冒険者ギルドカードと酒
「さて、凹んでるとこ悪いが、質問は他にないか?」
一樹は頷いた。もう聞きたくない。
「では、このあとはどうする?ギルドカードは作るとして、領主側から連絡があるまで都市の中にいて欲しいんだが、問題ないか?」
「そうだな…森に帰りたいとこだが、ここで帰るとウィル達に着いてきた意味もないしな。」
ホントは面倒になってきたから森に引きこもって、ほとぼりが冷めたら辺境都市の観光でもしようと考えていた。
「あぁ…今から森に戻るのはオススメできないぞ?お前さんが住んでるのは【下級エリア】なんだろうが、ダンハ老師には庭みたいなもんだ。連れ戻されて、英雄にされたあげく、辺境内をパレードで晒し物にされるぞ?今はまだ都民の心は不安定だし、安定させることがてきる者がいるなら、ここの領主は笑ってやるぞ?」
はぁ?!ダン爺ってそんな人なの?!温和なおじいちゃんじゃないの?
……ってか領主よ。
「わかった…ギルドカードを作ったら都市を観光しながら気長に待つよ。」
「それがいい。宿が決まったら連絡してくれ。本来ギルドカードを身分証扱いされるのはマズイのだが……ここで作るでいいんだよな?」
ギルドマスターは冒険者ギルドに所属しろと言ってきた。と、思う。
「ああ、冒険者になりたいと思うが、露店なんかにも興味がある。商人ギルドとの掛け持ちは平気か?」
やはり、地球産のものを持ち込めるなら、露店で金稼ぎはテンプレだ。
テンプレはやりたいが目立ちたくはない。ここ重要。なので、事前調査はしっかりやって、相場は崩さず他の同業者に迷惑かけず、黒字になるものを探す。
「掛け持ちは全く問題ない。自分で狩りをして、冒険者ギルドに討伐証明の素材を卸し、肉は出店で売ってるやつもいる。少ないがな。」
狩ったものを自分で売るのか…食品衛生法なんてないってことだ。買うのも売るのも自己責任なのが常識みたいだ。
ギルドマスターは書類と厚めのタブレットのような石盤を机に置いた。
「冒険者ギルドの説明書類とギルドカードを作る魔道具だ。ホントは1階の綺麗な受け付けの姉ちゃんから説明を聞けるが行くか?」
ニヤけ面で聞いてきた。それを見て察した。
「…めんどくさいからギルマスから聞くわ。」
「そいつは賢明だな。今、謎の人物が応接室にいると大騒ぎだろうからな。野次馬根性の冒険者に囲まれて説明もちゃんと聞けないだろうよ。」
そんなことだと思ったよ。囲まれるのに新人イジメまでがテンプレですよね。
そして、ギルマスからの冒険者ギルドの説明を受けた。説明の内容はよくある小説のものだった。
:冒険者のランクはF級からS級まである
:常設依頼とクエスト依頼があり、クエスト依頼には依頼期間、クエスト失敗による罰金がある
:カードの質は、F級からD級が銅、C級が鉄、B級が銀、A級が金、S級がミスリルとなる
:受けられる依頼は自分のランクのみ
:スタンピート発生時には強制依頼となり、受けている依頼は全て破棄される
:F級は10日、E級は30日、D級は90日、C級は180日の間に1つは依頼を受けてクリアすること。B級A級S級は無制限であるが1年に1度は必ず、冒険者ギルドに生存報告をすること
:紛失してしまった場合は厳しい審査後、再発行可能、手数料一万ギル必要
これが大まかなところだった。
ギルドマスターが持ってきた書類にはもっと細かく書いてある。後日全て読んでおくように言われた。
「以上で説明を終えるが、質問あるか?ないならギルドカード作りになる。こいつに手を置いてくれ。」
一樹は「ない」と答え、頷くと石板に手を置いた。すると、石板全体がピカッと光り上部の穴からカードが出てきた。
「これがギルドカードだ。」
ギルドマスターから銅板が渡された。
銅板には『カズキ 冒険者 薬師(見習い)』と表記されていた。これだと偽造できそうだが、この石板に通すと偽造を見破るシステムが組まれているので、すぐバレるらしい。
(ちなみに、本体を鑑定してみたが、素材に『スキルアイ』ってのが一つわかっただけで、あとはわからなかった。)
ギルドマスターは、一樹の職業を見て質問してきた。
「ほお?森で生活してるなら狩人にしなかったのか?」
「ああ。確かに森で狩りをするだけなら狩人にしたが、ダンジョンにも興味があったからな。俺はパーティーを組む気がなかったし、ソロでやっていくなら幅広く色々出来ないとな」
自分で言ってて少し悲しくなった…ボッチだと自己申告してしまったのだから…
仕方ないじゃないか!!森暮らし、たまに村。これを考えていたんだから。
「確かにそうだな。で?ここでできることは終わったと思うが、どうする?依頼でも受けるか?」
「いや、今日はいいや。領主側から連絡くるまで何日かかると思う?」
何をするにもこれがわからないと決められない。
「さぁな。だが、早くて3日、遅くて7日だろうな。」
「どうして?」
大分ピンポイントな予想だ。ギルドマスターは領主と普段から関係があることが推測できる。良い悪いは分からないけど。
「まぁ、ダンジョン生命石をセット、討伐、魔石を流すまでが3日、お前さんを監視して今後どうするかの対策で7日だな。」
監視っておかしいだろ監視って!俺悪いことしてないよ?!
「ま、まぁいいや。7日か。都市内で勉強でもしてますよ。商人ギルドの場所と露店、屋台が集まったエリアを教えてもらえるか?あと図書館ってある?」
「ハッハッハ!もう観光気分か。そういうことなら辺境都市の簡単な地図を渡そう。大分広いから7日でも楽しめるだろう。」
おぉ!!いくらゲームのような世界でも戦争の道具になりそうな地図があるとは。マッピング機能があるものがないから助かります!!
「ありがとう。地図はホントに助かる。迷子になる確率が高かったし、森生活に必要なものも買える。」
「…良くあの森で暮らせたとつくづく思うな。どこに泊まるかだけは報告しろよ?」
ヤバ…忘れてた。危ねぇ。
「……その顔は忘れてたな。」
「いやいや、ハッハッハ!あっ!F級依頼の中に回復草の採取ってあります?」
「あぁ。F級は依頼を受けなきゃならない感覚が短かったな。F級常設依頼は渡した説明書類の中にある。あとは孤児院での子守、露店や屋台の店番なんかがクエスト依頼で不定期な依頼になる。」
書類をパラパラ捲ると、F級常設依頼のページがあった。薬草などの採取依頼は6種類あった。明日、宿屋の報告ついでにクリアすればいいな。
さて、聞きたいことは聞いたし、ギルドカードも作った。もうここでの用事は終わった。
次は俺のターンだ!!
「そういえば、この都市にある酒ってどんなのがある?」
「酒か?酒なら『ビール』『ワイン』『果実酒』が主になり、種族酒となるものが、ドワーフの作る『火酒』、エルフが作る『薬酒』、人魚が作る『海酒』、小人族が作る『血酒』になる。それがどうした?」
ギルマスの話を聞いていると、蒸留酒はないことがわかった。もしかすると火酒が蒸留酒かもしれないが、物は試しでウィスキーを飲ませてみることにした。
『アイテムBOX』から2つのロックグラス、氷、ウィスキーを取り出した。ガラスのグラスとウィスキーは『引き換え券』で前もって交換しといた物、氷は業務用の製氷機を魔導具化したもので作って置いたやつだ。
机に置いたグラスに氷をいれ、ウィスキーを注ぎながら尋ねた。
「ギルマスはお酒好き?あと仕事中飲んで平気?」
「?まぁ、好きだな。仕事中でも気分転換に薄めたワインを飲んだりするから少しなら問題ないな。」
「そっか。なら問題ないね。よし!乾杯!」
机に並べたグラス同士を当て、チン!と鳴らした。一樹はウィスキーを一口飲み「うまい!」と言ってそのまま面会室を出ていった。
◇
一樹が出ていった部屋でロックウォードはウィスキーの入ったグラスを掲げて飲むか悩んでいた。
「んん…見た目は『ビール』でも『ワイン』でも『果実酒』でも種族酒でもない酒みたいだか…」
ロックウォードは悩んでても仕方ない。と、気合いを入れて飲んだ。
「!!?ゴホッゴホッ!!!なんだこれは!?火酒に似ていて、酒精が強いのはわかるが香りも強く、うまい!ドワーフでもない小僧がこの酒を他の国から見つけて…いや、あの森で作った!?」
本来、一樹のことをすぐに領主へ連絡をしなければならなかったのだが、ウィスキーに心を奪われて忘れていた。
「くそっ!これが酒だということ以外まったくわからない!!いったいどうやって作ったんだ!!?」
美味い酒をくれたことに感謝はするがなぜか怒りが込み上げてきた。
「あの野郎…最後にとんでもない爆弾を置いていきやがって……気になって仕事どころじゃねえじゃねぇか!!どうせなら瓶ごと置いていけえぇぇぇ!!」
ロックウォードは吠えていた。
こうなるだろうと予測していた一樹は、ウィスキーの入れ物をカツラノ木材を加工した物に変えて、受け付けに渡していた。ギルマスの機嫌が悪かったら渡せば治ると言って。
10人の方に評価をつけてもらえました。ありがとうございます。
のんびり書いていきますが、これからも宜しくお願いします。
『猫かぶり』
本性を隠して、表面おとなしく見せかけること。




