連れて来ました
「一番強い佳君に勝ったから。俺達の中では、俺が一番強い事になるかな♪」
試合後、佳君に勝ったクラミーは有頂天。
調子に乗って、こんな事言い出す。
クラミーが調子に乗ってるのは、誰の目から見ても明らか。
これは悪いパターンだな。
「それはどうかな」
だから、俺はクラミーに一言かましてやる。
「ルネ、それはどう言う意味だ?」
俺の一言に、クラミーは食って掛かる。
「まだ俺と闘ってないぜ」
「ほ~う。最強の俺とやる気か?」
「そうだ!」
食いついてきたならこっちのもんだ。
焚きつけてやる。
「面白い! やったろうじゃないの!」
上手い事乗ってきた。
天狗になったクラミーの鼻をへし折ってやる。
俺とクラミーは武器を構え、闘おうとしたが……。
「二人共、トレーニングに励んでるねぇ」
突然、俺達の前に曹操 (委員長) が現れる。
「委員長!?」「曹操!?」
驚いた俺とクラミーは、同時に声を上げてしまう。
「桟橋君。委員長と呼ばないで、曹操と呼んでくれよ」
「あっ! そうでした。すいません」
名前に拘りがあるらしく。曹操は、その事を強調していた。
「曹操、俺の事も桟橋じゃなくて、クラミーと呼んでくれ」
「名前変えた?」
「実は、これこれしかじかで……」
俺は名前を変えた経緯を曹操に説明した。
◇
「……ってなわけだ」
「そういうわけでしたか」
ことが分ると、曹操は納得顔。
すっかり分かったといった感じだった。
「しかし曹操君。どうしたんですか、こんな場所まで?」
曹操が納得していると、佳君が黒い森に来た理由を尋ねる。
「あぁ! そうでした」
どうやら目的を忘れてたらしく。曹操は思い出したような素振りを見せる。
「その事ですが……」
そして曹操は、来た理由を話し始める。
「皆さんの部屋に行ったけれどお留守だったので、街の人に聞いてみたら、黒い森に行ったと聞いたので、黒い森に来たんですよ」
「なるほど」
事の次第が分かり、佳君は勝手に納得してた。
「んで、曹操。俺達に何用だ?」
今度はクラミーが曹操に質問する。
「皆さんに会わせたい人がいるので、連れてきました」
「紹介したい人?」
「はい。2人共、来て」
曹操がそう言うと、茂みの中から二人の男が出て来た。
一人は騎士風の格好をした、染色した様な不自然な色合いの茶髪が似合う。
いかつい髪型のビジュアル系イケメン。
いわゆるクラスで目立つ、特Aレベルの男子といった風貌だな。
こういうヤツがクラスに存在すると、俺の様な地味な外見の男子は、女子からいないものとして見られるから頭にくる。
それだけでも腹が立つが。
一番ムカつくのは、ヤツらは女子をおいしい獲物と言わんばかいに奪っていく事だ。
これだけは許せん。
そんなヤツらがのせいで、俺達みたいなのは女子と恋愛なんて、できやしねぇ。
はっきり言って、俺の嫌いなタイプの男だ。
※ 嫌いと言っても、恋愛対象の嫌いと言った意味ではない。
もう一人の方は、サッカー選手風のコスチュームを着た。ド派手なショッキングピンクの髪色が目を引く、坊主頭のデブだった。
ちょっと見でも分かる様に、かなりの肥満体。
彼の体重が百キロを超えてるのは間違いないだろう。
体形的にもとろそうだが。顔付きもおっとりしているので、とても鈍臭そうだ。
実際には、どうなのか知らんが。
この二人は何者なんだ?
「それで、曹操。あたし達をこんな所まで連れて来て、どうする気?」
「おわっ!?」
イケメンの方が、いきなり喋り出したが。
彼の声が、女の声で驚いた。
こういうのに慣れたつもりでいたが。中々慣れないものだと、再認識させられる。
「紹介するよ。彼女の名前はスネープアイズ。私の仲間だ」
そんな驚いてる俺を横目に、曹操は紹介を始める。
「彼女? まさか……!」
そう。この二人こそ、前に話ていた曹操の仲間だったのだ。
「しかしこの声、どこかで……あ! 佐知香君か!」
「すごい! 佳君、よく分かったね」
曹操は佳君の直感に驚いた。
佳君の思った通り、あのイケメンの正体は俺達のクラスメートの絵本佐知香だ。
あんまり喋った事ないけど。現実世界の彼女は、中々の美人なんだよなぁ。
「知ってる人に会えて嬉しいよ♪」
佳君は知人との再会をストレートに喜んでいた。
「んだよ! 仲間の女って、中身が女って意味かよ!」
一方で、クラミーの方は思ってたんと違うと言わんばかりに落胆していた。
「しかし、佐知香さんもザ・クリエイションをプレイしてたんだな」
なんて、俺が気さくにスネープアイズ (佐知香) に話しかけると。
「あんたら、男のクセに女のアバター使ってるの」
「うっ!」
きつい一言を食らう。
現実世界でもコレだから、彼女の事苦手なんだよなあ。
「だいたい男がゲームで女キャラ使うなんてキモい!」
「むぅ~!」
この時俺は「男がゲームで女性キャラクター使ったって。いいじゃねぇか!!」といいたかった。
けれども彼女と口喧嘩して勝った事はない。
やむを得ず泣き寝入り。
悔しいいいいいいいいいい!!
「と言う事は、こちらの人も……」
「はい。その通りですよ、佳君」
「あ、やっぱり」
俺が一人で悔しい思いしてる時。佳君は、もう一人の曹操の仲間の事を気にしていた。
「それで、彼女の名前は?」
「空太だ」
「空渡?」
「空太」
「……」
聞き間違いかと、佳君は曹操に聞き直したが。聞き間違いではなかった。
「初めまして、空太です」
「むなぁ!?」
空太が喋ったが。
その声は、外見に反した、透き通ったかわいらしい癒し系ボイス。
声質に驚いた俺は、声が裏返ってしまった。
でも、この声聞いた事があるのだが……。
「……もしかして、餅子さん?」
「はい、そうですが」
「やっぱりそうか!」
当てずっぽうで聞いてみたが。
俺の直感は正しかった。彼女の正体は、二年生の小橋餅子さんだ。
現実世界では、我が学園のマドンナだった人だ。
佐知香も結構な美少女だが、餅子さんと比べると霞んで見える。
どれくらいの差か例えるなら。佐知香を並美少女としたら、餅子さんは特級美少女と言ったところか。
学園のマドンナと言われるのはダテじゃない。
今まで何人もの男子が告白するも、悉く失敗。
俺も告白したが、結果は玉砕。
彼女の心を射止められた男子は一人としていなかった。
まさに高嶺の花。
そんな言葉が彼女にはよく似合っていた。
しかし、数多くの男の告白を断り続けるもんだから。一時期、同性愛の人だと噂された事もあった。
無論それは違ってたが。
そんな彼女が、どうしてこんな逆美男子のデブなアバターを作ったのか?
気になって仕方がない。
「餅子さんは、どうして空太みたいな個性的なキャラを作ったんですか?」
「実は私、お相撲さんみたいなコロコロ太った人が好きなんですよ」
「なんと!?」
取り敢えず聞いてみたが、。その理由はとんでもないもの。
この衝撃の事実に、俺は口があんぐり。
「なんて言うか。こう、力の塊みたいな力強さに魅力を感じるんですよ♡」
「ポカーン……」
学園のマドンナの信じ難い好みに、俺は開いた口が塞がらなかった。
でも、これではっきりした。
彼女はデブ専だ。
そんなんだから、彼女のハートを射止めた男子がいなかったのだ。
彼女に告白した男子にデブはいなかったからなあ。
彼女がイケメンにも靡く事がなかった理由がよく分かった瞬間だった。
現実世界に帰ったら、マジで力士になろうかと考えてしまうのだった。




