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双神の輪~紡がれる絆の物語~  作者: Guidepost
4章 帰還編 双神の輪
116/120

115話

 琉生はそっと流輝を離すと立ち上がり、目の前のアリータ神を見つめた。

 自分が、最後の「光の救世主」六回目の人生を共に過ごすためアスルガルタにまた懇願し、アリータ神の魂の欠片となり人間に生まれたということも今ではもう知っていた。そして流輝が召喚される時、要は一緒にここへ来る時に本当ならばアリータ神と一つになり、同化していたはずだった。

 だが刺された琉生の傷を癒してくれたアリータ神は力を相当使ってしまったため一旦眠りについていた。

 それらを全て思い出しても琉生は妙に落ち着いていた。

 目の前のアリータ神は琉生を見、そして流輝を見る。流輝の髪をそして慈しむように触れた。泣き濡れた流輝は顔を上げてアリータ神を見ていたが、そっと手を差し出した。アリータ神はその手を取る。

 琉生が見ていると流輝はどうしていいのかわからないような表情をし、そしてその顔を歪ませた。


「一人にして……ごめん」


 流輝は絞り出すように囁く。アリータ神はそっと首を振った。


「大切な片割れなのに……俺の勝手な願いで一人にしてごめん。あと……人間になってからも俺の様子を見ては傷つきながらも見守ってくれていて……ありがとう……。でも俺が暴走した姿を見て、どんだけ苦しかっただろ……かと……ごめん……本当に……ごめん」


 ぎゅっと目を瞑った後、何度も謝る流輝にアリータ神はそっと微笑んだ。そして琉生に向き直ってくる。


「待っ」


 流輝が待ってと言い終わる前にアリータ神の姿は消えた。というか琉生の中で同化した。

 琉生は自分の体の中から光が溢れるような感覚がした。今、ようやく元に戻ったのだとわかった。あれほど少なかった魔力量もそれこそ溢れるほどあることがわかる。琉生は手のひらを見つめた。そして力を込めると手のひらが淡く光る。

 自分を見ている流輝に振り返り、琉生は流輝の頬に触れた。頬は今も涙で濡れている。


「ルイ……ごめん、ごめんな。ごめん……ごめん」


 何度も呟くように謝った後、流輝は琉生を抱きしめてきた。


「そして、ありがとう」


 ようやく落ち着いた流輝と共に、琉生は光の魔力に満ちた部屋を見渡した。何度も転生しては注いできた。そうしなければこれほど満ちることはないほど、膨大な量の魔力だ。そしてその光の魔力はアリータ神がそのたびに授けてきた。

 琉生は流輝から離れ、聖杯のある五芒星の中心に立つ。「光の救世主」として最後の役目だ。本当に、これが最後の仕上げとなる。モリーナ神の魂が六回の転生により溜めてきた光の魔力をすべて開放し、一時魔獣を減らすとかではなく世界そのものを浄化させる役目は元々光の魔力を持つアリータ神である琉生にしかできない。

 琉生は祈り出した。そして両手を掲げる。すると光に満たされた五芒星が普通ならば目を開けていられないほど光を増した。その光は琉生を中心に光の柱となり、神殿を飛び出て世界へと広がった。




 神殿近くで待機していた王や騎士たち、モリスとカルナ、そしてローザリアは突如現れた光の柱を唖然とした様子で見つめていた。そしてハッとなり、中にいて様子を窺えない流輝と琉生を心配する。

 むしろこの世の終わりかというくらい辺りが白く輝いていた。世界中へ広がった光を、各国の人たちも今頃唖然として見上げているだろう。

 その光はしばらくずっと変わらず全てを包み込んでいたが、少しずつ薄れ時間をかけて消えていった。


「把握できる限りの、禍々しい闇の魔力の気配が消えました」


 ソリアがノア王に告げる。

 禍々しい闇の魔力の気配が消えたということは、魔獣が消えたということだ。また、闇魔法を使う悪意ある魔族も浄化されたということだ。

 文献によればいつもこの儀式を行った後、光の魔力が強化されて闇の魔力が弱まったとあった。気配すら消えるのはおそらく初めてのことだ。


「おお……」

「とうとう……」


 神殿を見守っていた周りから一斉に歓声が聞こえてきた。

 ローザリアやモリス、カルナも喜んだ。だがまだ心から喜べなかった。


「リキ……ルイ……」

 三人で身を寄せ合い、二人の無事を祈るしかできなかった。




 中では琉生がその場に座り込んだところだった。

 ずっと祈り、力を放出していたが、ようやく長かった浄化が本当に完了し、今とてつもなく力が抜けていた。


「ルイ!」


 流輝が座り込んでいる琉生の元へ駆けつけた。


「おわ、った……終わった、の、か」


 流輝も力が抜けたようにその場に座り込んだ。今まで経験してきた「光の救世主」としての記憶がひたすらよみがえっているのかもしれない。何度も人間として生まれては召喚され、戦い、そして儀式を行い記憶を取り戻すということを繰り返している。それはおそらく尋常ではない感覚だろう。罰とはいえ、自分の死すら記憶によみがえる訳で、決して笑って話せることではないだろう。今まで経験してきたつらいことや苦労、別れの悲しみを噛みしめているのかもしれない。

 お互い、力が抜けたまま、座ったまま、そっと抱き合った。

 その時、神殿内に声が聞こえてきた。普通の声ではない。流輝と琉生は本能的にそれがアスルガルタの声だとわかった。


『罪はあがなえました。モリーナは許されます。あなた方はこれからどうしますか』

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