次は毒イノシシその物だな
報酬の取り分が決まると、佳君はなぜかギルドの外に出て行った。
その訳は……。
「次は毒イノシシその物だな」
そう。毒イノシシを買いたいと言う人達がギルドの外でごった返していたのだ。
「佳さん、俺に売ってくれ!」
「いや、この私に売ってください!」
「是非ともワシに売ってくだされ!」
とまぁ、この様にみんな目を血走らせ、我先に毒イノシシを買たがった。
「皆さん、落ち着いてください! ちゃんと売りますから」
みんなを宥めつつ、肉屋さんに頼んで、毒イノシシをさばいて貰い、みんなに売る。
「それで姉御、値段はいくらで?」
「そう言えば、値段なんて考えてなかったな」
おまけに基準 (物価) が分からないから値段をいくらに設定していいか分からない。
「じゃあ、キロ百マルクで」
「安い!?」
「十キロ売ってくれ!」
この値段設定に、客が押し掛け大混乱。
騒動だ!
その光景は、さながら昭和に起きたトイレットペーパー騒動並みの騒ぎとなってしまった。
そして毒イノシシの肉を売りつくすまで騒ぎは沈静化しなかった……。
◇
「ふぅ! やっと終わった」
一時間後、全ての肉が完売。
なお、手伝ってくれた肉屋さんには、お礼に毒イノシシのお肉を数キロタダであげた。
人が居なくなって、僕は一息つくが……。
「ちょっといいかな?」
「はい、なんでしょうか」
僕の前に一人の男性が現れる。
「壊したオラの大八車を弁償してくれねぇか」
「しまった!」
そうだった。毒イノシシを運ぶのに使った大八車を壊してしまったのだ。
「すいません。すぐにせ払います!」
幸い毒イノシシを撃ったお金があったので、大八車を弁償するのは (金銭的に) まったく問題なかった。
「新しい大八車が買えるぞぉ♪」
弁償代を支払うと、大八車の持ち主は、スキップしながら満足そうに帰って行った。
しかし、その問題が終わると……。
「佳さん、よかったら毒イノシシ食べてかない?」
コックさんが毒イノシシを食べさせてくれると言ってくれた。
「いいの?」
「はい。貴重な毒イノシシをあんなに安く売ってくれたし。あなたに一番に売ってくれた恩もありますしね」
忘れてたけど。そう言えば、そうだった。
「……じゃあ、ご馳走になろうかな」
その行為に甘えるのに、ちょっと迷ったけど。
結局ご馳走になることにした。
そして功君とマサ君と一緒に、毒イノシシを食べることに。
「しかし、あんな野獣を食うことなんてできるか?」
出された料理は、豚の角煮風の料理だったが、マサが尤もらしいことを言ってしまう。
「それに、毒は大丈夫なの?」
「それは大丈夫だ。ちゃんと除毒してあるって言ってた」
食べるのに不安がるマサに、佳君が大丈夫だと説明する。
「けど、モンスターの肉だぜ。んなもん食べれんのか?」
「それなら僕達が昨日食べた肉まんに使われていた肉も、モンスターの肉だから大丈夫だよ」
「えっぇえ!?」
佳君がサラッといった衝撃に事実に、俺は驚いた。
「あのオヤジ! 俺にあんなもん食わせたのか!!」
一方、マサは昨日食べた肉まんの肉が、モンスターの肉だったことに怒り心頭。
今にも肉まん屋のオヤジをぶん殴りに行きそうな状態だ。
「マサ君、落ち着いてよ! 肉まん屋の主人は、何も悪いことしてないんだよ」
怒れるマサを佳君は羽交い締めにして、宥める。
「だがな!」
けれどもマサの怒りは収まらない。
「マサ、佳君の言う通りだ! それがこの世界の常識何だ。ガマンしろ」
俺も佳君に味方して、マサを一喝した。
「わあったよ!」
マサは渋々納得した。
とは言え、俺も完全に納得しているわけではなく。
事実を聞いた瞬間、心の中では 「ウゲェ!」 と、気持ち悪く思った。
まあ、それはともかく。
俺達は毒イノシシの角煮を食べる事に。
「とんでもない旨さだ!?」
最初、食べるのに躊躇したが。食べてみると、その旨さにたまげた。
少なくとも俺が今まで食べた肉料理の中で一番旨かった。
この旨さで、皆が挙って毒イノシシの肉を欲しがったのか、理由がよく分かった。
などと考えながら俺達は毒イノシシの角煮で大勝利を祝い、楽しんだ。
しかし、この大勝利が原因で、自分達は強者だと上慢してしまう。
程なくしてその事実を知ることになるのだが。
この時に俺達は、そのことをまだ知らないのだった……。




