捜索計画
「あいやあああああああああぁ!」
「はぁあああああああああああ!」
「ふぐわあああああああああっ!」
いきなりだが。俺達は黒い森で修行中。
白熱の闘いを繰り広げています。
「よし! 今日はここまで」
俺が合図を出すと、佳君とクラミーは闘うのをやめる。
「ふぅ~」
「今日もハードだったぜ」
結構激しい修行なので。終わると決まって全員が一息つく。
なんだか、農夫が『お茶の時間にしましょう』って、聞いた時の反応と似てるな(笑)
まあ、冗談はさておき。
厳しい修行の甲斐あって、俺達は強くなった。
現在のレベルは10。中々のレベルだ。
「そろそろ例の計画を実行しない?」
「例の計画か……」
佳君の言う計画とはなんなのか?
実は俺達は、信君と音尾を探すための捜索計画を立てていたのだ。
けれどもその探索はかなりの危険を伴う。
捜索中に凶悪なモンスターや恐ろしい盗賊と出くわす可能性もあり得る。
そのために俺達は強くなるために一ヶ月修行し、レベル上げに専念してたわけだ。
「うーん……どうしようかな?」
レベルもそこそこになり、一応満足できる程度の強さにもなった。
しかし、本当にこれで大丈夫なのかと、不安もあった。
そのため、すぐに捜索を開始するか。それとも、もう少しレベルアップしてから捜索しようかちょっと悩む。
「……よし! 行くか!!」
けれども迷った末に捜索を開始する事に決める。
「おい。ルネ!」
「なんだ、クラミー?」
「お前だけで勝手に決めるなよ」
決めた矢先に、クラミーが文句を言ってくる。
「じゃあ、クラミーはどうしたいんだ?」
「んなもん、すぐに捜索したいに決まっている!」
「俺と同じ考えじゃねぇか!!」
正直、何故にクラミーはそんな意味のない事を言うのかと思ったが。
たぶんクラミーの性格上、勝手に決められるのが嫌なのだろう。
変なとこで我が強い。あいつはそういう奴なのだ。
クラミーがそんな事言うせいで、初っ端から不安な気持ちになる。
まあ、何はともあれ。
俺達は家に帰り、旅の支度をする。
そんで次に、大家さんにしばらく部屋を留守にする事を伝える。
そして最後に、曹操に一緒に捜索してもらえないか頼みに行く。
知略に優れた彼なら頼りになる。
俺の知る限り、彼ほど仲間にして心強い者はない。
んで、頼みに行くが……。
「……申し訳ないのですが。その依頼はお断りします」
「なんだって!?」
曹操の性格上、断るなんて選択はないと思ったが。断られてしまった。
これはまさかの事態。
「なんでですか、曹操!」
俺は頭アッパラパーになり気味な状態で、曹操に理由を尋ねる。
だが……。
「私にはこの世界に来た人達を救う使命があります。だあら、今はこの街から離れる事ができないんだ」
「あっ……」
そう言えば、曹操はこの世界に召喚された人達を集めて保護していたんだった。
彼のボランティア精神で住む場所を用意してあげたり、仕事に就かせてもらった冒険者は少なくなかった。
そんな曹操が街を離れてしまったら、そういう人達が路頭に迷う可能性がある。
また、捜索中に曹操を死なせたなんて事になったら、彼の支持者から非難や罵声を浴びせられるだろう。
いつの間にか曹操は、とんでもない大物になってしまってた。
そんな大物を仲間のためとは言え、連れて行くわけにはいけない。
現実世界で例えるなら『虫取りしに行くから総理も一緒に行かない?』と、軽い気持ちで誘う様なもの。
普通そんな事するバカはいない。
「曹操、分ったよ。捜索は俺達だけでする」
そのため、俺は曹操を連れて行く事を諦める。
「すまない、ルネ君」
俺が諦めた事を言うと。曹操はすまなそうに謝った。
「曹操君、もし捜索中に信君と音尾君がチャイニーに来たら。チャイニーで待っているように伝えてえくれませんか?」
佳君が会話に首を突っ込み、曹操に一つ頼み事をお願いする。
「分かりました。もし二人がこの街に来たら、伝えておきます」
曹操は快く引き受け、ニッコリ微笑む。
「ありがとうございます、曹操君」
感謝の思いから、深く頭を下げる佳君。
「いえいえ」
で、謙遜する曹操。
結局、当てが外れた俺達は三人だけで捜索する事になったのだった……。
◇
さて。捜索を開始するわけだが。
これから俺達が捜索する西の大陸の街は三つ。
街の名は『荘平』『寅吉』『ヘティグリーン』という。
全部人の名前みたいな街名だな。
まあ、それはともかく。
俺達は仲間の捜索のため『さぁ、出発だーっ!!』と、チャイニーを出るが。
またしても問題が発生。
それは効率優先の為に一人、一つの街を調べようとした作戦に、佳君が異議を唱えたのだ。
しかもその理由がとんでもないもの。
それは……。
「離れ離れで行動したくないの!」
と言う、呆れた理由。
仲間意識が強いのはいい事だが。強過ぎるのも問題だ。
佳君の仲間意識は強過ぎて執着とも言える領域のレベルに達していた。
普段は割とまともな佳君だが。この時はちょっと異常に見えた。
「だがな、佳君。効率を考えると、その考えは良くない」
俺は佳君を説得しようとするが……。
「みんなと離れたくない!!」
っと、駄々をこねてまったく譲らない。
しかし、効率の悪い佳君の方法を許すと、捜索が大幅に遅れてしまう。
なんとか佳君を考え直させようと、必死に説得したが。
佳君の意思はダイヤモンドより硬く。妥協する気は毛筋程もなかった。
口論は長引き、三時間が経過。
「ふぁ~」
交渉中、蚊帳の外のクラミーは退屈そうに大あくび。
他人事とでも言いたさ気な、ふてぶてしい態度だ。
まあ、それはともかく。
三時間の口論の末、俺は交渉に敗北。
やむなく要求に応じざるをえなかったのである。
かくして俺達は団体行動で捜索する事になってしまったのだった……。




