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異世界を俺なりに楽しむ  作者: パーティーチキンカレー
エルフの村と辺境都市ファシア
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宿屋『金糸雀亭』


 話を終えた一樹が冒険者ギルドを出ると、もう夕方であった。


「屋台巡りや、服屋に行きたかったがまずは宿の確保が先決かな。そういや、もらった書類にオススメの宿屋が記載されてたな。」


 ギルドの隣りが練習用の広場になっていたので、そこのベンチに腰を下ろし貰った書類を眺めた。


 おっ?ギルマスが騒がしいな。ウィスキーはこの世界にも受け入れて貰えそうだ。ニシシシ!

 

 書類には都市全体のマップ、東西南北で区切られた細かなことが記載されたマップもあった。一樹は冒険者ギルド周辺のマップを確認すると6つの宿屋が記載されていた。


 ☆お金のない冒険者はここ!ギルド提携宿『ひよこ亭』

 ☆食事が大事!1階が食事処で朝夕食付き『大盛りキング』

 ☆酒のことなら任せとけ!複数の酒蔵と提携している『ドワーフ憩いの場』

 ☆朝、美味しいパンの香りで目が覚める『ハニーブレット』

 ☆お風呂といったらここだろ!露天風呂あり、サウナあり『天神の湯』

 ☆パーティーで意見が割れたならここ!全てあるが、全てが平均的『白亜亭』


 これだとご当地マップだよな。変なキャラクターが喋ってるイラストまである……。


 地図を開き現在地を確認した。


「えっと?宿までは歩いて行ける範囲だ。良かった。」


 辺境都市ファシアはとても広い。縮尺が書いてないからわからないが、都市というのだから東京都くらいあるのかもしれない。

 辺境都市内にはバスのように決められたルートを辿る巡回馬車もでている。あと、9箇所示されている転移ポータル!!…気になる。


「都市の中心に領主の館…これまた広い敷地だな。ここより北側が住宅街。東側が工房や鍛冶などの工場地帯。西側が畑や酪農の農業地帯。チーズやヨーグルトみたいな発酵食品もあるのか?んで、南側が、冒険者が生活するような地域で店や宿、屋台なんかもでてる雑多な地帯か。とりあえず、宿屋『ハニーブレット』を目指すかな。」


 人々で賑わう中を、一樹は入っていった。。



 ☆★



 宿に向かう途中、沢山の冒険者達とすれ違った。。

 種族も様々、服装もごちゃごちゃ。冒険帰りなのだろうか?


「スゲー…ファンタジーだよ……どっかの交差点のハロウィンイベントかよ。」


 初めはファンタジーだと思い興奮したが、途中から若者のランチキ騒ぎを思い出し、気分が滅入ってしまった。おじさんにはついていけなかったなぁ。

 そんなことを考えながら歩いているとお目当ての宿屋を発見した。


(おぉ?宿屋があったにはあったが…満室の看板がでてるか。さすがは、オススメの宿屋だな。)


 1人うんうん頷いていると、服の裾を引っ張られた。振り向くと10歳くらいの猫の獣人らしき女の子がいた。


「お兄さん、宿屋を探していますか?うちの『金糸雀亭』はいかがですか?」


 宿屋の客引きだった。

 だが、結構幼いが大丈夫か?奴隷でなければ働いて大丈夫なのかな?

 とりあえず、腰を落とし、目線を同じ高さにして、話を聞くことにした。


「客引きのお手伝いかい?偉いね。」


 頭をなでた。嬉しそうでよかった。

 『金糸雀亭』はどんなどこかな?


「金糸雀亭はお風呂は…「あります!」ご飯は…「美味しいです!」ここから近い「安いです!…あれ?」アハハハ。」


 元気があって宜しい!最後は値段を聞かれると思ったのかな?


「よし!じゃあ、案内をお願いしようかな。」


「はい!」


 猫っ子は元気に返事をすると歩きだした。

 そのあとを追う俺……通報案件ではないだろうか…


 ものの数分で宿屋についた。1階は食堂、2階と3階が宿になっている木造のお店であった。しかし、お店には休業の看板が…


「お母さん!お客様つれてきたよぉ!!」


 猫っ子は元気に建物に入り、報告するが奥からきた猫獣人の女性に怒られた。


「パナ!朝、少しの間休みにするよって言っただろ?」


 猫っ子は、はっ!としてすぐにシュンとし、こちらを向いた。


「お兄ちゃんごめんなさい…。宿屋さんできないの忘れてたの。」


「できない?何かわけありなのかな?んん…女将さん、何かあったのですか?」


 初めは猫っ子に話しかけたが、途中から猫獣人の女性に話しかけた。お母さんで女将さんてあってるかな?


「今の都市状況を知らないで来たのかい?こんな時に旅してやってくるなんて災難だったね。今は魔石やらなんやらが不足してて高級な店か有名な店しかやってないんだよ。」


 女将さんは困ったように教えてくれた。


「魔石ですか?」


「ああ。他にもあるが『火の魔石』と『水の魔石』が特になくてね。最近、領主様が制限かけちまってさ。一般家庭を優先してまわしたんだが、飲食店までは足りなくてさ。魔道具が使えなけりゃ、風呂の湯は溜められない、飲む水がない、冷蔵の魔道具が使えない、料理の火が使えないで営業が成り立たないよ。仕方がないが、制限が解除されるまで休むしかないんだよ。悪いね。」


 すると女将さんは頭を下げた。泊まることすらできないらしい。


「そうですか…では、私と取り引きをしませんか?」


「取り引き?」


 女将さんは首を傾げた。


「はい。私は冒険者です。戦利品で魔石を確保しています。なので、」


 と、話を区切り、『火の魔石』と『水の魔石』を10個ずつ出した。それを見て女性は驚いた。


「これを差し上げますので泊めていただけませんか?」


 女将さんは悩んだが答えは変わらなかった。


「あぁ…悪いね。泊めてやりたいけど、うちだけ経営していると周りの弱小宿屋のやつらに泣かれちまう。弱い中で、持ちつ持たれつしながら生きてんのさ。この数では周りの宿屋、全てに行き渡らない。すまんね。」


 ほぉ…これが仁義ってやつかな。かっこいい。


「では、いくつ必要でしょう?」


「いくつって…うちらは10軒ほどが連盟している。1日各2つずつ使うとして最低5日分欲しいから各100個だ。あるかい?」


 一樹は無言で木をくり貫いて作った箱を2個だし、「ガヂャガチャっ!」っという音と共に満杯になるまで魔石を出してやった。そして、にこやかに言う。「足りますか?」と。


「ふう…お客さん何者だい?魔石が足りないときにこの量を持ってるなんて、犯罪者じゃないだろうね?!」


 女将さんにめっちゃ睨まれた。こ、怖い。


「犯罪者じゃないですよ。私は惑わせの森の下層で長く1人で暮らしていました。なので、森に湧くスライムを倒していたら、アイテムBOXを圧迫するほどの量を溜め込んでしまっていたのですよ。在庫整理品を活用していただけたら嬉しいです。」


「在庫品ねぇ…惑わせの森には、たまにスライムが大量に湧く沼があるって聞いたが、その近くで生活してるのかい…それなら納得だよ。」


 女将さんは納得してくれたのかな?その沼って何処にあるんだろう?いろんな属性魔石が欲しいから教えて欲しい。


「これだけあれば宿屋連中は足りるが、ホントにいいのかい?」


「あぁ。問題ないよ。安心して使ってくれ。」


 すると、女将さんは目を閉じ、震え始めた。どうしたのだろう?と、思っていると、カッ!と、目が開いた!何かの覚悟を決めたようだ。


「あんた!出てきな!!働くよ!!」


 奥から熊のような男が出てきた。


「話は聞こえてたが、連中の分まで魔石が………」


 そこまで言うと女将さんが半ば強制的に黙らせた。


「ぐだぐだ言ってんじゃないよ!!宿無し冒険者のバカ共がそろそろ暴れそうで危ないのは知ってるだろ?酒飲ませてガス抜きさせて、ついでに奴らのアリ金を全て奪っていくよ!」


「…わかった。」


 あぁ…今ので力関係がわかった。熊のおっちゃん、頑張れ。


「あんたはこれアイテムBOXに入れて連盟のところをまわりな!そのついでにゴンタとギバッツをここに来るように言いな!お客さんの名前「匿名で!」はぁ…わかったよ。気前のいい冒険者が分けてくれた、とでも連中には言っときな。」


「ああ。」


 熊のおっちゃんは魔石をアイテムBOXに入れて、何処かに行ってしまった。


「さて、あとは時間との戦いだ!まずはお客さんだ!名前は?泊まるだろ?」


 おぉ!いい笑顔だ。やっぱ接客業はこうでなくてわ!


「一樹だ。最短3日、長くて7日お世話になる。一泊いくらだい?」


「あんだけ魔石出しといて何言ってんだい?!!無料だよ!!一樹だね。201を使っておくれ。朝と夕飯は無料で出すが昼と酒はどうする?」


「いやいや!ちゃんと料金払うって。」


 元日本人として!そういうのはいたたまれないのですよ!!


「いいから納得しな!あんまり煩いとパナも付けるよ!?」


 ニヤッとしないで!ロリコンじゃないから付けられても困る!ってか、付けるってなに??!YesロリータNoタッチ!いや!ロリコンでないって。


「分かりました!!無料でお願いします!昼は屋台巡りしたいのでなし。酒を飲むときはちゃんと払います!」


「仕方ないね。それで良しとしてやるよ。」


 あれ?なんで客の俺が遠慮してるんだ?


「ありがとうございますですよ。今日は疲れたからもう寝るよ。夕飯いらない。」


「はいよ。下は煩くなるだろうが勘弁しておくれ。風呂は?」


「朝はいれる?」


「仕方ないねぇぇ。朝飯のあと入れるようにしておくよ。」


「ありがとう。そろそろ限界だぁ…女将さんおやすみぃ。パナもおやすみぃ。」


 一樹は201号室に入ると、部屋と外の風景を楽しむことなくベットへダイブ。寝てしまった。




 『根はなくても花は咲く』

事実は無根であっても、うわさが乱れ飛ぶことをいう。

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