22.余の懐に仲介手数料がガッポガッポ
蘭華の言葉に、妃たちが顔を見合わせる。
それを横目に、燕星が女官たちに指示をして指名されていない妃たちを広間から退出させた。
残った妃たちにどよめきが広がる。
そのどよめきが落ち着いたのを見計らって、蘭華は続ける。
「楽団って需要あるからさ~。寺社仏閣、それから地方貴族の屋敷。うまくいけば大陸進出だって狙えちゃうよ~」
「大陸……」
何人かの妃が興味深そうな視線を蘭華に向けた。
この国は近隣に連なる島国と大陸とのちょうど中間に位置しており、昨今は両方の国の文化があれよあれよと流れ込んできている。
特に大陸から入ってくるものはどれも豪華絢爛で、この国の文化芸術の祖となったものも多くある。彼女たちが学んだ雅楽もその一つだし、漢籍など最たるもの。
後宮の建築だってもともとは大陸を参考に、島国からやってきた腕のいい職人が建てたものだ。
大陸、異国。教養のある子女の心をくすぐる言葉であることは間違いない。
蘭華は微笑みを浮かべたままで、袖口からそろばんを取り出した。
「一回の演奏会を……これぐらいに設定して……それを一日二公演、一か所で二日公演を基本として」
「えっ」
「そうすると一人当たりの取り分は、――余の伝手のあるところを回るだけでもこれこのとおり」
「こ、こんなに!?」
「後宮のお手当より多い……」
ざわざわと囁き合う声が広がっていく。
蘭華はそれをうんうんと満足そうに頷いて見回していた。
なお、妃の皆様には楽団の派遣に当たり仲介手数料をそれなりに頂戴した後の金額をお見せしていることは秘密である。
マージンを差し引いても満足のいく金額を渡しておけば問題にはならないだろうと踏んでいた。
「で、ですが、帝……わたくしたちは帝の耳を楽しませるために鍛錬を」
だん!
床を勢いよく踏みしめて、蘭華が突如として立ち上がった。
そしてまだ迷っている様子の妃の肩にそっと手を置いて、その瞳をまっすぐに、真剣に見つめる。
「これだけの腕前を余だけが独占するなんてもったいない! みんなはもっと広く世界に羽ばたくべき逸材なんだ!!」
「!!」
「みんなだってそうだよね? 神が与え、努力で磨いたその才能……たくさんの人に、自分たちの音楽を聴いてほしいよね!」
そう力強く拳を握りしめる蘭華。
その言葉に、妃たちの顔つきが変わる。
これだけの腕前なのだから、かなりの練習をしてきたはずで、本人たちにもその自負がある。
前向きな希望の光を宿した妃たちの顔をぐるりと見回して、蘭華は高らかに宣言する。
「みんななら出来るよ! 人々が感動に胸を打ち振るわせてはらはらと涙を流し余の懐に仲介手数料がガッポガッポと唸っちゃうような音楽をきっと奏でられる!」
「帝……!!」
「この音楽の力で、たくさんの人を幸せにしてね!」
「はいっ!!」
そんなこんなであれよあれよという間に楽団の結成が決まった。
蘭華はにやにやとほくそ笑み、その様子を燕星は冷ややかな目で遠巻きに眺めていた。




