モンスター討伐クエスト 前編
屋台で朝食を食べ終わると、俺達はギルドに向かった。
目的はモンスター討伐のクエストを受けるためだ。
それと言うのも、朝食を食べてる時に佳君が「このまま生活したのでは、生活費がなくなる」と、言い出したのが事の始まり。
事実、その通り。もしも金がなくなったら、俺達は路頭に迷う事になる。
そんなのは嫌だ。
そこで、この手のゲームお決まりの金稼ぎ (討伐クエスト) を受ける流れになった訳。
「どれにしようか?」
「そうだな……」
ギルドの掲示板を見るが、掲示板にはいろいろなクエストがあり、目移りしてしまう。
「これなんてどう?」
迷う中、佳君が一つのクエスト用紙を指差す。
「どれどれ」
佳君の選ぼうとしたクエストは、『食用鹿』を五匹捕らえるというもの。
なお、受付のお姉さんの説明によると、食用鹿はおとなしいモンスターで、初心者でも比較的簡単に倒せるとのこと。
「よし! じゃあ、鹿狩りといくか!」
「おう!」
「初めての戦闘だね♪」
かくして俺達は食用鹿討伐クエストを受けた。
また、それと同時に信君と音尾の捜索依頼 (クエスト) も出しておく。
ギルドは便利なもの。依頼を受けるだけでなく、依頼する事もできるのだ。
最近のゲームは進んでるなぁ。
で、依頼の手続きを終えると、俺達はモンスターの出現する『桜の森』に向かう。
◇
「ここか?」
「そうらしい」
ある事1時間半。俺達は街から数キロ程離れた、モンスターが出現する桜の森に到着した。
「美しい森だなぁ」
「確かに」
桜の森はその名の通り、桜の花が咲き乱れており艶やか。知らずのうちに、三人揃って口をポカン開けて見とれてしまっていた。
「佳君、この森はいつでも桜が咲いてるのか?」
「受付のお姉さんは、そう言ってた」
「じゃあ、枯れない桜だな。願いの叶う桜ねぇかな?」
それでは初〇島である。
「桜の事より、お前達は戦闘で使う武器はあるのか?」
俺達はロールプレイングゲームの世界に召喚されたのに、どういう訳か武器や防具の類いが装備されていない。
考えてみると可笑しな話だが。装備されてないのだからどうしようもない。
どうしよう……。
「武器ならあるよ」
「へ?」
俺が困って、どうしようか悩んでいると、佳君が武器があると言い出す。
「でも佳君、武器なんてどこにもないぞ」
などと言いつつマサは佳君の体を見回すが、体のどこを見ても武器らしいものはない。
口から出任せでも言ったのかと少し疑ったが。佳君の顔は嘘を言っているようには見えない。
「じゃあ、武器を見せてくれよ」
「あぁ、いいよ」
そう言うと佳君は右手を前に突き出す。そうすると手が発光し出した。
光りは手のひらに集まり、収縮するかのように武器の形を形成していく。
それは手品師が帽子の中から鳩や旗を出す手品に似ていた。
「すげぇ!?」
思わず心の中で思ったことが、ポロリと口から出てしまう。
それだけ俺には神秘的で驚きに満ちたものだった。
「これが僕の武器だよ」
光りが消えると、佳君の右手には銅の戦斧が握られていた。
数秒程度の僅かな時間だが、俺には神秘的な光景を数十分眺めていたかのような気持ちなっていた。
それを例えるならば『正月の初日の出』を直に見るような感じだ。
あれは直接見た人にしか分からない感動がある。
などと考えながら、俺は一人でジーンと感動に浸っていた。
「ねぇ、佳君。どうやって武器を出したの?」
感動してる俺を他所に、マサは佳君に武器を出す方法を質問している。
これは手品のタネを知りたがる鑑賞者に似ている。
なお、手品のタネを知りたがるタイプは日本人に多いらしい。
「武器の出し方なんて簡単さ。だって、頭の中で武器を思い浮かべたらいいだけだもん」
「マジかよ!?」
「そんな簡単なことでいいのか!?」
「うん、そうだよ」
佳君こくりと頷く。
「マジかよ……」
「信じられん……」
あまりに簡単な方法に、俺とマサは拍子抜け。
「そもそも佳君は、どうやってこの方法を知ったん?」
「功君が気絶している時に、暇だったからあれこれ調べてみたら発見したの」
「あの時か」
「で、そのと後に功君が意識を取り戻すまで膝枕してあげたの」
「お前ら二人でそんな事してたのか!?」
佳君の言った事に事マサが過剰に反応。
まあ、美少女に膝枕してもらうのは男の夢の一つだが……。
「……マサ、とりあえず俺達も武器を出してみるか」
「あぁ、そうだったな」
んで、俺とマサは佳君に教わったように、気合を入れて武器を出してみる。
「はあああああああああああ!」
「功君、別に力まなくてもいいよ」
と、佳君は言うが。こういう事する時はつい力んでしまう。
やっぱり大好きなマンガやアニメのイメージが、頭に染み込んだ影響だろうか?
だとしたら、俺毒されてるな。
まあ、なんと言われても好きな物は好きなんだからしょうがないよな。
とかなんとか想像しながら、武器を想像。
「……本当にできちゃったな」
佳君が武器を出す工程の一部始終を見ていたが。
いざ自分がやるとなると、本当にこれで大丈夫だろうかと自信がなかったが。
呆気ないぐらい簡単にできた。
百聞は一見に如かずとは言え、これにはビックリ。
「♪~♪~」
ビックリしたが、自分の武器を出せたことに俺は思わずルンルン気分になってしまう。
ことが上手くいくのは気分が良い。
「しかし、功君。変わった武器を選んだね」
「いいだろ。俺のオリジナル武器さ♪」
ちなみに俺の武器は『やすり剣』というオリジナルの武器。
この武器は、プラモデル用のやすりをロングソード並のサイズにした物で、剣とノコギリを組め合わせた様な武器だ。
無論、現実世界には存在しない俺のオリジナル。
ちょっとかっこいいだろ♪
「ゲーム画面では大雑把にしか分からなかったが。実物は予想以上の出来だ♪」
なんて、自分のデザインセンスに惚れ惚れ。にやけてしまう。
「おい、佳君! 武器を想像したが、出てこないぞ」
一方、マサは俺と違い何故か武器が出ないと、ぷりぷり怒っている。
どうなっているんだ?
「おい! 佳君、何故に出ない!」
自動販売機にお金を入れたのに、商品が出てこないと言う客の如く、マサは佳君を問い詰め中。
これじゃあクレーマーだな。
「……マサ君。ちょっと聞きたいんだけど」
「なんだ? 言ってみろ」
「マサ君はいったいどんな武器を想像したの?」
「無双セイ〇ー」
「あー。それが原因だ」
「それどういうこと?」
マサは内容を理解できず、頭の上からクエッションマークが出現。
「出すことのできる武器は、持っている武器だけなんだ」
「だから出てこなかったんか?」
「そういうこと」
「んじゃ、もう一回」
失敗の原因が分かると、マサは想像をやり直す。
「おー! 出た出た!」
今度は無事成功。
しかし、マサが出した武器は、なんだかよく分からない木の棒だった。
「マサ、なんだよその武器?」
「功、カリ棒のことを知らんのか?」
「知らん」
「功は頭悪いからなぁ」
マサは俺を見下す様にドヤ顔で接してくる。
頭悪いのは事実だが、ムカつく。
「それはともかく。カリ棒の事を教えてくれよ」
「しょうがねぇなぁ。教えてやるか」
んで、教えてもらうが。
マサの説明は余計な話が多くて、肝心のカリ棒の説明は少なかった。
とは言え、一応教えてもらったカリ棒について説明しますと。
カリ棒は樫の木で作られた武器で、嘗てフィリピンの原住民が敵の侵略を阻止するために使用した、伝統的な武器。
武器特徴としては、カリ棒は短くて軽いから扱いやすく、スピードある攻撃を連続して仕掛けることができる。
そう。カリ棒の長所は、スピードと扱いやすさだ。
しかし攻撃範囲が狭く。一撃で相手を倒す程のパワーは無い。
はっきり言って、扱いやすい初心者用の武器と言えるだろう。
「どうだ、分ったか?」
「だいたいわかった」
自慢気なマサに、俺は低いテンションで頷く。
「いい武器だろぅ♪」
マサはカリ棒を天に掲げて、得意げてな様子。調子によりやすい奴である。
「まあな。でも、ちょっと地味じゃないか?」
「なに!?」
俺の言ったことに、マサはなぜかオーバーアクション気味に驚き顔。
「それに、魔法少女なのに、なんでカリ棒を選んだの?」
更に佳君も話に絡んでくる。
確かに、カリ棒を使う魔法少女なんて見たことない。
佳君が疑問に思った様に、カリ棒を武器として使う魔法少女なんて、普通いない。
少なくとも俺の知る限り、魔法少女は大抵杖を武器にしている。
だからマサのチョイスは、かなり風変り。
しかし、マサの言い分は。
「コレは堅実な武器と非現実的な魔法少女を組み合わせた、ハイブリットなんだぞ!」
などと、訳の分からん理屈を言う。
言いたい事は分からんが。凄く自信満々だな。
「カリ棒がいい武器なのはい分かった。だけど、俺達の武器で一番は俺のやすり剣だがな!」
だが、ここだけは譲れない。
言うべきところはしっかりしておく。
「なんだと!」
「それいったら、僕の武器だって!」
結果、三人揃って自分の武器が一番だと、口論になってしまう。
揃いも揃って自己顕示欲の強い奴ばかり。
その後、互いに譲り合わず、一時間あまり口論が絶えなかった……。




