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偽物帝の後宮暮らし ~暗殺寸前の帝の影武者になったので、ついでだから後宮改革してみます~  作者: 岡崎マサムネ


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47.帝様だ~れだ! あ、余だ~☆

 困惑も視線もまるっと無視して、蘭華が続ける。


「おや? 大陸で大流行りの帝様げえむ、ご存じない?」


 にこりと笑って当たり前のように言いきる蘭華。知っていて当然と言わんばかりの口調に、誰も「知らない」とは言い出せなかった。


 蘭華が初めて後宮を訪れた時と同じである。帝じゃないだろうとうすうす勘づきながらも、誰も本人に向かって「帝じゃないだろう」とは言えない。

 皆うすうす「知らない」と思いながらも、それを蘭華にきっぱりと告げることが出来ないのだ。これが権力というものである。


「一応説明すると~、くじを引いて、当たりのくじを引いた人が『帝様』! 帝様は他の人に命令できるって遊び! あたり以外のくじには番号が書いてあるから、番号を使って指示するんだ。だから番号は他の人に見せちゃダメだよ!」


 説明をして、ぱんぱんと手を叩く。

 燕星が事前に蘭華に渡されたくじをお椀に入れたものを持ってきた。

 紙を四つ折りにしたくじが人数分入っている。その中から、蘭華が一つを摘まみだした。


「さ、みんなも引いて引いて~!」


 そう促されて、妃も官吏も回ってくる椀からくじを選んでいく。

 行きわたったところで、空の椀を燕星が回収した。


「それじゃ、開けるよ~! 帝様だ~れだ! あ、余だ~☆」


 紙を開いて、蘭華が言う。

 その紙には確かに朱で「あたり」と書いてあった。

 燕星がその紙を回収する。

 蘭華はうきうきと楽しそうな声で、言った。


「じゃあ~、五番と七番、十秒間手を繋ぐこと!」

「ええっ!?」


 指定されたくじを引いた男女が声を上げる。

 うまく男女の組み合わせになるものだな、と燕星は感心した。男同士では目も当てられない。


 そっと隣同士に移動した男女が、手を繋ぐ。

 皆で手拍子に合わせて、一から十まで数を数える。

 だんだんと赤くなっていく二人の頬。

 上機嫌で最後の方などもったいぶってわざとゆっくり数字を数える藍花。


 燕星は思った。何だこれ。何が楽しいんだこの遊び。


 やっと十まで数え終わって、燕星が皆からくじを回収して回る。そして次にまた蘭華から順にくじを配って、蘭華の合図で紙を広げた。


「帝様だ~れだ! あっれ~? また余だ~! やっぱ本物の帝だからかな~そういう星の元に生まれちゃったりしてるのかな~??」


 蘭華がてへへと舌を出す。

 本物も何も偽物以外の何物でもないのだが、誰もそれを口にはしない。

 二回連続、そんなこともある――のだろうか。


「じゃあ、一番と三番が~、お互いのいいと思うところを一つずつ言うこと!」


 またも蘭華が命令する。

 恥ずかしそうにおずおずと、指名された番号の二人が歩み出た。


 その組み合わせに、燕星は「ん」と引っ掛かる。

 この二人、先ほどの歌合わせの時も同じ組み合わせではなかったか。


 選ばれた二人が互いに「髪がきれい」だの「歌がお上手」だのと褒め合う。

 蘭華が「ひゅーひゅー!」とはやし立てた。二人が頬を染めて俯く。


 何だこれは、と燕星は眉間の皺を深くした。

 何だ。俺は一体、何に付き合わされているんだ。


 次の当たりくじを蘭華が引き当てたところで、燕星は悟った。こいつ、何か仕込んでいる、と。


「十二番と九番、膝枕!」


 そこからも、蘭華は雰囲気のよさげな二人をくっつけるような命令を繰り返した。

 そして最後に、皆を見渡してにっこりと笑う。


「いや~、楽しかった。余のために妃がたくさん入内してくれたのは嬉しいんだけど。でもそのせいでね、若い人たちの出会いの場を奪っちゃったんじゃないかなって心配でさ。それでこういう場を作ってみたんだけど」


 杓で口元を隠しながら、当たりくじを指でつまみ上げる。

 ちらちらと視線を交わし合う男女を視界の端で捉えながら、蘭華は満足そうに頷いた。


「やっぱ民草あっての余、成婚料あっての余、みたいな? それにはさ、若くて優秀な男女が貴族としてよりよい政治をしてくれる方が助かるわけで。だからもし、もしも今日……何か愛が生まれちゃったりしたら、遠慮なく教えてね!」



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