61.毎朝この潮汁が飲みたい……!!
「毎朝この潮汁が飲みたい……!!」
「ははは、毎日ではさすがに飽きるぞ」
「ほ、ほんとに、おいしい……」
「ねぇ」
毎朝どころか毎食だって絶対飽きない、と思いながら潮汁を啜っている蘭華に、紫雲が非常に不服そうな顔で話しかける。
「何でソイツ来てんの」
「え?」
紫雲の視線を追って、隣でちょこちょこと焼き魚を突っついている晴暁に目を向けた。
何でいるのかと問われると――
「何でですか?」
「こ、この前、出産した、子が。やっと落ち着いて、もう大丈夫、みたいだから。冬の宮様にお礼が、したくて」
蘭華は先日の、夏の宮での幽霊騒動の時のことを思い出した。
そういえばどこからか現れた冬の宮が手を貸してくれて――そのあときちんと礼を言う間もなく、いつのまにやら姿を消していたのだ。
「それで、蘭華ちゃんに、一緒に来てもらえないかな、って」
「いいですよ」
晴暁の言葉に、蘭華は首を縦に振る。
冬の宮が何故あんなに手慣れていたのか、蘭華も気になっていたのだ。
四季の宮は結局、冬の宮以外は全員男だった。もしかして冬の宮も――なんて。
流石にあのお産の一件を見る限りでは、その線は薄そうだ。どう見ても私と年の変わらない少女にしか見えなかったし。
あれで男性だったらこの世の理が壊れてしまう気がするし。
というか四人中三人が男という時点でどう考えてもおかしいのだが、蘭華は少々この状況に毒されていた。
「何でコイツに頼むわけ」
「と、友達、だから……?」
「志勇、一緒に行ってやったら」
「何だ!? どこに行くんだ、晴暁殿!!」
「む、無理……」
何も分からないまま元気よく返事をした志勇に、晴暁がふるふると首を横に振る。
完全に怯えて縮こまっていた。
「陽の者、すぎる……陰の者には、荷が重いよ……」
「陰陽道の話か!? 俺も四課三伝くらいは知っているぞ!!」
「ひぃ……」
晴暁は志勇の声の圧だけですっかり小さくなって、蘭華の背に隠れてしまう。
そして涙目で蘭華の顔をじっと見つめた。
「ぼ、ボクには、蘭華ちゃんしかいない、よ……ダメ……?」
「いえ私は別に」
蘭華はそもそも別に断っていないので、ダメも何もという感覚だ。
二人の様子を見て、紫雲がますます不満そうに鼻を鳴らす。
「オレも行く」
「え?」
「アンタたち二人じゃ不安だから」
「燕星さんも来ますよ?」
「あの人アンタのこと甘やかすから」
紫雲の言葉に、蘭華がぱちぱちと目を瞬く。
甘やかす?
子ども扱いはされている、ような気はする。無茶ぶりにも付き合ってくれている、ような気はする。
でもそれは蘭華がどうこうではなく、兄さんに弱みをガッツリ握られているのと――燕星にも引けない事情があるからだ。
甘やかす、と言うのとは違うのではと、燕星の顔を見上げた。
「甘やかされてます? 私」
「もう勝手にしろと思っている」
「放し飼いなだけみたいです」
「ちゃんと繋いどいて」
紫雲が呆れたようにまたため息をついた。




