殺され女は犯される。兵士や冒険者が応戦したとしても、数にモノをいわせて、ゴブリンに押し切られるのがほとんどと聞いている」
すると、セィソが俺の発言に反応した。
「ん?なんやて?女は犯される?ほんなら大量発生のゴブリンって♂(オス)なんか?タマタマついてるんか?」
「……そうだな、攻めて来るのはタマのついた雄だろうな」
ニヤソ……
ちょっと?すんごい悪い笑顔してますよ。セィソさん?
「よっしゃ、いっちょ皆殺しにしたろか」
「そ、そうか。できなくないか」
「タマタマのついてるゴブリンが、ナンボおっても数に入らへんわ。どうせやから、千個以上タマ補給したる」
「……あの?MP限界みたいなのは?」
「ないで。アンタのハゲスキル?カメスキル?と一緒や」
そうして、俺達は走る。ゴブリンの集団移動よりも先回りをして迎え撃つために。
「よっしぁ、ええ位置取りやでぇ」
平原の小高い丘に俺達は陣取った。
「遅いのに土煙を上げて走ってくるなぁ、ゴブリン」
「ほな……いくでぇ~」
セィソは、スキルを使いまくる。
『金玉瞬間移動』
『金玉大爆発』
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『金玉瞬間移動』
『金玉大爆発』
気づくことなく片タマを抜かれ、もう片方は大爆発。しかも複数体同時。
激痛でショック死するゴブリン、意識が残ってても股間からの流血で失血死するゴブリン。
その戦場に、男の尊厳はなく、ひたすらゴブリン♂の死体が積みあがっていく。
『金玉瞬間移動』
『金玉大爆発』
・
・
・
『金玉瞬間移動』
『金玉大爆発』
まるで、緩衝材のプチプチを潰すように、セィソはゴブリンの片タマを抜き、片タマを大爆発させていた。
そうして俺はというと、
「八百二十五、八百二十六……」
テレポートしてきた、ゴブリンの片玉を、自分の玉袋に収納していく。大きさは問題ないんだけど、ゴブリンのタマを自分のタマ袋に入れるって、微妙な気分になりながら、せっせと回収するのだった。
そして、半時間くらい経過しただろうか?
「二千百八十一、二千百八十二……」
「これで、ラストやぁあああああ」
『金玉瞬間移動』
『金玉大爆発』
ゴブリン最後の一体の片タマが抜かれ、もう片方が大爆発した。
「二千百八十三。お、終わった」
見回すと、苦悶の表情をしたゴブリンの死体の山があった。なんという大量虐殺。
「二千百八十三 倒したのか……すごいな」
「ちゃうで、片タマのんもおったさかいに、もうちょい殺ってるで。タマ抜いたら爆発せぇへんから、二個あるヤツから、一個移してなぁ」
ああなるほど、股間から血を流して動き回ってた少数はソレか。のたうち回って失血死してたけど。
「爆発で竿も吹き飛ぶさかいな・・・」
「それはオスとして悲惨だ」
俺は、縮みあがった自分の股間を揉みほぐした。
「よっしゃあ~、タマタマも十分すぎるくらい補給できたし。リヴァケープへGOGOや」
「そうするか」
そうして、ゴブリン退治で時間を浪費したため、予定より少し遅い日没後に俺達はリヴァケープの街に到着した。
ゴブリン・スレイヤー、新たなる伝説。ですね。
なんか、書いてて、気の毒になる殺され方のゴブリン達。
二人が歩いた距離は、山越えなしで直線的に四国の北側(瀬戸内海側)から南側(太平洋側)くらいの距離です。
ちょい速歩き(約時速6キロ)で、一日(約8時間)かけてフルマラソン+αの距離を2日間。100㎞弱……結構な距離ですねぇ。頑張れ中年ハゲ勇者、足腰は強いぞ。




