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偽物帝の後宮暮らし ~暗殺寸前の帝の影武者になったので、ついでだから後宮改革してみます~  作者: 岡崎マサムネ


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46.例の「元気になると激痛が走るアレ」

「じゃっ、今日は無礼講ということで、皆楽しんでいってね~!」


 射礼の儀から、半月後。

 蘭華は月の御殿に妃と男たちを集めて、そう宣言した。


 射礼の儀で騒ぎが起きてしまったことで乱れた妃たちの心を慰めたいと帝――蘭華が提案し、異例の宴が開かれることになった。

 それは帝の御前に妃たちと官吏たちを集めた会合で、主に食事と歌合を楽しむものだと説明された。


 繊細な貴族の娘である妃たちは、祭事で矢が飛んでくるなどという恐ろしい事態にたいそう怯えており、もう後宮にいること自体がそのときのことをまざまざと思い出してしまって心が蝕まれる状況。

 その心理的負担を少しでも軽くできるのなら、身元のしっかりした男たちに妃を下賜したい。長い目で見れば妃にとっても国にとっても得になる。

 もちろん妃と相手の男が双方望んだ場合のことで、無理強いをするものではない。


 とかなんとか、そんなことをつらつら認めた文を宮中のお偉いさん方に送り付けたのである。もちろん帝本人の了承も取り付けて花押ももらった。

 こうなるともはや正真正銘の勅命である。

 異例のことではあったが、認められない道理はなかった。


 なお、男性陣は後宮に入るための条件として、全員例の「元気になると激痛が走るアレ」を装着させられていることは言うまでもない。


 蘭華が依頼の文を認めるさまを眼前で見ていた燕星は信じられないようなものを見る目をしていた。


 筆先から生み出されるのは妃を慮る慈愛に満ちた言葉ばかりなのに、蘭華本人はどうやって男女をくっつけるかの悪だくみに大忙しの顔をしていたからだ。

 その顔には妃に対する配慮は微塵もない。ただただ後宮の人員削減にまっしぐらであった。どうやったらそこまで嘘八百を並べられるのかと、驚愕を通り越して呆れていた。


 命を狙われたばかりで後宮に男を入れるなど、と反対の声が出るのを期待していたが、「身の危険があったのに自分の身ではなく妃への思いやりを重視するなんてなんたる賢帝!」と評判が上がっていたのにも燕星は辟易した。


 ほぼ合コンのような形で集められたものの、蘭華の胸中など知らない妃と男たちは、御簾越しの帝に緊張した様子で膳を前にかちこちになって座っている。

 空気を軽くするように、蘭華が明るい声音で手を合わせた。


「ほらほら食べよ! いただきま~す!」


 蘭華がそう宣言して、食事に手を付けた。

 食事は秋の宮に頼んで手配した。そのあまりのうまさに、月の御殿全体に張り詰めていた緊張があっという間に解けていく。

 ぽつりぽつりと会話も生まれ、和やかな雰囲気に蘭華も満足げに頷いていた。


 食事を終えたところで、歌合に興じることになった。


「ほらほら。君たちも官吏なら和歌、できるよね? お題は――そうだな~、恋の歌で☆」


 そう蘭華がけしかけて、男たちが恋の歌を順に詠んでいく。それに対して、妃たちには返歌を求めた。

 もちろん、順番は蘭華が仕組んでいる。ここの二人がくっつくだろうと蘭華が見込んだ者同士を組み合わせるように、それでいて偶然性を装って。


「君がため、通う恋路に、遅れ居て――妹背の山は、並び居るかも」

「麻衣――触れ合う袖は、惜しかれど。人の結ばむ我が身なりけり」


 和歌が得意な者もいれば苦手な者もいる。巧みな歌にほうと恍惚のため息が漏れるのももちろんだが、苦手な者がしどろもどろで詠む歌というのも可愛らしく、場を和ませた。

 宴もたけなわ、一通り歌合が終わったところで、蘭華がぱちんと手を叩く。


「じゃあ次は~! 帝様げえむ~!」


 ぱちぱちぱち~と手を叩く蘭華。

 妃と官吏たちに小さなざわめきが広がる。

 蘭華の背後に立つ燕星も「何だそれ」と言う顔で蘭華を見ていた。


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