モンスター討伐クエスト 中編
互いに足の引っ張り合いの口論をしていた俺達だが。
その口論は意外な終息を迎える。
そのきっかけは……。
「おわー!? イノシシ!」
夢中で話し合ってる俺達の前に巨大なイノシシが突如として現れたのだ。
「功、どうすんの?」
「どうすんの? って言われても」
このイノシシ見るからに強そう。
しかも俺達とイノシシの距離は十メートルとなかった。
「ともかく逃げるぞ!」
「それが良さそうだな!」
「わかった。従うよ」
こんな状況では、この程度の策を思い付くのがやっと。
逃げ切れるか分からなかったが。俺達は全速力で走った。
しかし、逃げる俺達にイノシシが追いかけてくる。
「うええええええ!? なしてこうなる!」
「マサ、叫んでないで逃げろ!」
「わかってるって!」
俺達は必死に逃げ回るものの、徐々にイノシシが距離を詰めてくる。
「デカいくせに、なんて速いんだ!」
巨大イノシシの大きさは現実世界のイノシシの2~3倍はあろうかというビッグサイズ。
にもかかわらず、かなり素早い。
逃げ切れるだろうか?
「あ! 思い出した!」
佳君がいきなり何か思い出す。
「なんだよ!?」
「あのモンスターは、『毒イノシシ』だよ!」
「毒イノシシだと!?」
「なんじゃそりゃ!?」
「高額クエストの中にあったんだが。最高額のモンスター討伐クエストだったんだ」
「なにいいいいいいい!?」
正直聞きたくない情報だった。
正しい情報でも、好ましくない結果に繋がることもあるが。今の状況がそれだ。
「クソッ!」
このままでは追い付かれるのも時間の問題。
こうなったら覚悟を決めるしかない。
「みんな、聞いてくれ!」
「なんだよ功!」
「このまま逃げ回っていても、らちが明かない。だから毒イノシシと闘わないか?」
俺は息を切らしながら、咄嗟に他の二人に作戦を立案してみた。
「功、マジで言ってんのか!?」
マサはこの作戦に反対気味。
「一か八かばちやってみるか!」
一方、佳君はこの作戦に乗ってくれた。
「分かったよ!」
佳君が乗り気になってくれたお陰で、マサも (嫌そうではあったが) 作戦に参加してくれた。
「各自散開して、戦闘態勢に入れ!」
んで、三人別々の方向に散らばるが……。
「ギャアアアアアア! 俺に当たってしまったぁ!」
毒イノシシはバラバラに散らばった三人の中で、マサを標的に選んだ。
運の悪い奴。
「マサ、キミの犠牲は無駄にしないよ」
「勝手に俺を殺すな!」
ノリツッコミはともかく。俺はマサを追い回している毒イノシシの隙を見て、腹部を剣で貫こうと突っ込むが……。
「なにっ!?」
毒イノシシは俺に気づき、マサを追いかけるをやめ、防御態勢を取った。
そして剣を牙で受け止めた。
「ふぐぐっ!」
力で毒イノシシの牙をへし折ろうとしたが。毒イノシシの牙は頑丈で、簡単に破壊できない。
そのまま力比べになってしまうが。
「ドワアアアアアア!?」
力比べで、人間がイノシシに勝てる訳はもなく。俺は軽々とすくい投げられてしまう。
「ガハ!? ガハッ!」
吹っ飛ばされた俺は、そのまま地面に激突してしまう。
「こ……お!?」
一方その頃、マサは毒イノシシから解放されると、一目散に逃げだした。
逃げ足速いな……。
「このぉ!!」
なんとか俺は立ち上がるが、軽い脳震盪でよろけてしまう。
だが、敵に情けは無用と言う事か。毒イノシシは容赦なく俺に牙を剥く。
「おわああああああああああああ!?」
毒イノシシは俺を食べる気なのか、でかい口を開けて噛み付こうとしてくる。
だが、俺だって無抵抗のまま食われる気は毛ほどもない。
「こんのぉ!!」
剣を毒イノシシの口に押し込んで、必死に抵抗した。
「うぐぐっ!!」
しかし、毒イノシシのパワーを食い止めることができない。
じわじわと追い詰められていく。
「最早これまでか……」
全てを諦め、俺は毒イノシシに食われることを覚悟し、目を瞑るが……。
「功君! 今助けるよー!!」
「佳君!?」
目を開けると、逃げた佳君が早速と現れる。
薄情にさっさと逃げたマサと違って、佳君は俺を助けに、引き返してくれたのだ。
「佳君……」
ただ、それだけの事だが。俺の瞳に大粒の涙が一滴流れ落ちた。
「直ぐに助けるから、もう少し踏ん張って!」
「わかったよ佳君!」
「ハァアアアアアア!!」
佳君は戦斧に力を込めると、光の輪を描きながら一回転させた。
何をする気だ!?
「野〇列断!!」
そう叫ぶと、毒イノシシに戦斧を全力で振り下ろした。
「ブル〇ウラスか!!」
思わずツッコミを入れてしまったが。佳君の技は、毒イノシシの頭部に直撃。
強烈な一撃を食らった毒イノシシは悶え苦しむ。
「やったか? いかん! フラグ立ててしまった!!」
勢いで言ってはいけない事を言ってしまった。
この台詞を発してしまった場合、生存フラグが立ち、高確率で無意味な結果に終わる。
「どうしよう……」
額からダラダラと冷や汗が流れる。
これは今の発言で、佳君の必殺の一撃が無駄になってしまうからだ。
これにより、俺達の死亡フラグが立ってしまった。
俺は自分の言ってしまった事を激しく後悔した。
死を覚悟して、全てを諦めながら目を閉じた。
だが……。
「……あれ?」
死を覚悟して目を閉じたが、何か重たい物がドッテーンと倒れる様な音がした。
気になって恐る恐る目を開けてみると。
「!?」
毒イノシシが倒れていた。
「やったぞ功君! 毒イノシシを仕留めたぞ♪」
「信じられん……」
信じ難いことだが、毒イノシシは死んでいた。
「凄いよ、佳君!」
自分達の死亡フラグを回避したばかりか、敵の生存フラグを砕きやがった。
悔しいけど佳君、アンタは凄いよ。
心の底からそう思った。
なお、肝心の佳君はどうしているかというと……。
「照れるなぁ♪」
誉められ慣れてないのか、佳君は頬を人差し指でポリポリ掻きながら、体をくねくね。素直に照れていた(笑)
などと、俺と佳君が毒イノシシを倒した余韻を味わっていると……。
「いやぁ、皆の衆ご苦労だったな」
何処からともなくマサが調子良くやって来た。
「マサ、テメェ……」
だが、俺はそんなマサを鋭い目付きで睨み付けた。
「何かなぁ、功君。怖い顔して」
マサは俺の内なる怒りに気付いたのか、少しびびる。
しかしそんなのどうでもいい。
「マサ、よくも俺を置き去りにしてくれたな!!」
マサの軽薄っぷりに怒ってるんだ。
「誤解だ! 置き去りにするつもりはなかった」
「本当かぁ?」
「そんな目で見るなよ。俺は毒イノシシを倒すための加勢の人を呼びに……」
疑いの眼でマサをジロリと睨み付けると、尤もらしい言い訳を並べてくる。
「だから許してくれよ」
そう言うとマサは土下座した。
「……」
しかしイマイチ信用できず。
俺は無言でマサを見詰める。
「……」
そんな俺の顔色をマサは腕の隙間から、不安気に伺う。
正直、あんまり反省してる様に見えないな。
「功君。マサ君も反省してることだし。そろそろ許してあげたら?」
マサを可哀想に思ったのだろうか。佳君が助け舟を出した。
「そうだぞ功。許してくれよ」
マサのヤローは助け船が出された途端に付け上がる。
自分に味方してくれる者が現れると調子づく奴もいるが。マサもその口だった。
「お前が言うな!」
どうにも俺は佳君みたいにはスッキリしてないようだ。
しかし、いつまでも仲間を許さないも重苦しい。蟠りも残るだろう。
「……まあいい。許すよ」
だから俺はマサを許してあげることにした。
「サンキュー」
軽いテンションでマサは俺にお礼を言う。
これだからマサのこと信用できないんだよなぁ。




