体が女になったからといって内面も女みたいになるわけじゃないから、女の裸見ると興奮する(自分も例外ではない)
さて、食事を終えたら、なんで風呂屋に行くかと言うと。
それは、佳君が服を洗いたいと言ったからだ。
本人が言うには『ぶっかかった甘酒がべたついて気持ち悪い』とのこと。
てな訳で、俺達は街中を歩き回り、風呂屋を探していた。
「しかし、この街に風呂屋なんてあるのか?」
「分からん」
なにせ街の雰囲気は十九世紀頃の中国そのもの。
そんなんだから都合よく日本の銭湯みたいなもんがある訳が……。
「あった!」
あったりした。
「しかし、ここだけ中国っぽくねぇな」
「確かに」
どういう訳か、その風呂屋は『昭和時代の日本の銭湯』のようだった。
「街の雰囲気ぶち壊しだな……」なら、
それを例えるなら、『古き良き日本の街』に『ヨーロッパ風の豪華な宮殿』があるようなもの。
なので、俺達は銭湯に入るのに少し躊躇した。
だからといって、グズグズしていても何も始まらないので、俺達は風呂屋に入る。
「うーむ……」
風呂屋の中は外観と同じく、昭和時代の銭湯風。
但し、全部が昭和時代の銭湯という訳ではない。
何故か現代のコインランドリーがあったりと、よく分からない時代設定になっている。
異様な違和感で、突っ立ったまま頭がモヤモヤさせてると。
「これで服が洗濯できる」
俺が一人で戸惑っていると、佳君が上着を脱いで、洗濯機の中に入れる。
ちなみに下着の色は青。
「おわっ!」
動揺して変な声を上げてしまった。
中身男だと分かっていても。美少女が上着を脱ぐ仕草にドキッとしてしまう。
幸い汚れてたのは上着だけ。下着まで汚れはしみてなかった。
もし佳君が全部脱いでいたら、俺は鼻血ブー間違いなし。
だからちょっと安心。
「なぁ、せっかく銭湯に来たんだから、風呂入らない?」
退屈からか、マサがあくびしながら提案を出してきた。
「おっ! いいな」
「どうせ洗濯が終わるまで暇だから入りますか」
マサの提案は悪くなかったので、俺達は風呂に入って行く事に。
んで、料金の三百マルクを払って、脱衣所に入ったが……。
「おい! 早く脱げよ」
「マサ君こそ早く脱いでよ!」
体が女なので、裸になるのに躊躇う。
ギャアギャア騒いでしまったが、脱衣所には俺達三人しか居なかったので、これといって問題にならなかった。
「……」
「うーん……」
「むむっ……」
三人共互いを見つめ合って、膠着状態になってしまった。
これは小学生の修学旅行の風呂の時に、生えてるか生えてないかの瀬戸際で脱衣所でパンツが脱げなくなってしまう感覚に似ていた。
なので、服が脱げないばかりか言葉も詰まり、沈黙の時間が始まる。
女湯の暖簾を潜るまで何とも感じなかったのに、なぜだろう?
「……えーい! じれったい!」
約3分膠着状態が続いたが。
いい加減焦れったくなって、俺は脱ぐ覚悟を決める。
「オリャア!!」
そして勢いよく服を脱ぐ。
この時自分の体を見ない様に、正面を見る様に注意したが。
「あ!」
自分の正面に鏡があったのを忘れていた……。
「ブーーーーーー!!」
鏡に映った自分の裸を見て鼻血ブー。
「バタンキュウ!」
そのまま勢い良く倒れてしまった。
失神だ!
◇
「……うーん」
その後、俺はすぐに意識を取り戻した。なんだけどさっ
気が付くと体の上にバスタオルが被せられてる。
しかし。
「功情けねえな」
マサに俺が女慣れしてない事を露骨に指摘されてしまう。
「面目無い」
情けなくてマサと佳君に顔を合わせる事ができない。
「まあ、女慣れしてる俺なら平気なんだけどさっ!」
などと、マサは自慢気に行っているが……。
「あれ!?」
マサの顔を見てみると、鼻から鼻血が垂れている。
多分俺の裸見たんだろう。
口では強気な事言っても、所詮はうわべだけの言葉。
顔を見ればマサの言ってる言葉なんて、言葉数が多いだけで、中身の詰まってない薄っぺらな言葉だと分かる。
確信した。マサは童貞だと。
「だいたい功は女というものを知らな過ぎで……」
確信が持てるとマサの言ってる事も苦に感じなくなる。
まあ、それでもマサはドヤ顔で自慢気に話し続けてたが……。
「マサ君いい加減にしなよ。功君が困ってるよ」
自慢話をやめないマサを佳君が注意した。
佳君の口調は落ち着いていて、意外と女慣れしているかもしれない。
「佳君、お前だって功と同じで、鼻血ブーしてるじゃねぇか」
前言撤回。佳君も女慣れしてない。
体が女になったからといって内面も女みたいになるわけじゃないから、女の裸見ると興奮してしまうのは、思春期男子の習性に抗えないわけで。
俺達は目の前の風呂に入れずに立ち往生してた。




