無気力状態
いきなりだが。なんやかんやで、チャイニーに帰着してから三日が過ぎていた。
俺はあれからすっかりやる気を無くし、団地の部屋で無気力に寝っ転がってた。
「はぁ~……」
そして何もせずに、ぼんやりとため息。
チャイニーに帰ってからずっとこんな調子だ。
今日も昼まで寝ていた。
「……腹減った」
しかし何もしなくても腹は減る。
グーと腹が鳴った俺は、やむなく屋台街に行き、食事をすることに。
◇
屋台街に行くと、他の佳君、デューク、クラミーが先に来ていて、俺を待っていた。
「ルネ君~~~」
イスに座ってた佳君が俺に気付いて、立ち上がって駆け寄ってくる。
「調子はどう?」
佳君は親切なので、俺のことを心配して、気を使ってくれる。
「……イマイチ」
しかし、心配してくれるのは嬉しい反面、情けない気分にもなる。
なお、割合は半々。
そんなんだから、俺は佳君に素っ気ない返事をしてしまう。
「そうですか……」
俺の返事を聞くと、佳君は少ししょぼんとした顔になる。
「まあ、それはともかく。昼飯にしようぜ」
しょぼんとする佳君をデュークが励ます。
「……そうですね」
などど、話も少々に。俺達は昼飯を食べることに。
んで、各自食べたい物を買ってきて。さぁ、昼飯だ!
なお、買ってきた物は。
デュークがあんまん。
クラミーが月餅。
そして、俺と佳君がちまき。
と、なっている。
「それじゃあ、手を合わせて」
「「「「いただきまーす」」」」
佳君の合図すると。みんなで食べ始める。
なんだか学校給食みたいだな……。
「「パクパク、モグモグ」」
「うーん……」
クラミーとデュークは元気に食べ進めるが。
俺はイマイチ食が進まない。
なので、新聞を読みながらダラダラ食べる。
自分で言うのもなんだが。行儀の悪い食べ方だ。
「美味しいね、ルネ君」
「あぁ……」
そうは言ったが。新聞読むのに夢中で、ちまきの味なんて分かりゃしねぇ。
返事もいい加減に、俺は無心で新聞を読み進めるのだった。
なお、今さらだが、この世界にも新聞がある。
この世界で唯一の情報源なので、毎週買ってるが。
現実世界の新聞と異なり、半月に一回のペースでしか発行されない上。内容もスカスカ。
ページ数も中日新聞の半分ぐらいしかない。
ともかくお粗末な新聞である。
今回もろくな情報がないなぁ、と思いつつも新聞を買ってしまうのだった。
「……西の大陸の覇者が、なにかやらかしたか」
新聞の最後のページを読むと。西の大陸の覇者の事が載っていた。
この西の大陸の覇者。名前はウーツという凶悪な犯罪者。
通称、首領・ウーツ。
直接会ったり、戦ったりした訳ではないので詳しくは知らないのだが。
ウーツは西の大陸で最強の戦力を持つと恐れられ。
その兵力は五千人とか。
彼自身の強さも凄いそうだが。五千人の兵を束ねる高い統率力を持つ切れ者でもあった。
西の大陸は比較的平和で、凶悪な賞金首が殆どいないのだが。
彼は数少ない例外だった。
ギルドに張り出された手配書に書かれてる賞金額も、他の賞金首より0の数が1つ以上多く。別格の存在。
いつだったか、東の大陸に進出したと聞いたが。
それがどういった訳か西の大陸に帰還したと新聞に書かれていた。
ちょっと驚いたが。俺には関係ない事だと思。そのまま新聞の続きを読む。
「!?」
しかし、新聞の次のコマを読むと、とんでもない事が書いてあった。
「んぐっ!?」
あんまり驚いたもんで、口に入れていたちまきが喉に詰まりかけた。
「ルネ君、お水!」
佳君が機転を利かせて、コップに入った水を差し出してくれる。
「ごくごく!」
俺は水を一気に飲み干す。
「ぷはー! ありがとう、佳君」
超人的な力を手に入れた者が、食べ物喉に詰まらせて死ぬなんてあり得ない。
佳君のお陰で、事なきを得る。
ホント、佳君には感謝しないとな。
「でも、ルネ君。どうしたんですか?」
「これを見たんだ」
俺は新聞を佳君に渡して、見せる。
「こ、これは!?」
佳君も新聞を見ると、驚きの声を上げる。
その記事とは……。
「音尾君だ!?」
そう。新聞に写真付きで音尾が載っていたのだ。
その姿と名前で、俺と佳君は写真の人物が音尾だとすぐに分かった。
これだけでも驚きだが。
一番驚いたのは、その内容だ。
ウーツが音尾に真剣にプロポーズしたと書かれている。
新聞は『首領・ウーツついにご婚約か?』と、報じた。
なんと、音尾がウーツと結婚させられそうになっていたのだ!
しかも音尾の為に『西の街を一つ与える!』とも言ったらしい。
そんで、その標的がチャイニーだった。
これはまずい。
チャイニーと音尾が大ピンチだ。
「二人共、ちょっと見てくれ!」
「「なんだ、ルネ?」」
俺は急いで新聞のことを食事に夢中のクラミーとデュークにも教える。
「「ブーーーーーーーーーーッ!?」」
新聞を見ると、二人は驚いて、口に入れてた物を思いっ切り吹き出す。
吹き出した物は、互いの顔にぶっかかった。
「きたねぇぞクラミー!」
「オマエこそ、なにすんだデューク!」
などと、デュークとクラミーは互いに一瞬睨み合うが……。
「「って! こんなことしてる場合じゃねぇ。音尾を助けに行かなくちゃ!!」」
っと、ことの深刻さをすぐに理解していた。
2人共、意外と頭の回転が速いな。
「「でも、どうしよう?」」
「「ズコッ!?」」
ただし、考えがあるわけではなく。思っただけ。
これには俺も佳君も呆れてズッコケる。
「佳さんとその仲間はアナタ達ですか?」
「あ、はい。そうですが」
俺と佳君がズッコケて地面にぶっ倒れていると。
スーツ姿の男の兵士が二人現れる。
「姫様がアナタ達をお呼びだ。至急、城まで来てくれ」
「はい、分かりました」
二つ返事でOKしてしまったが。
呼ぶ出される心当たりは、思い当たりがない。
何用だろうか?
あれこれ考えながら、俺達は兵士に連れられて、なんだかよく分からないまま城に向かうのだった。




