蛍光灯ソード
「……うーん、どれにしよっかなぁ~」
いきなりだが、俺達は今、武器屋にいる。
それもこれも昨日の戦闘で、クラミー (マサ) のカリ棒が一本破壊されてしまったからだ。
一応、一本でも闘えるのだが。
本人の二刀流で闘いたいたと、強く希望して一歩も譲らないのだ。
であるからして。新しい武器を買う流れとなった。
「しかし、ルネ君。中々の品揃えだと思わない?」
「だな」
佳君の言う様に、品揃えは豊富。
武器屋は狭い店だったが、様々な武器が所狭しと陳列されていた。
ちょっと見てみると、ロールプレイングゲーム定番の剣や杖はもちろん。ヌンチャクや六尺棒なんて武器もある。
しかしどういうわけかカメラやタイヤなど、普通武器として使わない様なものまで売っている。
これでは武器屋じゃなくて、雑貨店である。
ここ本当に武器屋か?
まあ、それはさておき。
クラミーは武器を選んでるのだが。
選び始めてからすでに小一時間が経過している。
選んでいる本人はいいが。待ってる俺と佳君は暇で仕方ない。
「クラミー、いい加減にしろ! いつまで選んどる気だ!」
あまりの遅さに、俺は痺れを切らしてクラミーの胸ぐらを掴み、に文句を言った。
「男ならパパッと決めろ!」
「男じゃないわ。今は女よ~」
クラミーは俺の手を振り払うと、体をクネクネさせながら女みたいな声 (?) で反論してくる。
「声を高くするな! 気色悪い!」
見た目が女でも、声が男なので高い声を出しても気色悪いだけ。
これじゃあオカマかニューハーフと会話してる様なもんだ。
「ルネ、女の子のお買い物は、時間がかかるものよ」
世間ではそう言われているが。それとお前の事は関係ないと思う
結局、武器が決まったのは、それから三十分後の事だった……。
◇
武器の購入後、クラミーは早速試してみる事にした。
「それで、どんな武器にしたんだ?」
「これ♪」
「なんじゃこりゃあ!?」
クラミーが出した武器は、直管タイプの蛍光灯そのものだった。
「クラミー、なんだよそれ!?」
「『蛍光灯ソード』だ」
「それ武器だったのか!?」
「もちろん!」
ドヤ顔で胸張ってたが。
現実世界にこの様な武器は存在しない。
はたしてどの様な武器なのか?
「この武器はな……」
クラミーが説明しようとしますが。
クラミーは説明がヘタクソなので、変わりに俺が説明します。
蛍光灯ソードは読んで字の如く、蛍光灯の様な剣だ。
使い方は、蛍光灯ソードに一定量の電気 (電流) を注ぎ込む事でガラス管部分が光る。その状態で剣のように振り回せば、金属板をも切り裂く程の威力を発揮する、破壊力抜群の武器だ。
しかし、優れた威力を発揮する一方で、エネルギー効率は悪い。
無暗矢鱈と使うと、あっという間にエネルギー切れを引き起こしてしまう。
さらに、エネルギー切れになると光が消えてしまうため、外見からエネルギー切れが露呈してしまうという致命的な欠点もある。
そのため蛍光灯ソードは少々扱いにくい武器と言える。
説明終わり。
「……ってな武器だ。どうだ、すげーだろ!」
なんてクラミーは胸張って、自慢話気味に説明してるが。
これは選択ミスだと俺は思った。
「クラミーはこの武器をマジで使うつもりか?」
一応念の為に聞いてみるが。
「あったりまえだ!」
と、ドヤ顔で言う有り様。
どうやらマジらしい。
「でも、クラミー君。その武器は使い勝手がよくないらしいよ」
佳君もその事に気付いたようで。エネルギー消耗の激しさ (問題点) を指摘したが……。
「だいじょうぶだぁ。解決方法は考えてある」
「「解決方法?」」
その解決方法とは?
「電気を生み出せばいいんだ!」
クラミーは胸をドーンと叩くと、解決方法を豪語した。
「確かに理論的にはそうだけど」
「その方法が問題だろ」
「忘れたか? 俺は魔法少女だぞ」
「「?」」
クラミーの訳の分からない説明に、俺と佳君はクラミーの言葉の真意が理解できず、二人揃って首を傾げるが。
「そうか! 雷の魔法特性か」
そう。クラミーの種族は魔法使い族 (ちなみに俺は戦士族) だ。
魔法使い族は、基本的オールマイティーな戦士族と違い、全体的なスペックで劣る反面。魔法攻撃に優れている特徴がある。
魔法攻撃には属性があり 火・水・雷・地・風・光・闇 の七種類がある。
クラミーは、その雷の魔法で蛍光灯ソードのエネルギー問題点を解決しようと目論んでいるいる模様。
「でも、クラミー君が都合良く雷の魔法特性を持っているかな?」
佳君の疑問ももっとも。
魔法使い族だからといって、全ての属性魔法が使えるわけではない。
使える魔法は本人の魔法特性によって決定する。
従って、水の魔法が使いたくても、所有する魔法特性が火の場合は、水の魔法を使用できない。
また、魔法特性がどの属性なのかは、使用するまで本人にも分からない。厄介な代物だ。
そのためか、種族を魔法使い族にしているプレイヤーは少数派。
まあ、説明はこの辺にして。
取り敢えず俺達はクラミーが雷の魔法を使えるか調べてみる事に。
なお、街中で武器を振り回すと、他の人に迷惑がかかる。
であるからして、俺達は調べる場所を『黒い森』にした。
「黒い森に来るのも久し振りだな」
「佳君、まだ三日目だよ」
「そうだっけ?」
「そうだよ!」
俺達三人が『黒い森』に召喚されてから、まだ三日しか経過してない。
けれども、もう何日も過ぎた様に感じるから不思議だ。
「ここなら誰かに迷惑もかからないからいいな」
黒い森は朝も昼も夜も薄暗く、薄気味悪いので人もモンスターもあまり近寄らない場所。
それが故に修行するにはもってこいの場所だ。
「んじゃあ、やるか」
そう言ってクラミーは蛍光灯ソードを出して試そうとする。
しかし、そう都合良く雷の魔法特性を持っているとは思えなかったが。
「できた♪」
「マジか!?」
もの凄く簡単にできてしまった。
『論より証拠』とは言うが。これにはビックリ。
「どーだ! 俺の素質はすげーだろ」
ことが上手くいったクラミーは、露骨に自慢してくる。
正直うざったい。
「しかしクラミー君、よくできたね」
けれども佳君はこの様なうざったい行為をされても、何とも思ってない。
寛大なのか鈍いかのどっちかだな。
「使えるの知ってたからな」
クラミーは口ではそう言ってるが。
実際には知ってたのではなく。思い込んでただけなのだ。
つまりクラミーの根拠のない自信が事を可能にしてしまったと言える。
『為せば成る、為さねば成らぬ何事も』か……。




