第二四話 答え
試験期間が終わった。
高校生というのは不思議だ。
試験前は必死になるくせに、終わった瞬間すべてを忘れる。
教室はいつもの騒がしさを取り戻していた。
女子グループがひよりへ謝ったさらに翌日。
少なくとも表面上は、目立った変化は無かった。
だが、咲良には分かった。
ひよりが考えている。
ずっと、何かを。
昼休み。
窓際の席。
ひよりはぼんやりと外を見ていた。
いつもなら咲良や誰かと話している時間だ。
だが今日は違う。
放課後、帰り支度をしている時だった。
「悠真」
ひよりが呼び止めた。
悠真が振り返る。
「どうした?」
ひよりは少し迷った。
見ているだけで分かる。
迷っている。
怖がっている。
それでも、逃げてはいなかった。
「話したいことがあるの」
その言葉だけで十分だった。
咲良は視線を逸らす。
今度は付いて行かなかった。
二度もやれば癖になる。
そこまで野暮ではない。
最近の若いやつは分からん。
だが、今回は二人の問題だ。
そのまま帰宅する。ひよりのことを考えながら眠りに就いた。
翌日、朝登校する。
教室へ入る。
そして。
「……」
何となく分かった。
空気が違った。
ひよりがいる。
悠真もいる。
二人とも普通だった。
だが、普通すぎた。
ここ数日のぎくしゃくした感じはなくなっていた。
二人の目が合う。
笑いあう。
お互い目を逸らさない。
「あ」
ひよりが咲良に気付いた。
「おはよう」
機嫌が良い。
分かりやすかった。
悠真も妙に機嫌が良い。
ただ、咲良と目が合うと、露骨に視線を逸らした。
あまりにも分かりやすい。
「何かあったのか」
結果は分かっている。
苦笑しながら、聞いてみる。
二人は固まった。
そして顔を赤らめながら見合わせる。
「別に」
「特に」
分かりやすい。
咲良は確信した。
何かあったな。
昼休み。
やはり二人は独特の空気を醸していた。
正直、今日はその間に入る勇気はなかった。
文化祭が終わってからつるむようになった、例のオタクと昼食を食べた。
オタクが昼食を食べながら言う。
「付き合ったんじゃないですか」
「そうだろうな」
「たぶんそうですよ」
「そうだな」
咲良は少し考える。
昨日、ひよりが呼び止めた。
今日、二人は妙に機嫌が良い。
明らかに関係に変化があっただろう。
ただ、報告は二人の口から直接聞きたかった。
放課後。
帰ろうとした時、呼び止められた。
「咲良ちゃん」
ひよりだった。
少し照れた顔をしている。
「何だ」
しばらく迷ってから、ひよりは言った。
「私」
一度息を吸う。
「昨日、悠真に告白したんです」
やはりそうか。
咲良は頷く。
「そうか」
ひよりは少し笑った。
そして。
「付き合うことになりました」
ようやく言えたらしい。
心の底から、嬉しそうだった。
咲良は少しだけ安心する。
文化祭の日。
泣いていた。
苦しそうだった。
あの日から、ずっと気になっていた。
だから。
「良かったな」
自然に言葉が出た。
ひよりは目を丸くする。
そして。
「はい!」
今度は本当に笑った。
それだけだった。
だが、それで十分だった。
最近の若いやつは分からん。
だが。
幸せそうだから。
たぶん。
それで良いのだろう。




