59.陰陽師の認識それでいいんです?
世間はお盆休み! ということで、今週は突発ですが毎日更新とさせていただこうと思います。
ストックができて更新時間も落ち着いてきたので何とかいける見込みです。
お盆休みの方もお盆休みとか関係ない方も、この機会にご覧いただければ幸いです! どうぞよろしくお願いします!
「と、いうわけで。なくなったものを一覧にしたのがこちら」
「着物まで? 結構大物までなくなってるじゃん」
一覧を見て、紫雲が眉根を寄せた。
そう言いたくなるのも納得の品数で、おそらくそれぞれ管轄する妃が違うことから、こんなに大量のものがなくなっているとは誰も気づいていなかったのだろう。
広間に集められた妃たちも、先ほどよりも顔色が悪いように見受けられる。
じろりと妃を睨み、紫雲が言う。
「何で報告しないわけ」
「も、申し訳ございません!」
「春の宮様が怖いからでしょ~」
蘭華がそう言うと、着物の裾で見えないところで思い切り足を踏まれた。
思わず蘭華がぎゃんと悲鳴を上げるが、紫雲は素知らぬ顔をしている。 そういうところが怖いのである。
気を取り直して、蘭華も改めて一覧に目を落とす。ふむ、と小さくつぶやいた。
「衣類は制服になってから取り違えが起きやすくなってるし、それで気づくのが遅れた感じかな」
「はい、そうなんです……取り違えがあってもたいてい二、三日で戻ってくるので、今回もそうかと思ってしまって」
「んー、櫛とかは……」
蘭華が部屋の中を見回す。
ふと文机の横に冊子が積まれているのに気が付いた。十年くらい前に宮中で大流行した日記モノの写本である。その冊子の価格が――いやに、高い。
それに目をつけた蘭華は冊子を持ち上げて、ばさばさと振ってみた。
こん、と音がして、櫛が床に滑り落ちる。
「……あ」
「あ!」
妃がさっと櫛を拾い上げた。
そして恥ずかしそうに気まずそうに、蘭華から視線を反らした。
「も、申し訳ございません、まさかこんなに近くに」
「分かる、読んでる途中で声掛けられたりすると、手近なもの挟んだりしちゃうよね~」
「……でも、この物語、最近読んだかしら……」
妃は不思議そうに首を捻っていたが、とりあえずこれで一つ見つかったわけだ。
他の物も案外思いもよらないところから出てきたりする、のかもしれない。
さて次は、と一覧を手に部屋の中を見回す蘭華の手元を、晴暁が覗き込む。
ちらりと紙を見た後で、すぐ隣の蘭華に微笑みかけた。
「す、すごい、ね。蘭華ちゃん。陰陽師、みたい」
「陰陽師の認識それでいいんです?」
「ボクも、ええと」
晴暁が懐から何かを取り出した。真ん中に台座のようなものが乗った、正方形の板だ。
「式盤、持ってきた、から――これで」
くるりと上の台座を回す。その後も何かしらを確認しながらくるくると台座を動かして、その目盛りを読み取っている。蘭華にはチンプンカンプンだったが、晴暁には何かが分かったらしい。
すっくと立ち上がると、廊下に向かって歩き出した。
「手鏡、は……こっち」
からり、と引き戸を開ける。
そこは季節外れの衣服がしまわれている、いわば押入れのような部屋だった。
広げて掛けられている冬用の礼服の足元に、手鏡がコロンと転がっている。
それに目を留めて、後ろをついてきていた妃が「えっ」と声を上げた。
「どうしてこんなところに……」
その驚きも頷ける。季節は多少秋めいてきたとはいえ、まだ晩夏。まだまだ冬物の衣服には用がないし、冬物をしまったのだってずいぶん前だろう。ここに手鏡を持って出入りする理由などないはずだ。
式盤をしまおうとしていた晴暁が、何かに気づいた様子ではっと顔を上げる。
そして一緒にいた蘭華と紫雲、妃たちと燕星の顔を見回して、口を開く。
「ね、ねぇ、あの」
戸惑った様子で、晴暁が手を上げた。
そして、蘭華の背後を指さす。
「あの人、だあれ?」
「え」
振り返るが、そこには誰もいない。
夏の宮での出来事を思い出して、蘭華の顔がさーっと青ざめる。
「ま、待ってください晴暁さん! それ生きてる!? 生きてる人ですよね!?」
「ちょっとやめなさいよ本当に!! オレお化けダメなんだから!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ蘭華と紫雲。
その二人の顔を晴暁が戸惑ったように見比べて――曖昧に微笑んだ。
否定も肯定もしなかった。




